政府は本日、社会保険庁の年金業務を承継する日本年金機構の「基本計画」を閣議決定した。これは、年金業務・組織再生会議が6月30日にとりまとめた「日本年金機構の当面の業務運営に関する基本的方針について」(最終整理)にもとづくものではあるが、職員の採用については自民党の強い意向を受けて、処分歴のある職員は全員採用しないとする重大な「修正」を行ったものである。
国公労連はこの間、年金業務の安定的運営を確保し、国民の信頼を回復するためにも、雇用の継承を明確にして職員が安んじて業務に専念できる体制確立を求めてきた。「機構」発足時に現在の人員を3000人余も削減する「基本計画」では、年金業務の円滑な移行や年金記録問題の早期解決を困難にするものと言わざるを得ない。また、懲戒処分歴を口実に業務に精通した職員を排除することや1000人もの民間人採用、「機構」発足後の合理化を前提にした1400人の有期雇用職員化も、年金業務の専門性・安定性の確保を阻害するものと考える。同時に、各種届書の第一次審査や納付督励、年金相談業務などの民間委託の拡大は、個人情報の管理やノウハウの継承など新たな混乱と問題発生が懸念される。
本日の閣議決定は、国民が求める安心・信頼できる年金制度の確立に背を向けるとともに、国家公務員の身分保障や労働法理にも反する決定であり、国公労連として断固抗議するとともに、その撤回を求めるものである。
国公労連も参画する「国の責任で、安心して暮らせる年金制度をつくる連絡会」は、「年金業務の安易な民間委託は行わず、専門的な経験と知識を持つ職員の雇用を確保し、安定的、継続的な年金業務運営を確保」するよう政府・厚生労働省に申し入れを行っている。
また、自由法曹団と日本労働弁護団はそれぞれ、年金業務・組織再生会議の最終報告や職員採用基準に関わって、過去の処分の内容や程度、処分理由を問わず一律に不採用とすることは実質的な二重処分に等しく不合理・不当であると指摘するとともに、「公的年金制度を専門性のある職員によって安定的に支えることに背を向け、年金記録問題を誠心誠意解決する意思も見通しもないまま、やみくもに人員削減のみを追求するものであり、国民の公的年金の保障を崩壊させるもの」(自由法曹団)、「人員整理の必要性を問擬せず、過去の処分歴や『ヤミ専従』を理由に分限免職するのは合理性を欠くものであることは明らかであり、権利を濫用するもの」(日本労働弁護団)との「意見書」を公表し、政府に提出した。
政府と厚生労働省、社会保険庁には、日本年金機構のもとでの年金記録問題解決の方策と体制を確立することが求められている。同時に、憲法の生存権規定にもとづいて、国民が安心・信頼できる公的年金制度を確立する責任を負っていることを自覚しなければならない。
そのことから国公労連は、日本年金機構のあり方について、あらためて国民的な議論を行うことを求めるものである。あわせて、年金業務運営の専門性と安定的運営を確保するため、業務に精通した職員の雇用確保とともに、安心・信頼できる公的年金制度の確立をめざして運動を進めるものである。
2008年7月29日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 岡部勘市
以上
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