【国公労連第52回定期大会】 | |
2006年8月31日 | |
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日本国家公務員労働組合連合会 中央執行委員長 堀口士郎 |
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大会にご出席いただいた皆さんと、全国の仲間たちの日頃のご奮闘に心より敬意を表します。また、本日は大変ご多忙のなか、各界からご来賓の皆さまにご出席いただいております。激励のためにかけつけていただいた皆さまに、日頃のご指導とご協力に対する感謝とあわせて心よりお礼を申し上げます。 さて、向こう1年間のたたかいは日本の進路と国民生活、公務員労働者の将来にかかわって歴史の重要な節目になると思います。 憲法や教育基本法の改悪を許すのか、アメリカと大企業いいなりの政治にストップをかけ、社会的格差の是正、安心・安全な社会をめざすのか、私たち一人ひとりが歴史の転換点にどのように立ち向かうのかが問われています。 その立場からまず強調したいことは、秋の臨時国会において教育基本法改悪法案、国民投票法案、共謀罪法案の成立を許さないたたかいに全力を上げることです。 教育基本法改悪案は、教育の目的を子供たち一人ひとりの「人格の完成」から、「国策に従う」人間をつくる教育へと根本的に転換し、特定の政治的立場に立つ「愛国心」を教育現場に押しつけ、「戦争する国」を支える人づくりをすすめるものとなっています。 このような改悪案の内容は、平和憲法の精神に反するとともに、教育の危機を一段と深刻にすることは明らかです。 国公労連は、この問題がすべての国民にかかわると同時に、日本の進路を左右する重大問題と位置づけ、改悪阻止に全力を上げることを全国の仲間に呼びかけるものです。 安倍官房長官は、憲法改定を政権構想の柱に位置づけ、改憲を政治日程に乗せる考えを示すなど、政府・自民党の改憲に向けた動きはいっそう強まっています。 在日米軍の再編と自衛隊の一体的運用や、米軍基地再編にかかわる費用を日本が負担するとの日米政府の合意を見るとき、改憲の目的がアメリカの戦争に参加するため、9条2項を削除して自衛隊を「戦争できる軍隊」にし、日本を「戦争する国」につくりかえようとする狙いはさらに鮮明となっています。 一方、「九条の会」はこの2年間で5000を超えて結成され、改憲反対の世論が草の根的に大きく広がっています。 これは改憲の狙いと本質が伝われば、思想・信条、政治的立場の違いを超えて国民多数の世論を結集できることを示しています。 国公労連は、このことに確信をもって戦後史をかけたたたかいに全力を上げるものです。 次に、「構造改革」・「公共サービス商品化」反対のとりくみについて申し上げます。 「構造改革」を強行してきた小泉内閣の5年間で、労働者・国民のくらしと雇用は劇的に悪化しています。 OECDの報告において、勤労世代の相対的貧困率が、日本はアメリカに次いで世界第2位と指摘されたように、格差拡大と貧困化は深刻になっています。 国公労連は、労働者・国民のくらしと雇用の悪化が、今日の公務員攻撃を激化させる要因となっていることをふまえ、全労連「もうひとつの日本」闘争本部にも結集して、国民との対話と共同を広げるとりくみに奮闘してきました。 全労連は、「戦争しない・参加しない日本」「働くルールの確立・格差と貧困の是正」「安心・安全の地域社会」をめざす大運動を提起しています。 国公労連はこれに積極的に応えるとともに、増税反対と社会保障、労働法制改悪反対の三つを「構造改革」反対の中心課題として設定し、世論と国民共同を広げる運動に全力を上げるものです。 行革推進法の施行は、公共サービス改革法と密接に関連して、公共サービスの縮小と質的な後退をもたらすことは明らかだと思います。 私たちはこれまでも、公務員労働者が担う公共性をつうじて、行政サービスの重要性を強調してきましたが、この点での国民の共感を得るとりくみはいっそう重要となっています。 今日の「総人件費改革」や公務員攻撃の厳しさをみるとき、私たちが労働者・国民の生活と権利を守る担い手として、国民の身近なところで、目に見える存在として、具体的な役割を発揮することが、国民の理解と連帯を広げていくことにつながると思います。 その点からも行政研究活動・行政民主化闘争を重要なとりくみとして位置づけるとともに、「公共サービス」の商品化や「5%純減」計画の具体化にともなう雇用破壊、労働条件悪化を許さないたたかいに、国公産別の統一した力を発揮していきたいと思います。 社会保険庁の組織再編にともなう雇用の確保は、当面する重要課題であり、国公労連として統一したとりくみを展開したいと思います。 次に、賃金闘争について申し上げます。 今回の人事院勧告は比較企業規模の見直しによる意図的な賃下げ勧告であり、国公労連は断じて認めることはできません。 したがって、従来の比較方法による賃金改定を求め、引き続く政府・国会闘争をたたかっていく決意です。 今回の勧告の問題は、人事院が当該国公労働者の強い反対を押し切って、公務員賃金決定基準を一方的に改悪したことです。 公務員賃金の決定にあたって、官民比較方法の中身はその水準を左右する重要事項であり、労働条件は労使が対等に話し合って決めるのが当然のルールです。 人事院が労働基本権の「代償」措置というのであれば、当該労働組合との徹底的な交渉・協議をおこない、職員の理解と納得を得た上でおこなうべきは、最低限のルールであり、それが人事院の使命です。 見直しの強行は、政府の圧力に屈して「代償」機能としての役割を投げ捨てるに等しい暴挙といわなければなりません。 政府は昨年の9月以降、比較対象企業規模の見直しを3度にわたって閣議決定し、人事院への圧力を強めてきました。 給与水準引き下げをもくろむ官民比較方法の見直しを強引に求めながら、その一方で「人勧尊重、労働基本権制約の維持」を強調すること自体が、労働基本権の侵害そのものです。 また、財務省が今回の勧告で940億円の人件費削減効果があるとしているように、その狙いは総額人件費の抑制であり、社会保障のさらなる改悪や庶民大増税など、徹底した国民収奪をおしすすめるための世論づくりにあることは明らかです。 この一連の経過は、政府が悪政推進のために労働基本権を侵害し続ける一方で、人事院は政府の圧力に屈して「代償性」を放棄するという構図であり、公務員労働者の最低限の権利さえもふみにじられたことを示しています。 さらに、「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」報告では、地場賃金水準をより反映した賃金決定が強調され、「骨太方針2006」でも地方公務員に対し、地域の民間給与のさらなる反映と、ボーナス支給月数の地域格差の反映などを強く求めています。 「賃下げの悪循環」を許さないため、各地方での共同のたたかいを旺盛に展開したいと思います。 今年の勧告はいくつかの教訓を私たちに示しています。 1つは、労働者の状態悪化を改善する運動の先頭に、公務員労働者が立つべきだということです。 正規労働者の人減らしと低賃金・無権利の非正規雇用への置き換えが強行されるもとで、非正規労働者の8割近くが年収200万円以下という異常な事態が進行し、このことが労働者全体の状態悪化を助長し、公務員攻撃の要因ともなっています。 最低賃金の抜本改善とあわせて、「人間らしく働くルール」の確立にむけた、公務員労働組合の責務はきわめて重大です。 2つは、公務員賃金や公務労働に対する国民の理解と評価を高める運動の重要性です。 公務員賃金の社会的影響力を訴えるとりくみとあわせて、公務の公共性を守る運動をつうじて民間労働組合・国民との理解を深めあい、共同・連帯のとりくみを強めることが大切です。 3つは、労働基本権回復のたたかいです。 政府は、公務員の労働基本権のあり方に関して専門調査会を設置し議論を開始しました。 この調査会設置は不十分さをもちつつも、3度にわたるILO勧告や私たちの運動の反映という面を持っており、私たちのこれからの運動によってその帰趨が決まることは明らかです。 国公労連は、調査会での民主的で公正な議論を要求するとともに、公務員の労働基本権回復が国民的にどのような意義をもっているのかを明らかにしながら、国民の支持と理解を広める運動を展開したいと思います。 次に、組織拡大について申し上げます。 まず強調したいことは、「国公関連職場のすべての仲間を視野においた組織づくり」に、新たな決意で挑戦することです。 重視すべきは、正規職員の未加入をなくすための努力と、非正規職員の組織化の追求です。 数万人といわれる非正規職員は、雇い止めや低賃金など劣悪な労働環境におかれており、賃金改善や均等待遇の前進をめざすことは、国公労働運動の最重要課題です。 職場での総対話をすすめ、組合員を増やし、組織の力を強め、より大きく・より豊かな国公労連を築いていくために、ご奮闘をお願いするものです。 いま、日本は政治的にも経済的にも歴史の重大な転換点にあります。 歴史の逆流を許さず、未来に向かって進歩と発展の方向へ歯車をまわすための努力が、一人ひとりの国公労働者に求められている時代だと思います。 今日にいたる国公労連の組織的力量は、60年にわたる厳しいたたかいのなかで築きあげられたものであり、前進を勝ちとってきた力の源泉は職場の仲間の努力にあります。 歴史の教訓をみるとき、激動の時代は飛躍を勝ちとるチャンスであり、いまの時代をさらなる発展の時代として後世に残すことは、現代に生きる私たちの使命だと思います。 国公労働運動のいっそうの発展にむけて、新たな挑戦を開始していくことを全国の仲間に呼びかけて、あいさつを終わります。 | |
以上 |