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談話
公共サービス破壊と国民の権利後退方針に断固反対する
――「基本方針2007」の閣議決定にあたっての談話――
     
 

 

 政府は6月19日、「経済財政改革の基本方針2007」(以下、基本方針)を閣議決定した。
 安倍政権下初の基本方針は、この間強引に推し進められた構造改革路線が格差と貧困の拡大をもたらし、大きな社会問題としてクローズアップされる中で公表された。基本方針は、表題から「構造改革」の文字を消し、「『美しい国』へのシナリオ」とすることで、目新しさを印象づけようとし、「戦後レジームからの脱却」「美しい国」づくりなどの空疎な文字を散りばめている。しかしその内容は、グローバル化を前提に、労働生産性の向上を強調し「『世代自立』の社会構造をめざす必要」があるとしており、小泉内閣の構造改革路線と何ら変わるものではない。国民にいっそうの痛みを押しつける基本方針の閣議決定に厳しく抗議する。

 基本方針は、戦後レジームから脱却するための最重要課題として、「21世紀型財政システムの構築」を位置づけ、その第一に「歳出・歳入の一体化改革」を掲げている。しかし、その内容は、公務員人件費について「基本方針2006」の2.6兆円程度を上回る削減や、社会保障の効率化など、歳出削減のみを求めるものである。第二に、「財政改革の基本哲学」では、「社会保障給付や少子化対策に要する費用の見通しなどを踏まえつつ、その費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現されるべく、取り組む」として、消費税率引き上げをストレートに求めている。一方、「成長力強化、生産性向上に向けて、税制を含めた総合的取り組みを行う」と、企業には負担軽減を施すよう求めており、厳しい国民生活を何ら顧みないものと言わざるを得ない。

 公務員制度改革については、「21世紀にふさわしい行政システムを支える公務員像の実現」を言いながら、具体論は官民人材交流センターによる再就職規制の一元化など、国会で審議中の国家公務員法改正案の内容が述べられているに過ぎない。見逃せないのは、「民間を含めた公募制の導入」「官民交流の抜本拡大」を検討項目としている点である。この間の国会審議では、官民人材交流センターが、再就職あっせん以上に官民交流促進が大きな目的であることが明らかになった。これは、財界人を霞が関の中枢に送り込み、行政を意のままに動かそうとする財界の戦略であり、到底認められるものではない。一方、ILOからも再三改善を迫られている労働基本権については、具体策を示していない。

 独立行政法人等の改革では、すべての独法(101法人)について、民営化や民間委託の是非を検討し、整理合理化計画を年内に策定するとし、さらに、存続する法人についてはすべての事務・事業について市場化テスト導入の検討対象とするとしている。独立行政法人は、試験・研究をはじめ、多くが国民生活との関係で重要な役割を担っている。そうした実態に一切目を向けず、民間開放のみを求めることは、ビジネスチャンス拡大を狙う財界の要望そのものであり、国民生活悪化が必至の暴論と言える。いま、各法人は一方的な運営費交付金の削減により厳しい運営を余儀なくされ、短期間の目標管理で中長期の研究等が困難な状況にあり、それらの改善こそが急務であることを強く指摘する。

 基本方針は、市場化テストの対象業務拡大に言及し、各府省・独立行政法人に自主的な検討を求めている。また、官民競争入札等監理委員会に対し、各府省の取組状況を評価し、評価結果を諮問会議に報告するよう求めている。国や自治体の実施する業務の多くは、憲法や法律が規定する国民の権利保障を担うものであり、その担い手を営利企業とすることにより、公正性、中立性、専門性が損なわれることがないか、慎重に検討されねばならない。また、この間行われた「モデル事業」では、受託事業者にくらべ、国が直接実施した方が、価格と質の両面で上回る実績をあげている。これらの点を何ら顧みることなく、一方的に民間開放を求める姿勢は、国民の権利保障の観点からとうてい容認できない。

 地方分権改革については、地方支分部局を大胆に合理化するとしている。しかし同時に、「地方間の税源の偏在を是正する方策の検討」を行うとしていることは、みずから自治体間の財政基盤の格差を認めていることに他ならない。国の地方支分部局は、自治体の財政事情によって、行政サービスに格差を生じさせないために置かれているものであり、財政格差が完全解消できない限り、合理化など行ってはならない。

 年金制度に関しては、まるで取って付けたように国会で審議中の日本年金機構法案の内容と、政府の示した対応策を列記しているが、その不十分さは国会審議で明白である。「社会保障の情報化の推進」において、個人の年金情報をオンラインで入手できる仕組みの構築を述べているが、ならばなぜ、社会保険庁の保有する納付履歴を、全被保険者・受給者に送付することが言えないのか理解できない。年金記録の整備は、5千万件のオンライン分の「名寄せ」に1年を要し、マイクロフィルムや紙台帳との照合については、何年かかるかまったく明らかにされていない。そのような中で社会保険庁を廃止し民間委託することは、国が記録管理の責任を放棄することでしかない。いま急ぐべきは、法案の成立ではなく、いったん法案を白紙に戻し、党派や立場の違いを超え、国民の年金受給権をいかに保障するかについて、真摯な議論を尽くすことである。

 このように基本方針は、「安心・安全と公務の破壊」「格差と貧困の拡大」「地方切り捨て」を進めるもので、人口減とグローバル化を言い訳とした国民大収奪政策であり断じて認められない。このような方針にもとづいて2008年度予算編成が進められ、公共サービスの民間開放や社会保障・労働法制の改悪、消費税率引き上げなどの検討が進められることは許されるものではない。
 国公労連は、基本方針の具体化を許さないたたかいに、国民的共同を広げながら、全力で奮闘する決意である。

2007年6月20日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 岡部勘市

以上

 
 
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