通常国会に提出されている「公務員制度改革」関連法案は、民主党提出の法案とともに15日午後、衆議院本会議で、翌16日には付託された内閣委員会で趣旨説明が行われ、18日から審議が始まりました。
初日の審議(9:00〜19:20)は、再就職規制(天下り規制)に関して質問が集中し、一時は渡辺行革担当大臣の答弁を巡り紛糾する場面もあり、再就職規制の適用範囲に関わって、はやくも「抜け道」のあることが露呈する形となりました。
法案は、労働基本権問題を先送りにしたまま、能力・実績主義の人事管理を強化するとともに、人事院の機能を縮小し内閣権限を強化するものです。また、天下り規制を言いながら実効性は極めて疑わしいものです。
法案の廃案をめざし、委員会傍聴をはじめとする国会行動を強化するとともに、全国各地で国会議員要請や当局追及、関係機関要請など、とりくみを更に強化していくことが求められています。
再就職規制で、はやくも「抜け道」露呈
衆議院内閣委員会で質問に立ったのは、西村康稔・平井たくや・後藤田正純(以上、自民)、石井啓一(公明)、細野豪志・馬淵澄夫・武正公一・泉健太(以上、民主)、吉井英勝(共産)の9名の議員で 、再就職規制(天下り規制)に関して質問が集中しました。
自民党の西村議員は、「公務員改革を早急にやらなければならない」と法案の早期成立を求め、その上で民主党案に関わって、「早期勧奨退職慣行禁止は、公務員に対する過保護、人事は新陳代謝が必要で流動化が大事」と批判し、再就職管理について「官民人材交流センターによって公務員は評価されて堂々と再就職できる」政府案を評価しました。
また、平井議員は、「再就職斡旋を無くした場合、人事の停滞、高齢職員の比率が増え人件費がかさむ」として、天下り制度を評価しました。
後藤田議員は、「憲法15条、公務員は全体の奉仕者であり民間とはイコールフッティングにはならない」「民主主義のコストはかかることを国民にも改めて考えてもらうことが必要」「人材派遣会社はボロ儲けして問題があり、その点からも公の再就職斡旋制度は必要」また、渡りについて「社保庁の問題を起こした当時の長官が未だ渡りをしているが、処罰すべきでそれがなければ改革は進まない」と行革大臣に対応を求めました。
公明党の石井議員は、「天下り再就職しなくてすむことが必要」としつつも、法案に官民人材交流センターは20年度に設置が盛り込まれており、予算措置の関係から「今国会での早期成立」を求めました。
民主党の細野議員は、「各省でも内閣府でも再就職斡旋は天下りである」として、「再就職斡旋の全面禁止」を求めました。また、渡り問題で府省のあっせん実態の調査結果(16件)と法人への天下り実態から「各省からの斡旋ではなく、法人等から各省人事当局を介せず受入要望があった場合の規制はできるか」と、政府案の問題点を追及しました。
馬淵議員は、渡りの実態調査で各省の人事情報管理が徹底されていないことから「制度設計するには実態調査が必要」と再調査を要求。また、早期勧奨退職慣行が天下りの根本問題で「同期でたった1人しか残れない制度が問題」とし、民間と同様に定年まで働ける形にすべきだと早期勧奨退職慣行根絶を主張しました。
武正議員は、天下り先の独法の運営にあたって多額の運営費交付金を問題視。「随意契約は談合の一種」として、随契と出向者の見直しを要求しました。
泉議員は、天下り先と補助金の関係を指摘、また民間企業が定年延長する方向にあることにもふれ「早期勧奨退職慣行は禁止すべき」と政府案を批判。また、「能力のない職員は分限免職すべき」と職員に対する処分強化を求めました。
共産党の吉井議員は、再就職問題に関わって、「各省からの押しつけ的斡旋を禁止すると言うが民間から誘われた形(民間から個人への依頼)なら機能しないのでは」と政府案の問題を指摘するとともに、「官民交流と官民癒着という異質なものを同列で扱おうとしている根本矛盾がある」と法案の本質的問題を質しました。また、政府案が、官民人材交流センターの長を官房長官としていることから、委員会審議において行革担当大臣に加えて官房長官が常時出席するよう求めました。
これらの質問に対する渡辺行革大臣らの答弁は、要旨次のようなものでした。
(1)再就職規制に関わって、「天下り」とは「各省が予算と権限を背景に人事の一環として押し付け的に斡旋すること」であり、「再就職支援はまったく別なもの」として、早期退職勧奨のよる再就職斡旋を政府として実施することを表明。また、「年功序列の人事を止め、能力・実績主義の人事管理が徹底すれば、早期勧奨退職は自然と無くなる」と、具体的根拠を示すことなく強調。
(2)「渡り」に関して「調査の結果16件は氷山の一角だが、分かっただけで進歩」として評価し、「官民人材交流センターは、あくまで職員の離職に関する斡旋であり、渡りはやらない」と、センターとしては、2度3度の渡り斡旋は行わないと回答。
(3)再就職斡旋の適用範囲に関わっては、「各省やOBの関与、事前就職活動(係長以下は対象外)に厳格な罰則規定(出向者は対象外)がある」と強調するものの、法人や民間から個人に要請があった場合の問いに対して「依頼を省に行えば口利きで刑事罰になる」を繰り返し述べるにとどまり、本人に直接働きかけた場合の答弁はなく、早くも政府案の「抜け道」が露呈。
(4)官民交流と癒着問題では、「民間からの中途採用を大いにやるべきで、そのため官民の垣根を低くし、官民交流の闊達な促進を図る」とするものの、癒着の「根絶」を実現するための具体的回答なし。
(5)具体的な制度設定については、「有識者懇談会で検討する」を繰り返すにとどまり、多くの課題を先送りしたまま枠組みだけを早期成立させ、「改革」勢力を参院選にアピールしようとする与党の対応が明らかに。
(6)「渡り」実態の再調査や官房長官の委員会の常時出席については、理事会で検討することに。
「悪法阻止と政治革新を」 議面集会で岡部書記長が決意表明
昼休み時間には、衆議院議員面会所において、全労連「公務員制度改革」闘争本部・公務労組連絡会・労働法制中央連絡会の三者共同で社保庁解体や公務員制度改革などの課題に関わって、集会を開催しました。
公務労組連絡会の米浦議長が主催者を代表して挨拶し、教育改悪三法案が衆議院で強行採決されたことに抗議するとともに、今国会に上程されている様々な悪法の成立阻止に奮闘しようと呼びかけました。
内閣委員の吉井議員(共産党)が、審議の合間に激励と国会報告に駆けつけ、「公務員制度改革関連法案は、全体の奉仕者である公務員を財界の奉仕者に変えるもので、国民生活に関わる重大な問題。官業癒着や労働基本権など徹底して追及していく」と決意を述べました。
各団体からの決意表明で国公労連の岡部書記長は、「安倍首相が戦後レジームからの脱却の中核と位置づけた公務員制度改革は、財界の政策提言を背景にした新自由主義的な行政乗っ取りの攻撃で、戦争する国を支える人づくり、物言わぬ公務員づくりが狙われている。能力実績の人事管理は、人事院から内閣総理大臣に任用や人事評価の権限を移すとしているが、勤務条件に直接関わるもので労働基本権回復と一体でなければならない。また、再就職規制というが、「天下り」の自由化・合法化であり、勧奨を前提とすることなく、定年まで働ける制度とすべきなど、法案の問題点を指摘し、悪法成立を阻止と政治革新実現に向け奮闘すると、力強く訴えました。
集会は、全労連「公務員制度改革」闘争本部・寺間事務局長の行動提起を全体で確認し、午後の傍聴行動等に移りました。
以上
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