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国公労連速報 2007年7月9日《No.1880》
 国公法「改正」(案)への質問主意書に対する政府答弁書
     
 

 

 第166回通常国会で審議された「国会公務員法等の一部を改正する法律案」(6月30日成立)に対する質問主意書が、日本共産党・吉川春子参議院議員により6月28日に提出され、その答弁書が7月6日に明らかになりました。
以下にその全文を掲載します。

国会公務員の人事評価、標準職務遂行能力、再就職(天下り)規制等に関する質問主意書

質問第五四号

 国家公務員の人事評価、標準職務遂行能力、再就職 (天下り) 規制等に関する質問主意書
 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

平成十九年六月二十八日
吉川春子
参議院議長 扇 千景 殿

 国家公務員の人事評価、標準職務遂行能力、再就職(天下り)規制等に関する質問主意書

 第百六十六回国会(常会)に提出された国家公務員法等の一部を改正する法律案 (以下「本法案」という。) は、「能力実績主義の人事管理」として、国家公務員の勤務条件に重大な影響を及ぼす新たな人事評価制度の構築等が規定されている。また、「再就職規制の見直し」 として、現行の事前規制を廃止するともに、再就職あっせんについては各府省によるあっせんを禁止して、内閣府に設置する「官民人材交流セター」が一元管理するとしている。現在、国家公務員は憲法第二十八条に保障された労働基本権が制約さており、そのことから、勤務条件に関する事項は労働基本権の代償機関である人事院の権限とされているところである。労働基本権制約が現状維持のまま、勤務条件に関する権限が内閣総理大臣の権限に移るとなれば、憲法上の問題が生じることとなると考える。また、「再就職規制の見直し」に関しても、事実上の「天下り」の自由化であり、国民の批判にこたえるものとはなっていない。
 よって、以下質問する。

一 人事評価と勤務条件の関連性について

1 本法案第二十七条の二(人事管理の原則)は、「職員の任用、給与その他の人事管理は、(中略)人事評価に基づいて適切に行わなければならない」としている。人事評価の結果によって給与が決定されるとすれば、人事評価は勤務条件そのものであり、任用(昇任)と給与(昇格)は連動することから、任用もまた勤務条件と密接に関連するものである。つまり、人事評価制度の設計やその基準は勤務条件であると考えるが、政府の見解を示されたい。

2 政府において現在実施中の「新たな人事評価制度」の試行について、「今後の行政改革の方針」(二〇〇四年十二月二十四日閣議決定)では、「適材適所の人事配置」、「効果的な人材育成」の評価手法の開発・定着の観点からとしている。また、「行政改革の重要方針」(二〇〇五年十二月二十四日閣議決定)では、「人事管理の基盤的ツール」として活用可能な評価システムの構築に向けてとしている。これらは、本法案に規定する「人事評価」とは目的が異なるものではないか。政府の見解を示されたい。

二 「標準職務遂行能力」 等について

 本法案第三十三条は、任免の根本基準として「任用は人事評価、その他の能力の実証に基いて行う」とし、第三十四条では、任用にかかわる「採用」、「昇任」、「降任」、「転任」、 「標準職務遂行能力」 の定義を行っている。そのうち、「標準職務遂行能力」 については、「職制上の段階の標準的な官職の職務を遂行する上で発揮することが求められる能力として内閣総理大臣が定める」とし、その 「標準的な官職」は、「職制上の段階及び職務の種類に応じ、政令で定める」とされているものの、具体的なイメージを含めて不明かつ疑問点が多い。

1 「標準的な官職」を本省、管区、地方出先機関ごとに定めるとすれば、その機関ごとの官職の上下関係しか明らかにならず、機関を越える異動がある場合、それが昇任か転任か判断できないと考えるが、政府の見解を示されたい。

2 各行政分野の専門性の向上がますます重要となっている中で、「職制上の段階」に着目した 「標準職務遂行能力」は、ゼネラリスト優位の人事管理を温存させる結果となり、専門性の向上の障害となると考えるが、政府の見解を示されたい。

3 「職制上の段階」と「標準職務遂行能力」は、給与法上の級別標準職務表、級別定数等とどのように関連するのか。また、「標準職務遂行能力」 の実証は、昇格運用や査定昇給とはどのように関連するのか。それぞれ明らかにされたい。

4 「能力の実証」 による昇任というものの、上位の職制段階に求められる能力は、評価できない能力評価(現に任命されている官職での能力の発揮度を評価)との矛盾が生ずるが、政府の見解を示されたい。

5 国家行政組織法上の職制上の序列は、国家公務員法上の任用の職務の段階とは異なることから、職階制 (法) を廃止するなら、実際の職務の複雑、困難、責任の度に応じた法制上の位置付けが必要ではないか。政府の見解を明らかにされたい。

三 本法案附則の 「準備行為等」 等について

1 本法案の附則は、施行期日について基本的には二〇〇八年十二月三十一日までの間に政令で定める日から施行としているが、附則第三条の「準備行為等」では、「採用昇任等基本方針」 の策定や人事評価の実施にかかわる必要な行為は、公布の日から二年以内とし、施行日以前であっても行うことができる規定になっている。つまり、労働基本権が制約されている下で、勤務条件に直結する政令や規則、基準等の策定・設計を政府が一方的に決定することなく、当該職員の代表である労働組合の関与を担保する労使協議システムの構築が不可欠であると考えるが、政府の見解を示されたい。

2 国家公務員法第七十八条第四号は、判例で確立している「整理解雇の四要件」に比べて相当に緩く、公務員の権利保障の観点から雇用関係の終了事由として再検討すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

四 再就職( 天下り)規制について

1 「天下り」に対する国民の批判は、高級官僚が幾つもの「天下り」先を転々とし、何度も高額な退職金をもらい続けていることと、官製談合等の温床になっていることである。本法案は、こうした「天下り」 の弊害をなくすことができるのか。できるというのであれば、その根拠を示されたい。

2 本法案第百六条の四は、「再就職者による依頼等の規制」を定めているが、「離職後二年間」に限って、再就職者による依頼等の経済活動を規制するものとなっている。本法案はこうした「行為規制」を置いているのに対し、現行法は、私企業からの隔離として、第百三条第二項で離職後二年間の再就職を規制(期間規制)している。本法案は、この項を削除し、期間規制を撤廃することとしているものの、同じ「二年間規制」であっても、行為規制と期間規制では意味が異なると考えるが、政府の見解を示されたい。また、事務次官や局長経験者の言動の及ぼす影響は離職後も極めて大きく、再就職者からの依頼等を 「離職後二年間」 制限しても、何の意味も持たず、官民癒着は温存されるのではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

3 本法案第十八条の二は、退職管理に関する権限を内閣総理大臣の権限とするとともに、本法案第百六条の五は、再就職に関して 「再就職等監視委員会」 を内閣府に設置するとしているものの、人事行政の公正の確保の権限は人事院の権限であると考えるが、政府の見解を示されたい。
右質問する。
以上


国会公務員の人事評価、標準職務遂行能力、再就職(天下り)規制等に関する質問に対する答弁書

内閣参質一六六第五四号
平成十九年七月六日
内閣総理大臣 安倍晋三

参議院議長 扇 千景 殿

 参議院議員吉川春子君提出
 国家公務員の人事評価、標準職務遂行能力、再就職 (天下り) 規制等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

 参議院議員吉川春子君提出国家公務員の人事評価、標準職務遂行能力、再就職(天下り)規制等に関する質問に対する答弁書

 一の1について

 新たに導入することとしている人事評価制度は、任用、給与、分限その他の人事管理の基礎となるものであるが、人事評価制度自体は、職員の執務の状況を的確に把握し、記録することを内容とするものであり、また、人事評価の結果をどのように活用するかという点については、人事評価制度それ自体ではなく、任用、給与、分限等のそれぞれの制度において定められることとなるものであることから、人事評価制度は、勤務条件には該当しないものと考える。

 一の2について

 現在、政府においては、「行政改革の重要方針」(平成十七年十二月二十四日閣議決定) 等に基づき、人事管理の基盤的ツールとして活用可能なより実効ある新たな人事評価システムの構築に向け、職員の職務遂行能力、勤務実績をできる限り客観的に把握するための新たな人事評価の試行を実施しているところである。第百六十六回国会で成立した国家公務員法等の一部を改正する法律 (平成十九年法律第百八号)による改正後の国家公務員法 (昭和二十二年法律第百二十号。以下「新法」 という。) に規定する人事評価は、「任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価」であり、現在試行を実施している新たな人事評価の目的は、これと異なるものではない。

 二の1について

 国の行政組織においては、地方支分部局が本省の所掌事務の一部を分掌するとともに、両者の問における指揮監督関係により事務の統制が図られ、系統的な組織編制となっている。職制上の段階は、このような組織における指揮監督の系統や序列等の階層秩序を表すものであり、本省内部部局と地方支分部局との間の職制上の段階の関係についても、この系統的に編制された国の行政組織全体の中で整理されるものであるため、両者を越える異動がある場合であっても、当該異動については、昇任、降任又は転任のいずれに該当することになるか判断できるものと考える。

 二の2について

 新法においては、職員の昇任等について、標準職務遂行能力のみならず、「任命しようとする官職についての適性」を有すると認められる者の中から行われることとされており、当該適性の判断に当たっては、個々の官職ごとに求められる専門的な知識、技術、経験等の有無が考慮されることとなる。したがって、標準職務遂行能力を定めることとしたことが、専門性の向上の障害になるとは考えていない。

 二の3について

 職制上の段階の標準的な官職に係る標準職務遂行能力を判断基準として官職に任命された職員の給与については、「職員の給与は、その官職の職務と責任に応じてこれをなす」との職務給の原則に従い、一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)において、級別標準職務表、級別定数等により、職員の職務の級が決定され、職員の職責に応じた給与処遇がなされることとなるものである。職制上の段階及び標準職務遂行能力は、この給与決定と直接関連するものではない。また、標準職務遂行能力は、職員の昇任等に際しての判断基準として定められるものであり、給与上の昇格や昇給とも直接関連するものではない。

 二の4について

 一般的に、任命しようとする官職より下位の職制上の段階に属する官職において勤務成績が優秀であれば、上位の職制上の段階に属する官職に係る職務遂行の能力を有する蓋然性が高いと考えられることから、任命権者が、職員について、当該職員の人事評価に基づき、現在任用されている官職より上位の職制上の段階の標準的な官職に係る標準職務遂行能力を有する者と認めることには、一定の合理性があるものと考える。

 二の5について

 個々の官職については、系統的な組織編制の下に設置されるものであるため、国家行政組織法、各府省設置法、各府省組織令、各府省組織規則等の組織法令等により組織編制を行う時点でいずれかの職制上の段階に属することとなり、同一の職制上の段階に属する官職群であれば、その職務を遂行する上で発揮することが求められる能力については、共通して一定のものが必要になると考えられるところである。このため、新法においては、職制上の段階の上下の別によって、昇任、降任及び転任を定義し、組織法令等による組織編制の時点で明確になっている職制上の段階を端的に表すものとして、新法においても、職制上の段階の標準的な官職を政令で確認的に定めることとするとともに、当該標準的な官職の職務を遂行する上で発揮することが求められる能力として内閣総理大臣が標準職務遂行能力を定め、これを職員の昇任等に際しての判断基準とすることとしているところであり、これとは別に、職務の複雑、困難、責任の度に応じた法制上の位置付けを設けることは、職階制を廃止するとしたとしても、必要ないと考えている。

 三の1について

 採用昇任等基本方針は、職員の採用、昇任、降任及び転任に関する制度の適切かつ効果的な運用を確保するために必要な事項を定めるものであり、また、人事評価制度は、一の1のとおりであるため、それぞれ勤務条件には該当せず、したがって、これらは、国家公務員法第百八条の五第一項に基づく交渉の対象事項ではないと考えている。しかしながら、人事評価制度については、任用、給与、分限その他の人事管理の基礎となるものであるため、当該制度の設計に当たっては、職員団体とも十分に話し合っていきたいと考えている。

 三の2について

 国家公務員法第七十八条第四号は、職員の意に反して降任又は免職できる事由の一つとして、官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合を定めているが、公務員の分限免職についての過去の裁判例において、任命権者が被処分者の配置転換が比較的容易であるにもかかわらず、その努力を尽くさずに分限免職処分をした場合には権利の濫用となると判示されているところからも明らかなように、本号に基づく分限免職は公務員の雇用を維持できないやむを得ない事由がある場合に行われるものであることから、当該規定について再検討する必要はないものと考える。

 四の1について

 近年摘発されている官製談合等の背景には押し付け的なあっせんがあったであろうと推測している。
新法においては、押し付け的なあっせんを根絶するため、各府省等による再就職あっせんを全面的に禁止するとともに、民間に就職した職員の出身省庁への働きかけ等も規制することとしており、これらに関する不正行為等に対しては刑罰を導入することとしている。また、外部監視機関による厳格な監視体制も構築することとしている。
 このように、新法はいわゆる 「天下り」規制を抜本的に強化するものであり、これらの措置により、いわゆる 「天下り」問題は根絶することができると考えている。

 四の2について

 新法においては、元職員が有する影響力により公務の公正性が損なわれるおそれと元職員の有する職業選択の自由等とのバランスを考慮し、現行の事前承認制度が離職後二年間の規制としていることも踏まえて、原則として離職後二年間の働きかけを規制することとしたものである。
 「行為規制と期間規制では意味が異なる」の趣旨が明確ではないが、四の1についてで述べたとおり、新法はこれまでの事前承認制度以上に厳しい規制となっており、いわゆる 「天下り」問題は根絶することができると考えている。 また、官民癒着の問題については、新法に加え、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)等による官製談合規制の厳格な運用、公共調達の適正化等の取組を総合的に推進することにより解決すべき事項と考えており、引き続きこれらの取組を進めてまいりたい。

 四の3について

 新法においては、予算や権限を背景とした押し付け的あっせんや官製談合に対する国民の強い批判等にかんがみ、行政の適正な遂行の責任を有するとともに、公務員の人事管理について責任を負うべき政府を代表する内閣総理大臣において、職員の退職管理に関する事務を一元的につかさどることとし、その一環である離職後の就職に関する規制の実効性を確保するため、当該規制に係る調査及び当該規制の適用除外に係る承認の権限を内閣総理大臣に付与し、これを内閣府に設置する再就職等監視委員会に委任することとしたものである。
なお、人事行政の公正の確保に関する人事院の役割には変更がない。

以上

 
 
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