政府が決定した日本年金機構の「当面の業務運営に関する基本計画」は、社会保険庁を解体して業務を細分化したうえで、基幹的な業務も含め民間委託を拡大するものである。職員採用については、民間から1000人も採用する一方で3000人を超える職員を削減し、機構発足後の合理化を前提に1400人の正規職員を有期雇用化するものである。さらには、記録問題解決の体制確立は棚上げにしつつ、懲戒処分歴のある職員は一律不採用とすることも盛り込んだ。
老後の命綱である公的年金は、何十年にもわたる加入記録や保険料の確実な管理が不可欠である。受託業者が数年ごとに入れ替わる競争入札による民間委託では、安定的な業務運営の確保は困難である。さらに、受給者・加入者を含めた1億人もの個人情報が正しく管理・保護されるのか、新たな混乱と問題発生は避けられない。これらは、ビジネスチャンスの拡大や年金積立金の市場運用を求める財界・大企業に応えるばかりか、国や大企業の負担と責任を免罪する社会保障解体攻撃と一体となったものである。
業務に習熟・精通した職員を大幅に削減することも、国民が求める安心・信頼できる年金制度の確立を困難にするものである。また、懲戒処分歴のある職員について、処分の内容や程度、理由の如何を問わず一律に不採用とすることは実質的な二重処分に等しく、公務員の身分保障や労働法理にも反する違法・不当なものであり容認することはできない。
このように「基本計画」は、公的年金の崩壊を加速し、年金業務の円滑な移行や記録問題の早期解決を困難にするものであり、断じて認められるものではない。
国公労連はこの間、年金業務の安定的運営を確保し、国民の信頼を回復するためにも、職員が安んじて業務に専念することが重要であり、雇用の承継と体制確立を求めてきた。
国民が求める安心・信頼できる年金制度を確立するためにも、「基本計画」の閣議決定は撤回し、「日本年金機構法」のあり方について国民的な議論を行うこと、政府の責任で記録問題を早期に解決すること、同時に、業務の民間委託は行わず、業務に習熟・精通した職員の雇用を継承し、安定的・継続的、専門的な年金業務運営を確保することを強く求めるものである。
「国の責任で、安心して暮らせる年金制度をつくる連絡会」(安心年金つくろう会)は、消費税の年金財源化に反対し、国の責任による年金運営と最低保障年金制度の創設に向けて国民的な宣伝・署名などのとりくみを進めている。国公労連は、「安心年金つくろう会」が提起した「安心・信頼できる年金国民署名」をはじめとした運動を全国各地で展開するとともに、国の責任による公的年金制度の確立と社会保険庁職員の雇用継承に向けて、全力を挙げるものである。
以上決議する。
2008年8月30日
日本国家公務員労働組合連合会第54回定期大会
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