「公務員制度改革」関連法案の審議は、6日の衆議院内閣委員会で行われました。
この日の議論も再就職管理に集中。与党と民主党が、天下り根絶をめぐり平行線の議論をする中で審議時間が経過しました。この間、野党側が高級官僚による再就職を繰り返す実態について資料請求を行い、政府は16件のみ報告していました。しかし、内閣委員会ではなく外務委員会の議論において、16件とは別の13件の事案が明るみに出、審議の前提となる調査がきわめて不十分であることが判明しました。さらに、渡辺行革大臣はじめ政府側の不誠実な答弁に、何度も審議が中断するなど委員会は紛糾しました。
しかし、事前の理事会で、与党と民主党の間でこの日の採決が合意されていたため、質疑時間の経過を理由に採決が行われ、政府案が与党の賛成多数で可決され、民主党案は否決されました。政府案は、翌7日の本会議において可決され、衆議院を通過しました。
国会の会期延長は依然として不透明ですが、今後のたたかいは参議院に移り、廃案に向けたたたかいの強化が求められます。
◆13時30分過ぎ、政府案を自公の賛成多数で可決
6日、衆議院内閣委員会の質疑者は、寺田学・川内博史・武正公一・長妻昭・泉健太(以上、民主)、赤澤亮正(自民)、吉井英勝(共産)の7名の議員で、その後、締めくくり総括質疑を平井たくや(自民)、小川淳也(民主)吉井英勝(共産)の3議員が行いました。
民主党の寺田議員は、政府案で天下りは無くならないとし、押しつけ的斡旋だけが天下りとする政府見解は不十分と批判。
川内議員は、天下りの実態について、受入側の公益法人からの依頼で再就職している具体的事例を示し、政府案ではこれを規制できないと批判。こうした実情を再調査するよう求めました。
武正議員は、法案の求職活動禁止規定について、在職出向を除外しているのは抜け穴であると指摘しました。
長妻議員は、本来違法となる企業への再就職を、別企業に再就職して同日付で出向する形で行っていることや、会計検査対象法人に会計検査院からの天下りしている実態、行政OBが受注を約束した上で起業し、随意契約で利益を得ていることなどを示し、政府案では防げないと指摘しました。また、公務員だけ特別扱いする人材バンクを批判し、官民同等の扱いを主張しこの機会にハローワークを改革するよう求めました。渡辺大臣は答弁中に、「官民交流センターを作らないと公務員が定年までしがみつき、行革に反する」、「交流センターはハローワークより就職率が高く中立」などと暴走しました。
自民党の赤澤議員は、能力実績主義が、簡素で効率的な政府の実現、生産性向上・効率性につながると主張。合わせて官民交流の促進を貫徹することが重要と強調しました。また、民主党案は具体的でないと批判し、政府案でなければ天下り天国が続くと主張しました。
共産党の吉井議員は、公務労働者は国民全体の奉仕者として、中立・公正を貫くことが求められるとしたうえで、現行制度は退職後2年間、密接な関係企業等に対する再就職を規制しているが、政府案ではセンターを通せば翌日からでも可能となり、天下り自由化案と批判しました。また、官民癒着を絶つため、現行103条2項の強化の必要性を強調し、実態調査も途中の段階では審議が尽くされていないとし、採決を急がず引き続き審議することを求めました。
民主党の泉議員は、渡りの実態が16件しか判明できないと報告されてきたものの、当日外務委員会にて16件とは別の13件に及ぶ事案が確認されたことを明らかにし、政府の不十分な調査に抗議するとともに、再調査を求めました。
その後、締めくくり総括質疑が行われました。
自民党の平井議員は、政府案に賛成。現状は公務員の能力が活かされていない。公務員制度改革を断行し適正な再就職管理と官民人材交流を進めることが求められる。民主党案は役員天国、人件費が莫大となるとし反対しました。
民主党の小川議員は、天下り温存で新たなルートをつくる、制度設計は有識者懇談会に丸投げ、事前規制撤廃は天下りを助長と政府案に反対の態度を表明し、民主党案は天下り根絶が期待できるとし賛意を表明しました。
共産党の吉井議員は、政府案を天下り自由化法と指摘し、能力実績主義は公務にそぐわず行政サービス低下につながることを主張しました。さらに労働基本権問題が先送りされている中で、法案が先行していること自体が問題と反対を明確にしました。また民主党案については、天下り規制は賛成としつつも、官民人材交流については政府案同様の問題を有するもので反対の態度を示しました。
討論の後、13時30分過ぎ採決が行われ、まず民主党提出の3法案が賛成少数で否決され、次に政府案が自民・公明の賛成多数で採決されました。直後、与党側から11項目の附帯決議が提案され採択されました。
附帯決議が採択されたのを受け、渡辺行革大臣は、附帯決議の趣旨に添って配慮し公務員制度改革を進めると述べました。
以上
【別添資料】
国家公務員法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議
2007年6月6日
衆議院内閣委員会
政府は国民に信頼される公務員像を実現するため、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じるべきである。
一、本案における能力・実績主義や再就職規制の導入のみではなく、優秀な人材の確保策や公務員の能力向上のための育成方針等、採用から研修育成、昇任、処遇、定年制度等に至る人事制度全般について、実態を踏まえた総合的かつ整合的な検討を十分に行い、その実施を図ること。
一、公務員制度改革について、専門スタッフ職の実現、公募制の導入、官民人材交流の抜本的拡大を含めた採用から退職までの公務員の人事制度全般の総合的な改革を推進すること。
一、政府は、官民人材交流センターの創設に当たり、制度設計の検討については、再就職ニーズに十分対応できる再就職支援機能の重点的強化を図るとともに、各府省からの中立性を徹底し、業務の透明性等を確保すること等の原則に従うこと。また、センターの在り方を常時、見直すことに努めること。
一、再就職に関する規制及び監視体制の運用に当たっては、押し付け的あっせんや官製談合に対する強い批判を踏まえ、国家公務員に対する国民の信頼を回復することができるよう、厳格かつ適切な運用を図ること。
一、近年、公務員志望者が減少する中で、優秀な人材を確保するためには、公務員として公務に携わることの魅力を十分明確にする必要がある。このため、公務員のキャリアパスが明確であって、人生設計に希望が持てるような人事制度となるよう、十分配慮すること。 また、各府省庁間の人事交流をなお、一層促進すること。
一、能力・実績主義の運用に当たっては、単に短期的かつ形式的な成果によって昇進や昇給に反映するのではなく、公務員としての育成、能力開発に資するものであって、国民に成果が還元されるよう制度運用について十分な検討を行うこと。
一、官民人材交流センター等の運用に当たっては、今般の改革の目的の一つが官と民との人材の相互交流の拡大にあることから、若手職員の交流を一層拡大し、相互に、バランス良く交流ができるように、その運用を険討し、実施すること。
一、総人件費削減等の今後の行政改革の推進に当たっては、公務員の士気の低下を招くことのないよう、各府省の実態を踏まえた上で、公務員制度改革との整合性を十分に検証し、その実施を図ること。
一、職員が培った高度な専門知識や経験を長期間公務に活用できるようにするため、専門スタッフ職を創設し、そのための俸給表を早急に整備するとともに、公務部門の新陳代謝が阻害され、人員構成が高齢化しないよう、必要な定員・定数の配分について特段の配慮を払うこと。専門スタッフ職職員について、兼業規制の大幅な緩和を行うこと等により、知識、経験を大学等の研究機関や民間企業にも還元できるようにすること。
一、勤務条件や退職後の生活環境について、官民のイコールフィッティングを図るため、主要先進諸国の国家公務員の状況をも参考にしつつ、国家公務員の定年を年金支給開始年齢まで引き上げることを検討するとともに、年金の支給額についても民間企業と同等の水準を維持できるよう制度設計を進めること。
一、労働基本権を含む公務員の労使問題について、行政改革推進本部専門調査会における審議を踏まえ、引き続き検討を行うこと。
(以上)
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