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07年人事院勧告にあたって(声明) 〜国公労連中央闘争委員会
―総人件費削減を許さず、公務員労働者の「働くルール」確立を―
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2007年勧告の主な内容
○ 本年の給与勧告のポイント
(1) | 民間給与との較差(0.35%)を埋めるため、初任給を中心に若年層に限定した俸給月額の引上げ(中高齢層は据置き)、子等に係る扶養手当の引上げ、19年度の地域手当支給割合のさかのぼり改定 |
(2) | 期末・勤勉手当(ボーナス)の引上げ(0.05月分) |
(3) | 給与構造改革の一環としての専門スタッフ職俸給表の新設
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○ 公務員給与の改革への取組
平成17年の勧告時の報告において、地域間配分の適正化、職務給の徹底、成績主義の推進を図るため、給与制度の抜本的な改革を行うことを表明。この給与構造改革は、平成18年度から俸給表水準の引下げ(4.8%)を実施しつつ、逐次手当の新設等を行い平成22年度までの5年間で実現
また、民間企業の給与水準をより適正に公務の給与水準に反映させるため、平成18年勧告の基礎となる民間給与との比較方法について、比較対象企業規模をそれまでの100人以上から50人以上に改めるなど抜本的に見直し
本院としては、公務員給与の改革を進めることにより、国民の支持の得られる適正な公務員給与の確保に向けて全力で取り組む所存
T 給与勧告の基本的考え方
〈給与勧告の意義と役割〉勧告は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し適正な給与を確保する機能を有するものであり、能率的な行政運営を維持する上での基盤
〈民間準拠の考え方〉国家公務員の給与は、市場原理による決定が困難であることから、労使交渉等によって経済・雇用情勢等を反映して決定される民間の給与に準拠して定めることが最も合理的
U 民間給与との較差に基づく給与改定
1 民間給与との比較
約10,200民間事業所の約43万人の個人別給与を実地調査(完了率89.4%) |
〈月例給〉公務と民間の4月分給与を調査し、主な給与決定要素である役職段階、年齢、学歴、勤務地域の同じ者同士を比較
○民間給与との較差 1,352円 0.35% 〔行政職(一)…現行給与 383,541円 平均年齢 40.7歳〕
俸給 |
387円 |
扶養手当 |
350円 |
地域手当 |
560円 |
はね返り分 |
55円 |
〈ボーナス〉昨年冬と本年夏の1年間の民間の支給実績(支給割合)と公務の年間支給月数を比較
○民間の支給割合 4.51月(公務の支給月数 4.45月)
2 給与改定の内容と考え方
〈月例給〉
(1) 俸給表 初任給を中心に若年層に限定した改定(中高齢層は据置き)
(1) 行政職俸給表(一)
改定率 1級 1.1%、2級 0.6%、3級 0.0%。4級以上は改定なし
初任給 1種 181,200円(現行179,200円)、2種 172,200円(現行170,200円)
3種 140,100円(現行138,400円)
(2) その他の俸給表 行政職俸給表(一)との均衡を基本に改定(指定職俸給表等を除く)
(2) 扶養手当 民間の支給状況等を考慮するとともに、少子化対策の推進にも配慮
子等に係る支給月額を500円引上げ(6,000円 → 6,500円)
(3) 地域手当 給与構造改革である地域間給与配分の見直しの着実な実施
地域手当の級地の支給割合と平成18年3月31日における調整手当支給割合との差が6%以上の地域の地域手当支給割合について、今後の改定分の一部を繰り上げて改定(本年度分として0.5%の引上げを追加)
[実施時期]平成19年4月1日
〈期末・勤勉手当等(ボーナス)〉 民間の支給割合に見合うよう引上げ 4.45月分→4.5月分
(一般の職員の場合の支給月数)
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6月期 |
12月期 |
19年度 |
期末手当 |
1.4月(支給済み) |
1.6 月(改定なし) |
勤勉手当 |
0.725月(支給済み) |
0.775月(現行0.725月) |
20年度以降 |
期末手当 |
1.4月 |
1.6 月 |
勤勉手当 |
0.75月 |
0.75月 |
[実施時期] 公布日
〈その他の課題〉
(1) 住居手当 自宅に係る住居手当の廃止も含め見直しに着手
(2) 非常勤職員の給与 給与の実態把握に努めるとともに、職務の実態に合った適切な給与が支給されるよう、必要な方策について検討
なお、非常勤職員の問題は、その位置付け等も含めた検討が必要
V 給与構造改革(平成20年度において実施する事項)
1 専門スタッフ職俸給表の新設
行政の多様化、複雑・高度化に対応するため、公務において職員が培ってきた高度の専門的な知識や経験を活用するとともに、早期退職慣行を是正し在職期間の長期化に対応する観点から、複線型人事管理の導入に向けての環境整備を図るため、専門スタッフ職俸給表を新設(平成20年4月1日実施)
(俸給)
・ 専門スタッフ職俸給表は、行政における特定の分野についての高度の専門的な知識経験が必要とされる調査、研究、情報の分析等により、政策の企画及び立案等を支援する業務に従事する職員で人事院規則で定めるものに適用し、3級構成。各職務の級の水準は、本府省の課長補佐級から課長級までの水準を基礎
(諸手当)
・ 専門スタッフ職職員には、俸給の特別調整額を支給しないほか、2級、3級職員について、超過勤務手当等の適用を除外
・ 専門スタッフ職調整手当は、3級職員のうち、極めて高度の専門的な知識経験等を活用して遂行することが必要な特に重要で特に困難な業務に従事する職員に支給(俸給月額の100分の10)
(勤務時間)
・ 専門スタッフ職職員の勤務時間について、職員の申告を経て、4週間ごとの期間につき各省各庁の長が割り振る弾力的な仕組みを導入
2 地域手当の支給割合の改定等
・ 地域手当は、平成22年度までの間に段階的に改定することとしており、平成20年4月1日から平成21年3月31日までの間の暫定的な支給割合を設定(平成19年度の支給割合を1〜2.5%引上げ)
・ 広域異動手当は、平成20年度に支給割合が引き上げられ、制度が完成(異動前後の官署間の距離区分が60キロメートル以上300キロメートル未満の場合3%、300キロメートル以上の場合6%)
・ 今後とも、昇給・勤勉手当における勤務実績の給与への反映を一層推進
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公務員人事管理に関する報告の骨子
1 新たな人事評価制度の導入 〜能力・実績に基づく人事管理の推進〜
・ 人事評価の枠組みについて、フィードバック、苦情処理等を含め更に検討
・ 評価結果の任免、給与、育成への活用方法について基本的考え方を提示。識別力の向上など評価の客観性・安定性確保が重要
2 専門職大学院等に対応した人材確保 〜人材供給構造変化への対応〜
・ 有為の人材確保には、行政官の役割明確化、仕事の魅力の発信、人材供給源の開拓等が必要
・ 「霞が関インターンシップ」や講演会など募集活動強化と併せ、関係者の意見を把握しつつ、採用試験をはじめとする採用の在り方を早急に検討
3 新たな幹部要員の確保・育成の在り方 〜キャリア・システムの見直し〜
・ (1)「採用時1回限りの選抜」によらない公平で効果的な能力・実績に基づく選抜、(2)行政課題に機動的に対応できる幹部要員を訓練育成する仕組みの構築につき、広く合意の形成が必要
・ 幹部に求められる資質・適性、人材誘致に有効な訓練機会、幹部要員の選抜方法などにつき、検討が必要。‐当面、1種における選抜強化、2・3種の登用促進が重要
4 官民交流の拡大
・ 交流拡大は、組織の活性化や閉鎖性を見直す上で重要。具体的推進策は、その意義・目的を明確にした上で、職業公務員との役割分担や公正性の確保に留意しつつ検討することが重要
・ 公募制には、部内育成との適切な組合せや公正な能力検証が重要
5 退職管理 〜高齢期の雇用問題〜
平成25年度から無年金期間が生じることを踏まえ、民間同様、65歳までの雇用継続を前提に、定年延長、再任用の義務化等について、処遇の在り方等の問題も含め研究会を設けて総合的に検討
6 労働基本権問題の検討
労働基本権問題の検討に際しては、公務員の職務の公共性や地位の特殊性、財政民主主義との関係、市場の抑止力との関係、国民生活に与える影響等について検討が必要
7 勤務時間の見直し
来年の勧告を目途に、勤務体制等の準備を行った上で民間準拠を基本として勤務時間を見直し
8 超過勤務の縮減
在庁の実態を踏まえ、府省ごとに在庁時間の縮減目標を設定するなど政府全体の計画的な取組が肝要。超過勤務手当予算の確保が必要。弾力的な勤務時間制度等の導入を検討
9 その他
・ 採用試験年齢要件を検討、女性の採用登用を推進、米国政府への実務体験型派遣研修を新設
・ テレワーク(在宅勤務)の前提としての勤務時間制度の在り方等について研究会を設けて検討
・ 職場における心の疾病の早期発見のための方策の検討、「職場復帰相談室」等の拡充
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<解説>
給与改定 比較企業規模改悪が直撃
水準と配分
本年4月現在で、官民の月例給を比較した結果、1、352円、0・35%の官民較差が存在することが明らかになり、民間準拠の考え方で官民給与水準を均衡させるために、人事院はこの官民較差分の給与改善を勧告しました。一部とはいえ俸給表改善に及ぶベアは8年ぶりとなります。
官民比較の元となった本年4月1日時点の公務員の平均給与水準は38万3541円、平均年齢40・7歳と、いずれも昨年より若干伸びています。
この官民較差については、今年の民間春闘賃上げ状況が昨年を若干上回っているとはいえ(図表参照)、いずれも定期昇給分をわずかに上回る程度の水準であることからすると、「民間相場」を上回る水準であるかのようにもみえます。
しかし、昨年、比較対象となる民間企業規模が「100人以上」から「50人以上」に引き下げられたことで、従来方式であれば実現できたはずの4、252円・1・12%の改善が値切られたことを考えると、これでもきわめて不十分な水準だといわざるをえません。
この改善原資については、(1)俸給表の改定に387円(28・6%)、(2)扶養手当に350円(25・9%)、(3)地域手当の前倒し改定に560円(41・4%)に配分されるほか、俸給改定に伴う諸手当の改善分である「はねかえり分」として55円(4・1%)が使われます。
このように、今回の配分の特徴は、地域手当の先取り改定に4割強の改善原資が使われることであり、それについては別項で解説します。
以下、それぞれの改定内容について解説します。
俸給表の改定
俸給表改定といっても、今回の改定は初任給とその近辺の改善に限られます。
2種・3種初任給が1・2%改定され、それに準じて1種初任給や若年層の俸給月額が改定された結果、行政職(一)では1級1・1%、2級0・6%、3級0・0%の平均引き上げとなり、4級以上については改定がありません。なお、行政職(一)では、俸給額の改定は3級の16号俸にまで及んでいます。
具体的な初任給は、3種14万100円(現行13万8400円)、2種17万2200円(同17万200円)、1種18万1200円(同17万9200円)に改定されます。しかし、この改定によっても、民調による民間の初任給(高校卒15万6472円、大学卒19万5048円)との較差は依然と解消しません。
なお、99年には官民較差がわずか1、034円で全面的に俸給表を改善した例もあり、限定的な俸給表改定は、決して改善原資が少なかったからではありません。人事院の決断しだいでは、俸給表改定で改善を職員全体に及ぼすことも十分可能だったはずであり、なにより給与構造見直しを優先する人事院の姿勢は問題です。
一時金
特別給(ボーナス)について官民の年間支給月数を比較した結果では、民間の支給月数4・51月に対し、公務は4・45月であるとし、人事院は最小単位の改定幅となる0・05月の改善を勧告しました。
しかし、この増加分については、民間の成績査定分割合が公務より高いことを理由に、期末手当ではなく勤勉手当に配分されます。その結果、今年度については12月期の勤勉手当に配分されるものの、来年度以降については6月期と12月期の勤勉手当に0・025月分ずつが充てられ、うち0・015月分は上位の成績区分の成績率の引き上げに回されることになっており、結果として「標準者」の成績率改善は0・72月(現行0・71月)にとどまります。
諸手当
諸手当の中では扶養手当だけが見直されます。具体的には、扶養親族である子等にかかる扶養手当が500円ずつ引き上げられます。その結果現行1人につき6、000円の手当が6、500円に引き上げられます。
なお、人事院は給与に関する「報告」の中で、今後、住居手当の見直しに着手するとしています。職員の家賃負担の状況等を踏まえ、自宅の住居手当の廃止を含めた手当の在り方を検討するというもので、今後の重要課題となります。
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給与構造見直し(3年目) 改善原資の4割強も 地域手当の先取り改定
地域手当
地域手当の支給割合について、08年度の暫定支給割合を定めるとともに、10年度の完成時の地域手当支給割合と05年3月31日の調整手当の支給割合との差が6%以上の地域については、本年4月に行われた改定に加えて0・5%の引き上げが本年4月に遡って実施されます。この追加引き上げ分は、言わば次年度暫定支給割合の「先取り」として実施されます。
地域手当は、05年の給与に関する報告で述べているとおり、俸給表を平均4・8%引き下げ、その一方で、それを原資として手当新設等を行うという給与構造改革の一環として新設された手当です。
このため支給割合の変更は、経過措置を設けて段階的に実施し、原資については官民較差を除く、給与構造「見直し」の既存の原資で措置してきました。しかし、本年4月に遡って実施される0・5%引き上げは、給与改定分の官民較差を原資として実施します。給与構造「見直し」の基本的考え方に齟齬しています。
完成時の支給割合は、給与法で既に決められていますが、08年度の暫定支給割合は人事院規則で下表のとおり定められます。
スタッフ職俸給表の新設
専門スタッフ職俸給表は、行政の多様化、複雑・高度化に対応するため、高度な専門能力を持つスペシャリストがスタッフとして活躍できるとともに、在職期間の長期化への対応の観点から、複線型人事管理の導入に向けた環境整備の一環として新設し、08年4月から実施します。
俸給表は、本府省の課長補佐級から課長級までの水準を基礎とする3級構成とし、調査、研究、情報の分析等により政策の企画及び立案等を支援する職員に適用します。
諸手当については、スタッフ職2・3級職員を超勤手当支給適用除外とし、3級職員のうち、特に重要かつ困難な業務に従事する職員に「専門スタッフ職調整手当」を支給します。
昇給及び勤勉手当は、当該職員にインセンティブを与える観点から、昇給及び勤勉手当については、より成果を反映した仕組みとします。また、当該職員が行う業務が自立的であり、集中的・継続的に行う場合があることを踏まえ、弾力的勤務時間の設定が適当であるとして、4週間毎の期間で割り振るフレックスタイム制を導入するとしています。
専門スタッフ職俸給表は、本省限定の仕組みであり、複線型人事管理との関係も明確でなく、総合的な評価は困難です。定年制など高齢期の働き方や各府省の人事管理のあり方、地方支分部局等の専門スタッフ職の考え方など検討が必要です。
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勤務時間等労働条件 民間の労働時間は7時間44分 早期に時間短縮せよ
勤務時間見直し
人事院は今年の勧告で、所定勤務時間の短縮を見送りました。
人事院が実施した民間の所定労働時間の調査結果では、本年までの4年間の平均所定労働時間は1日当たり7時間44分、1週間当たり38時間48分となっており、公務の勤務時間より1日当たり15分程度、1週間当たり1時間15分程度短くなっています。
また、人事院は、勤務時間の短縮が各府省の行政サービスに与える影響等について調査した結果をふまえ、各府省は業務の合理化・効率化や勤務体制の見直し等の所要の準備を行えば業務遂行に影響を与えることなく対応が可能であると判断しています。
このような状況から、人事院は、「早期に民間準拠を基本として勤務時間を見直すことが適当」であることを報告しています。
しかし、人事院は、この間の交渉で回答しているとおり、交替制勤務の職場(船員、刑務所、病院等)における体制整備や既存の勤務時間制度に波及する問題の検討に時間を要することを理由に、「行政サービスに支障を生じることのないよう新たな勤務時間に対応した適切な勤務体制等を整えるための入念な準備を行う必要がある」として、時短に慎重な姿勢を崩さず勧告を見送りました。
ただし、早期の是正が必要との認識から、「来年を目途として、これらの具体的準備を行った上で、民間準拠を基本として勤務時間の見直しに関する勧告を行う」ことを、今年の報告で宣言しています。時短に向けた環境整備を直ちに行い、人事院に対しては来年の勧告を待たずに「意見の申出」など速やかな対応を行うよう求めていきます。
超勤削減
超過勤務の縮減では、政府全体として喫緊に取り組む必要のある重要課題として、今年の報告で一歩踏み込んだ報告をしています。
報告では、「本府省においては、正規の勤務時間終了後、職員が超過勤務命令を受けずに相当時間にわたって在庁している実態が見受けられる」と述べ、超過勤務命令なしで在庁している「不払い残業」の実態を認め、それを放置してきた問題を指摘しました。その上で、「政府全体として計画的に在庁時間削減に取り組むこととし、各府省ごとに実態に即した具体的な在庁時間の縮減目標を設定し、その達成のため終業時刻後の勤務の事前登録制や人事当局による退庁管理の強化などの取組を徹底していくことが肝要である」と具体的な改善施策の重要性について報告しています。
超過勤務縮減の実効性をあげるとともに、予算の確保も重要であり、この問題での人事院の主導的な役割発揮が必要です。
なお、業務の繁閑に対応した変形勤務時間等の弾力的な勤務時間制度等の導入に向けた検討について言及していますが、これは慎重な検討を要する問題であり、今後の検討に注意を要します。
非常勤の給与
人事院は今年の報告で初めて非常勤職員の給与に対する問題意識と検討の方向性に言及しました。
報告では、「委員、顧問、参与等以外の非常勤職員の給与については、一般職の職員の給与に関する法律第22条第2項の規定に基づき、各庁の長が、常勤の職員との権衡を考慮し、予算の範囲内で支給しているところであり、多様な職務に応じた様々な処遇が行われているが、同様の職務に従事しながら、所属する府省によって必ずしも均衡がとれていない事例も見受けられる」と述べ、各府省の裁量で給与が不均衡となっている問題を指摘しています。その上で、「非常勤職員の給与の実態の把握に努めるとともに、それぞれの実態に合った適切な給与が支給されるよう、必要な方策について検討していく」と述べ、不均衡な給与の格差是正について検討の方向性を報告しています。
また、「非常勤職員の問題については、民間の状況もみつつ、その位置付け等も含めて検討を行う必要がある」として、この間の交渉で回答があったように、非常勤職員の多様な処遇について、部内均衡と民間均衡の方向性などの議論が必要との認識を示しています。
今回の報告で非常勤職員の問題に初めて言及したことは大きな前進面ですが、私たちが要求した休暇制度などの労働条件については何ら言及されていないことや、具体的な施策の打ち出しに至っていないことなど、多くの問題が残っています。
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公務員人事管理 新評価制度導入について人事院の考え方を表明
人事評価
「改正」国公法によって、すべての人事管理が人事評価に基づいて行われることとなりました。その評価に関する権限は内閣総理大臣の所管とされましたが、評価の基準等を政令で定める際には人事院の意見を聞くこととなっていることもふまえ、人事評価制度の導入についての考え方を表明しています。
報告は先ず、基本的枠組みとして、新たな人事評価制度は「職務行動」と「役割達成状況」を評価すべきであること、評価結果のフィードバックや苦情処理のあり方についての検討に言及しています。
評価結果の活用の前提として、第一に評価基準の明確化、目標設定の標準化、各役職段階に求められる典型的な職務行動を踏まえた評価項目の適切な設定を行う必要があること、第二に、制度導入後も評価の信頼性・納得性等を高めていくこと、評価の信頼性の向上に応じた活用のあり方の見直しの必要性も指摘しています。
そして、具体的な活用について、「任免」では適材適所の「任用」を行うために、人事評価に加えてポストに対する適性や将来の能力の伸張の可能性等を勘案すること、「分限処分」は一定以下の低い評価を受けた場合を契機とし、処分に当たっては評価結果を活用すべきだとしています。
「給与」への活用では、評価項目の設定において職員の組織への貢献が適切に評価できるものでなければならないと指摘した上で、「昇給」では過去1年間の評価結果を活用し、項目別の評価結果や所見等も含めて判断すること、「昇格」では昇格前の級における全在職期間の評価結果を活用すること、「勤勉手当」では役割達成状況の評価結果を基本に総合的に判断することが必要だとしています。
また、「人材育成」では、職務行動評価結果を能力向上のための研修等に活用し、自発的な能力開発を促す必要性を指摘しています。
なお、制度設計に当たって、人事院として必要な意見を述べていくことも強調しており、人事院の強い姿勢が現れた報告といえます。
退職管理
年金支給開始年齢の引き上げによって、2013(平成25)年度から60歳で定年退職しても無年金期間が発生し、2021(平成33)年度以降は65歳になるまでの5年間、公的年金が支給されないことから、高齢者雇用のあり方や人事院の問題意識を表明しています。
民間企業では、定年制の廃止や定年年齢の65歳以上への段階的引き上げ、再雇用制度等の導入等が法律で義務づけられていること等について触れ、公務においても2013(平成25)年度を見据えて、民間と同様に年金支給開始年齢までの雇用継続を図ることを前提に、総合的な検討を行うことを明確にしています。
検討の方向性として、第一に定年制の廃止又は65歳までの定年延長、第二に民間企業並みの再任用の義務化(必要な場合には特例定年、勤務延長の拡充)が考えられるとしていることは注目すべきです。
そして、この問題に対処するために、関係各方面との幅広い意見交換を行うこと、学識経験者を中心とする研究会を設けて検討することを表明しています。政府全体として必要な対応を早急に進めることを強調しており、いよいよ定年延長の議論が本格化していくことになります。
労働基本権
専門調査会において労働基本権を含む労使関係のあり方が本格的に検討され、今秋にも結論が出されようとしている中、労働基本権問題について言及しています。
報告は、「専門調査会における議論を注視する」としながらも、労使関係のあり方を見直す際には、公務員の職務の公共性や地位の特殊性、全体の奉仕者との関係、財政民主主義との関係、市場抑制力との関係、国民生活や労使関係に与える影響等について十分な検証が必要だとして、当然検討すべき事項を列挙していますが、より慎重に議論すべきだとの人事院の意思がうかがえるものとなっています。
なお、職員の身分保障は、公務員人事の中立性を確保するために設けられているものであり、労働基本権制約とは直接の関係にないことを改めて強調しています。
このことは、「労働基本権を付与して公務員の身分保障をなくし、民間並のリストラを進めるべき」などの一部政府与党の幹部や財界の主張に釘を刺したという点で評価できるものです。
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