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国公労新聞 2006年11月10日号 第1246号
     
 
 

 

◆教育基本法改悪法案廃案めざし全力

 12月15日の会期末まであと1カ月余の臨時国会。教育基本法改悪法案が10月25日、国民投票法案が10月26日に審議入りし、憲法改悪に直結する重要法案が重大な局面になりました。海外派兵を自衛隊の「本来業務」にし、防衛庁を「省」にする「防衛省」法案についても、与党は衆院通過を狙っています。これは憲法9条違反の大問題です。
 「教育再生」を掲げて発足した安倍内閣は、教育基本法を変えることを「教育改革の目玉」にしています。教育基本法改悪法案の問題点を教育現場の視点で、全日本教職員組合(全教)の長谷川英俊副委員長に語っていただきました。
 ◇狙いは「競争と格差拡大の教育」
 教育の憲法である教育基本法を守るたたかいが、最大の山場を迎えています。
 与党は強行採決も念頭に11月中旬の衆議院通過をもくろみ、今国会での成立をめざしています。一方、野党は一致して「今国会採決反対」を掲げ、与党に対峙しています。

 ◇評価が下がるからいじめあっても隠す
 いま、相次ぐいじめ自殺や全国の高校での必修科目未履修が社会問題になり、「法改正を急ぐ前に、現実を直視した議論こそ必要だ」(11月1日・東京新聞社説)と徹底審議を求める声が急速に広がっています。私たちがここでがんばれば、法案を阻止し廃案に結びつけられる情勢もまた開かれているのです。
 教育現場は、評価制度の下、数値目標を掲げさせられ、生き残りをかけた競争が強いられています。いじめがあっても隠して報告しないのは、評価が下がるからです。必修教科を履修していないにもかかわらず、履修したと装うのは、その授業を受験対策に充てたいからです。

 ◇学力テスト結果を予算査定に反映
 教基法改悪はそのうえに、英国のサッチャー改革をまねた新自由主義的な政策を持ち込もうとしています。狙いは「平等の教育」から「競争と格差拡大の教育」へと転換をはかることです。
 たとえば、政府案は17条で「教育振興基本計画」の策定を掲げ、全国一斉学力テストを実施して成績を公表し、全国の子どもを「勝ち組」「負け組」に振り分けようとしています。自治体では先取りが始まっています。
 足立区教委は来年度から学力テストの成績で学校を4段階に分け、予算配分をします。中学の場合、最上位は500万円、最下位は200万円で、学校運営費を削って特色づくり予算として傾斜配分をするというのです。
 この方針は、区民からの反対の声をうけ11月7日、ランクづけは断念せざるをえなくなりました。しかし、テストの結果を予算査定に反映させる方針は変えていません。

 ◇タウンミーティング 政府が「やらせ」を指示
 このような中、青森県教組が明らかにした「タウンミーティングやらせ問題」が波紋を広げています。政府が県教委・校長ルートで、PTA会長らに教基法改悪賛成の質問を頼み、「依頼されたといわないで」「せりふは棒読みしないで」とまで指示していたのです。
 余りにひどいやり方に、国会では与党議員も「許せない」と声を上げ、議場が騒然となりました。改悪勢力は確実に追い込まれています。

 ◇平和と民主主義平等を守るために
 法案阻止をめざす、上部組織の違いを超えた共同が、ここにきて北海道や長崎など全国で広がっています。
 戦後教育の掲げた平和主義、民主主義、平等主義を踏みにじる改悪法案は廃案しかありません。力を集め、がんばろうではありませんか。
 
 

 

◆人事院、分限処分指針を通知
 当局の恣意的な運用を許さず


 人事院は10月13日、分限処分(免職または降任)に該当すると考えられる事例について、任命権者が行う手続きや留意点等をまとめた指針を各府省に通知しました。

 ◇病気休職累積3年間意思の診断ふまえ判断
 今回の指針は、国公法第78条1〜3項に該当し、勤務実績が悪かったり、心身の問題で職務が遂行できない場合等の分限処分の運用方針を定めたものです。  たとえば、心身の問題がある職員に対しては、病気休暇や病気休職の累計期間が3年を超え、そのような状態が今後も継続して、職務の遂行に支障があると見込まれる場合には、医師2名の診断をふまえ、免職が妥当かどうか判断するとしています。

 ◇「メンタル指針」の実効ある対策こそ必要
 言い換えれば、病気休職等の累計期間が3年を超えていたとしても、職場復帰する見込みがあれば、機械的に即、分限処分ということにはなりません。むしろ、職場復帰に向けた人事院の「メンタル指針」(2004年3月)の実効ある対策こそ当局が責任を持って行わなければならないことです。
 今回の指針が発出されることによって、職場において不要な混乱を生じたり、当局の裁量権の濫用(恣意的な運用)が行われないよう、当局を追及することが重要です。
 
 

 

◆「公共サービス」がビジネスになったら
  格差と貧困がいっそう拡大
  財界の狙う「市場化テスト」が本格実施


 「簡素で効率的な政府」を実現することを目的とする公共サービス改革法や同基本方針の決定により、来年4月、社会保険やハローワークに関連する業務などの市場化テストが本格実施されようとしています。この対象業務は、毎年民間事業者等からの要望を受け付け、各府省との協議のうえで拡大されるしくみとなっています。現在、官民競争入札等監理委員会は、各省からのヒアリング結果をもとに、年内を目途に基本方針の改定を行おうとしています。

 ◆遠のく国民の安心・安全

 財界はこの間、国や地方自治体の担う事務事業を、新たな「ビジネスチャンス」ととらえ、事業の担い手を民間企業に明け渡すよう強く求めてきました。そのための具体的な手法として、市場化テスト(法律では官民競争入札又は民間競争入札)が位置づけられました。
 しかし、「公共サービス」がビジネスになるということは、国の役割は縮小され、国民生活の安心・安全は遠のくことになります。
 自治体では、指定管理者制度などを使った民間委託が拡大し、保育園では保育の質が低下したり、ふじみ野市では外部委託化のずさんな運営から、プール事故で尊い人命が奪われています。
 また、ビジネスの対象となった「公共サービス」では、質の良いサービスを得ることができるのは、お金をたくさん払った人ということになります。一方、お金のない人は、まともなサービスを受けることができなくなります。それは、いま大きな問題となっている格差と貧困をいっそう拡大することになります。

 ◆まだある「公共サービス商品化」の問題点

 ◇不安定雇用の増大が各方面より指摘
 いま非正規雇用の過酷な実態が連日報道され、重大な社会問題になっています。これに関しても、市場化テストには重大な問題があります。官民競争にせよ民間競争にせよ、入札は有期契約で実施されます。
 こんにち民間企業には、新規受託事業を担える人手を常に抱えていることなどありませんから、受託事業者は、事業に従事する労働者を新規に雇い入れることになります。その際、有期契約であれば、労働者も正規雇用ではなく非正規にならざるを得ません。さらに入札は価格競争ですので、経費削減の狙いとして、人件費が抑制されることは当然考えられます。これはまさに、派遣や請負などの人材ビジネスで、労働者の「買い叩き」が行われている実態そのものです。
 市場化テストは、国や自治体の経費節減を言いながら、その財源を果てしなく労働コスト切り下げに求める危険性があります。

 ◇公務の大リストラの道具として
 公共サービス改革法や基本方針では、市場化テストの対象業務を毎年拡大する方向が強く押し出されています。それに伴い、当該府省の定員も見直されることになります。
 その結果、実際の職員数が査定された定員を上回る場合も、基本方針は想定しています。基本方針ではその際、「国家公務員の配置転換、採用抑制等に関する全体計画」に定める配置転換、採用抑制等の仕組みを活用するとして、府省間配置転換の実施にまで言及しているのです。
 また基本方針は、「任命権者の要請に応じて国家公務員を退職し、落札事業者の下で業務に従事した者が、再び職員に採用されることを希望する場合」の配慮にも言及しています。しかしこれは、個々の公務員の身分まで、「官から民」への移動を容易にするものに他ならず、市場化テストそのものが、公務の大リストラの道具であることは明らかです。

 ◇決して効率的ではない「官民競争入札」
 実際に、官民競争入札を実施して、行政機関が入札に参加する場合、効率性で大きな問題が生じます。基本方針では、入札事務を担当する職員と、応札を担当する職員を特定し、その間の情報を遮断するよう求めています。公正な入札のためには当然の措置ですが、本省で言えば、官房会計担当と、原局実務担当の情報遮断ということになります。
 現在民間委託を行う際には、受託事業者の決定にあたり、会計と実務の担当者が、臨機に相談して決定することが一般的でしょう。ところが、官房・原局それぞれに、会計事務にも実務にも精通した職員を配置するとなると、およそ非効率でダブルコストそのものです。

 ◇評価の反映方法さえ不透明
 基本方針では、入札によって民間事業者が受託して業務を行った際、その実績を評価して、次回の入札に反映することとしています。国の会計年度で考えた場合、ある業務を3月末の契約で委託し、終了時点から評価するなら、次年度の入札はすでに前年秋に実施されているため、評価の反映は不可能です。そのため基本方針は、評価を実施期間終了時から開始するのではなく、適切な時期から開始することを原則にするとしています。しかし、入札対象とする事業の中には、社会情勢の変化等に対応するため、単年度契約とならざるを得ない業務も当然考えられます。その場合、いつの時点から評価を開始して、次年度の入札にどのように反映するかは不透明なままです。秋に入札の実施要項を固めようとするなら、夏中には評価結果を出しておく必要がありますが、すると4月開始の業務を、わずか2〜3ヵ月間の実績で評価することになります。業務によっては実施期間内だけでは実績が表れない業務もあることから、こうした点は、十分議論が尽くされないまま、「見切り発車」した感が払拭できません。

 ◆世論拡大と、公共サービス実現を

 市場化テストのみならず、民間委託の問題点を職場から日常的に点検し、世論に訴えることが大切になっています。あわせて、公務で培われた専門性や中立性は、そう簡単に民間事業者に代替できるものではありません。
 職場から、あるべき公共サービスの内容・質をしっかり議論し、日常業務で実践することこそ、国民の信頼を得、公共サービス商品化の議論に対抗する最大の武器と言えます。
 国公労連は毎月第3水曜日を一斉宣伝日として、全国各地でビラを配布します。また、民主団体、マスコミ等へも積極的に働きかけます。民間労働者と一体となった集会等も実施します。そこで重視すべきは、市場化テストが、国民生活にどのような影響を与えるかを、具体的に訴えることにしています。
 
 

 

◆全職員の雇用を守るため 中央・地方で組織の総力をあげる
「社会保険庁改革対策委員会」発足


 ◇社会保障破壊と雇用破壊の攻撃は一体
 国公労連は10月27日、「社会保険庁改革対策委員会」を立ち上げました。この委員会は、社会保障破壊と、職員の雇用破壊の攻撃を公務員労働者全体の課題と位置づけ、情勢認識の共有、運動の意思統一をはかるものです。全単組とブロック国公で構成し、当日は中央行動後、30人が駆けつけました。

 ◇政府の狙い明らかにし反撃に出よう!
 冒頭、福田対策委員長(国公労連委員長)は、「公務員を叩けば選挙に勝てるとする欺瞞的なやり方に反撃が必要。最重点に社会保険を位置づけた。重点は2つ。職員の雇用と身分を守りきること、社保庁解体の狙いを明らかにして反撃に出ること、この点でしっかりと意思統一を」とあいさつしました。

 ◇使用者責任追及し国民に訴える宣伝を
 続いて、全厚生・飯塚書記長からの情勢報告をうけ、河村対策委員会事務局長(国公労連書記次長)から、国公労連の基本認識と当面する運動を提起しました。
 委員会では短い時間ながらも提起を支持・補強する発言が相次ぎました。そのうえで、(1)社保庁、厚労省当局の使用者責任を求める全厚生運動を全面的に支援、(2)社会保障制度改悪と一体となった攻撃の狙いを広く国民に訴えるための宣伝行動などのとりくみに、中央・地方で組織の総力をあげて奮闘することを意思統一しました。

 ◇仲間へ激励のメッセージ
 最後に、「社会保険庁に働く仲間へのメッセージ」を参加者全体で確認し、閉会しました。
 
 

 

◆霞が関に官民の仲間1万人
  10・27中央行動に国公労連1200人


 国公労連は10月27日、全労連「もうひとつの日本」をめざす公務・民間中央行動、公務労組連絡会中央行動に(2000人、国公労連1200人)参加。医労連などの医療拡充を求める白衣の大集会、建交労や自交総連のトラック・タクシーデモ、国会前座り込みなど、1万人近くの官民の仲間が、終日にわたって霞が関を騒然とさせました。
 
 

 

◆「格差と貧困」是正を重点に
  春闘共闘07年春闘方針構想を提起


 国民春闘共闘委員会は10月26日、07年度総会を東京都内で開催し、26単産・5地方共闘・79人が参加しました。
 07年春闘構想案では、「格差と貧困」の是正を重点課題に設定。非正規雇用の増加や所得格差拡大に対する規制と運動をすすめる、賃金闘争ではベア要求、全国一律最賃制度、公契約実現を求め、社会的にアピールするとしています。
 冒頭、坂内三夫代表幹事が「『美しい国』という美名のもとに改憲路線を突き進める安倍内閣との07春闘での対決点は、新たな段階に入った格差と貧困問題であり、偽装請負やワーキングプアなど働き方の問題が争点となる。07春闘に勝つことが政治の流れ、世の中の流れを大きく変える」とあいさつ。
 小田川義和事務局長が07年春闘方針構想を提案した後、各組織よりとりくみの総括や今後の運動のあり方について討論。国公労連は「民間と共同したとりくみで悪魔のサイクルを打ち切る。格差をなくし、政治の流れを変えるため、07春闘に全力」と発言しました。

 ◇労働法制100万人署名
 春闘構想案で、「格差と貧困」の是正について、「安心できる雇用と賃金を!」運動(仮称)を提起し、青年を中心とした全国連鎖行動や宣伝、政府・自治体要請、労働法制で100万人署名を提起することを確認しました。
 
 

 

◆北から南から

 ◇広島 9条ピースフェスタに7千人
 【広島県国公発】広島県国公は憲法公布60年の11月3日、「まもろう!憲法・教育基本法、なくそう!格差と貧困」などを掲げ、県労連と憲法と平和を守る広島共同センター共催の「11・3県民集会」に参加しました。
 医療・社会保障の充実など広島市民に訴えたパレードのあとの報告集会では、辻岡誠二県国公事務局長が「公共サービスの後退を許すな!」と決意表明しました(写真左下)。
 引き続き午後の「9条ピースフェスタinヒロシマ」には7000人が参加。ピースコンサート、幼稚園児と保護者の合唱でスタート。松元ヒロさんから憲法パフォーマンス、翻訳家の池田香代子さんと「9条の会」呼びかけ人の小田実さんが憲法講演、フォトジャーナリストの久保田弘信さんからイラク報告、タケカワユキヒデさんの憲法と平和コンサートを多彩に展開。最後に参加者全員で「イマジン」を大合唱しました。

 ◇長野 「秋の総行動」で広がる共同
 【長野県国公発】長野県内14カ所で行われた「憲法・教育基本法、くらしを守る 長野県秋の総行動」には労働組合、市民団体のほか、各地の「九条の会」ら1500人が結集しました。
 250人が集まった「10・21長野集会」後のデモ行進では、「憲法改悪反対」「憲法九条をまもれ」などを市民にアピール。また、デモ行進終了後、県国公が教職員組合の仲間に参加を呼びかけ、教育基本法改悪反対の宣伝・署名行動を展開。共同と連帯の輪が広がり、多くの方から署名と賛同の声をいただきました。
 11月19日の「教育基本法改悪反対3000人集会」成功に向けて、地域の仲間と共にさらに奮闘していきます。
 
 
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