◆公務にふさわしい「人事評価制度」の確立を
評価に対する信頼性、納得性が大前提
「改正」国公法で何がどう変わったか
「人事評価の試行」は、「人事管理に活用できる評価手法を探る」という目的で、これまで2次に渡っておこなわれてきました。しかし、先の通常国会での国公法「改正」により、人事評価が「任用、給与、分限その他人事管理の基礎」として位置づけられたことから、試行の目的が、「能力・実績主義の人事管理の基礎」に変更され、本年10月から地方組織・専門職を対象に、新たな試行がスタートしました。
◇人事管理を「人事評価」に基づいて行う
「改正」国公法の目的は、「再就職規制の見直し」と、「能力・実績主義の人事管理の強化」でした。
◇国公法に「人事管理の原則」概念を導入
そのため、これまでの国公法の原則、(1)「平等取扱の原則」(2)「情勢適応の原則」に加えて、職員の任用、給与、分限等すべての人事管理を「人事評価」に基づいて行うこととし、これを(3)「人事管理の原則」としました。
「改正」国公法では、各官職(係員、係長、課長補佐、課長など)に求められる能力を「標準職務遂行能力」とし、当該官職に任用する場合、「人事評価」を基礎に能力の有無を判断することとしています。
人事評価と任用に関する事務はすべて内閣総理大臣の権限とされ、人事評価の基準及び方法等の事項は「人事院の意見を聴いて政令で定める」とされました。給与など勤務条件に関する権限は引き続き人事院の所管とされましたが、労働基本権が制約されたもとで、給与をはじめとする勤務条件決定に大きく影響する部分で、一方的に政府の権限が強化されたことは重大な問題です。
◇人事評価について、労組関与は不明確
とりわけ重大なことは、人事評価が勤務条件に直結する問題にもかかわらず、「管理運営事項」の名の下に、労働組合の関与が明確になっていないことです。人事評価の基準及び方法等に関する事項は、当然交渉・協議事項の対象とされなければなりません。
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◇「能力・実績主義」の問題点
能力・実績主義の最大の問題点は、「人が人を公正に評価することの困難性と限界」です。どんなに評価者の訓練を強化したとしても、評価の主観性・恣意性を完全には排除できません。
また、発揮した能力とか実績を強調すれば、いたずらに競争心が煽られ、職場のチームワークは乱れてしまいます。良質で安定的な公務サービスの提供よりも、上司の意向と自らの評価や処遇に意識が向いかねません。
さらに、任用をはじめ給与等の処遇までもが人事評価の結果だけで決定されるようになれば、差別的な人事政策の温床になる懸念があります。
◇公務の人材育成の特性を無視
また、「改正」国公法では、年功による人事管理を否定するニュアンスが強く打ち出されています。これは、実務経験によって専門能力を身につけ、経験の蓄積を通じて能力の向上をはかるという、公務の人材育成の特性をまったく無視したものといえます。
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