国公労連第126回拡大中央委員会 委員長あいさつ
                 2006年6月3日
                     日本国家公務員労働組合連合会
                     中央執行委員長 堀口士郎

 拡大中央委員会にご出席いただいた皆さんのご奮闘に心より敬意を表します。
 本中央委員会の主たる任務は、夏期闘争方針とこの時期の要求を決定することにあります。
 同時に、平和憲法にもとづく福祉国家の方向が根本から否定され、「戦争する国」づくりとこれに従属する行政の仕組みと人づくりが強められようとしている今日、この時期のたたかいは国公労働者にとって正念場のたたかいになることは必至であります。
 皆さんの議論をとおして、より大きな視点と長いスパンで情勢を分析し、国民とともに歩む国公労働運動の実践について、決意を固め合っていただくようお願いするものです。

 国会は最終盤に入りましたが、会期延長を許さず、国民投票法案、教育基本法改悪法案、医療改悪法案、共謀罪法案の成立を阻止し、廃案とするために全力を上げたいと思います。 国民投票法案と教育基本法改悪法案はさまざまな悪法とは根本的に異なり、この国のかたちと子供たちの未来にかかわるきわめて重要な法案です。
 政権与党と民主党による国民投票法案は、改憲手続きの具体的提起であり、国民投票法案をつうじて改憲発議に向けた議論を本格的にすすめようとする狙いがあります。
 改憲の最大の焦点は9条改悪による自衛隊の海外派遣にあります。
 いま、アメリカはみずからの価値観にもとづく世界秩序確立に向けて米軍の再編などの世界戦略を推し進め、日本政府はこの要請に応えて米軍基地の再編強化、自衛隊の全面的・一体的動員を国民の反対を押し切ってすすめようとしています。
 この動きを見るとき、自民党が憲法改悪とその仕組みづくりに向けて、本格的に動き始めたと見るべきだと思います。
 同時に、民主党との間で国民投票法の合意づくりをすすめ、民主党を共同の改憲案づくりにひきこむとともに、公務員の国民投票運動には規制を加える一方で、メディアを積極的に活用して世論操作をおこない、国民の運動を押さえて改憲まで一気にすすもうとする狙いを示したものだと思います。
 また、教育基本法の改悪を許さないたたかいを大きく広げることは、今の時代に生きる私たちの歴史的使命だと思います。
 教育基本法は、憲法の理想の実現は「根本において教育の力にまつべきものである」として、戦前の軍国主義教育を根本的に転換し、国民主権や基本的人権、平和主義などを実現することを教育の目的に掲げています。
 教育基本法に「愛国心」という言葉がないのは、戦前の教育勅語が国民に天皇への滅私奉公を強いて軍国主義の国家づくりに大きな役割を果たしたという反省があるからです。
 しかし、政府や民主党の改正案は「愛国心」を強制する発想・表現が盛り込まれています。
 教育の最上位の法律である教育基本法に、「国を愛する態度を養う」ことが教育の目標として明記されれば、法的拘束力をもって教科書・学習指導要領を変え、教師に対する職務命令によって教育現場が国民統制の場に変わってしまうことは明らかです。
 そもそも、人を愛し自然やふるさとを愛する気持ちは法律で強制されるものではありません。
 「愛国心」の強制は思想及び良心の自由を定めた憲法に違反することは明らかであり、教育基本法の改悪は改憲による「戦争する国づくり」と一体になった、「戦争する国を支える人づくり」そのものだと思います。
 いま大切なことは、30人学級の実現など教育基本法の精神を教育の隅々に活かし、子供たちを平和な国家と社会の形成者として育てていくための具体的な手だての確立であり、そのための努力こそが政府の責任だと思います。
 教育基本法の改悪問題はこの国の主人公である国民の人格形成にかかわる根本問題であり、国家100年の大計を左右する歴史的課題であります。
 教育基本法はわずか11条の法律です。
 全国の仲間がこの11条と前文に盛り込まれた平和国家建設の崇高な理念を再度確認し、改悪阻止の運動に決起することを心から呼びかけるものです。
 この二法案を廃案に追い込むことができれば改憲の流れを押しとどめ、国民に痛みを強いる政治の流れを転換する展望が開けると思います。
 いま、憲法改悪反対の運動も草の根的に大きく広がっています。
 各地の「九条の会」は5千に達し、国公の職場にも少しずつ結成されつつあります。
 また、憲法特別コースの受講者も1,300人に迫ろうとしています。
 これらの受講者が歴史をつうじて憲法を学び、確信を深め、職場・地域の運動の先頭に立っていただくようお願いするものです。

 次に、「構造改革」と「小さな政府」に反対するとりくみについて申し上げます。
 5月26日に行革関連法が成立し私たちのたたかいは新たな段階に入ります。
 国公労連は、5%純減計画や国の行政責任を放棄する「小さな政府」づくりは、国民生活と私たちの労働条件に深刻な打撃を与えるものであり断じて反対であります。
 行革推進法はプログラム法といわれるように「小さな政府」に向けたいわゆる「改革」の基本理念と方針を定めたものです。
 民間活力を「最大限活用」する「改革」なるものは、公務の商品化と国民生活関連部門を直撃する「純減」の強行そのものであり、そのことがもたらす国民負担の増大・行政サービスの低下を具体的に国民の前に明らかにしていくことが、いまとりわけ求められていると思います。
 強調したいことの一つは、小泉「構造改革」・「小さな政府」攻撃のもとで社会的格差が拡大し、国民の貧困化がいっそう深刻になっている事実を再確認し、反撃の世論を構築していくことだと思います。
 労働者の所得は過去7年連続で低下し続け、貯蓄ゼロの世帯が24%にも達し、修学援助を受ける子供たちはこの4年間で36%も増えています。
 非正規のパートや派遣労働者が全体の3分1になり、その8割近くが年収150万円未満というのがこの国の実情です。
 規制緩和の行き過ぎが雇用を不安定にし所得格差が拡大していること、社会保障の連続改悪によって所得の再配分機能が低下していることが、格差社会と新たな貧困をうみ出していることは明らかです。
 いまこの国の政治に求められていることは、公務の民間化や公務員減らし、労働法制の改悪などではなく、国民の生活を守り、安全で安心な社会をつくっていくための公務・公共部門の充実と働くルールの確立であります。
 この間の私たちのとりくみも反映するなかで、格差拡大が政治問題となり「構造改革」に対するマスコミの批判も大きくなっています。
 全労連闘争本部への結集も含めて「骨太方針2006」の策定や行革推進法の具体化に反対する運動を強めるとともに、行政民主化闘争を基本に据えた国民世論構築の運動に全力をあげたいと思います。
 二つは、労働基本権確立の問題です。
 行革推進法では、人事管理の民間化、総人件費削減・公務員給与の見直しなど、労働条件に直結する課題が網羅されています。
 国公労連は、約2万人の純減にともなう雇用不安を発生させないことはもとより、労働基本権の制約を放置したまま当該労働組合との交渉・協議を無視して、労働条件の不利益変更を強行することには断じて反対であります。
 行革推進法では「労働基本権は国民の意見に十分配慮して、幅広く検討をおこなう」とされ、政府は専門的検討の場を設置して議論を開始するとしています。
 全労連は、「民主的公務員制度の確立にむけた見解」をとりまとめて政府への申し入れをおこなうとともに、日本の労働組合が一致した対応をはかるよう関係団体への働きかけを強めています。
 国公労連は、政府に対し全労連など関係団体との誠実な交渉・協議を迫るとともに、当該労働組合として3度のILO勧告をふまえた主体的な運動を展開していく決意です。

 次に賃金闘争について申し上げます。
 今年の勧告に向けて公務員賃金をめぐる情勢が厳しいことは事実だと思います。
 今春闘での賃上げ状況は、昨年並み若しくは若干上回る程度です。
 大企業が軒並み史上最高の利益を上げるもとで、労働者の賃金引き上げが厳しく抑制された結果を見るとき、昨年のマイナス勧告を想起させることも率直な情勢として見ておかなければなりません。
 また、歳出削減を強める政府の攻撃が直接的に賃金改善の障害になっていることも見ておく必要があります。
 行革推進法51条では、政府は「職務と責任に応じた給与の体系」「民間賃金との比較方法の在り方」について「必要な措置を平成18年度から講ずる」としていることや、歳出削減一体改革などの動きをつうじて公務員賃金抑制攻撃がいっそう強まってくるものと思います。
さらに重大なことは、人事院が比較企業規模を引き下げた民間給与調査を強行し、この結果を勧告に反映させることを狙っていることです。
 これは政府みずからが総人件費削減の具体化方針の一つとして人事院に要請していたものであり、公務員賃金水準の引き下げとこれに連動する民間賃金のさらなる引き下げをも意図するものです。
 民間給与調査の現行比較企業規模は、私たちの要求にてらすならば不満でありますが、人事院が「適切な仕組み」として社会的に説明をおこなうなかで、40年間定着・実施されてきたものであります。
 人事院がこれを見直す合理的な理由をまったく説明できないのは当然であります。
 人事院は本来、政府・内閣から独立して設置され、勧告制度は労働基本権制約の「代償措置」とされてきました。
 しかし、政府の要請を受けて小規模事業所を調査対象に加え賃金引き下げをおこなうことは、人事院みずからが労働条件不利益変更の主体者になることです。
 このようなやり方は、「代償機関」「利益擁護機関」としての使命を放棄し、みずからを賃下げの実施機関に変質させるものであるといわざるをえません。
 したがって、国公労連は比較企業規模を引き下げた民調の結果を勧告に反映させず、賃金改善を求めるとりくみに全力を上げたいと思います。
 今日の情勢は、私たちが手を拱いていればマイナス勧告が強行される危険が強いという状況だと思います。
 大事なことは、私たちが中心となって自治体・民間の仲間と力を合わせて地域から反撃していくことであり、管理職層を含むすべての職場の怒りを具体的な形にして人事院に迫っていく運動の強化だと思います。
 人事院も大きな矛盾を抱えており、職場の怒りと私たちの運動如何では勝ちみに廻ることも十分可能だと思います。
 課題は山積していますが、悔いのないたたかいを展開し局面の転換を勝ち取りたいと思います。
 皆さんのご奮闘をお願いしてあいさつを終わります。
 以上

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