2009年12月4日
筑波研究学園都市研究機関労働組合協議会(学研労協)
議長 池長裕史
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
中央執行委員長 宮垣 忠
2010年度予算編成にむけて行政刷新会議の「事業仕分け」がおこなわれた。これまで、旧政権下では密室のなかで行われていた予算編成の一部が公開され、国民の高い関心を喚起させたという積極面は評価できる。
しかし、大きな問題もあることも指摘せざるを得ない。1つに、真に国民生活に必要不可欠な事業までも、短期的な費用対効果のみの視点で「仕分け」していることである。2つに、聖域なき「事業仕分け」といいながら、削るべき無駄使いにメスを入れていないことである。例えば、東京外環環状道路などの大型公共事業や防衛費、本来日本に負担義務がない米軍への「思いやり予算」は在日米軍基地日本人従業員の給与削減の査定のみで根本問題にはメスが入らなかった。
国の機関から移行した独立行政法人は、国民医療を支える国立病院機構、国民生活や産業活動の基盤を支えている試験・研究機関など多種多様で、いずれも「国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業」(独立行政法人通則法第2条)を行っている。
「事業仕分け」で、独立行政法人については基金や運営費交付金などの国からの支出等が見直し対象にされた。天下り人事や税金のムダ使いが許されないのは当然である。しかし、国民生活や社会経済の安定等に貢献している独立行政法人について、短絡的な費用対効果のみの視点による事務・事業の廃止や運営費交付金の削減は多大な影響を及ぼすことは明らかである。とりわけ、基礎研究を振興する「科学研究費補助金」(科研費)や若手研究者支援を削減しようとしていることは重大である。科研費の削減は日本の基礎研究の衰退をもたらし、若手研究者支援の削減は現在のポスドクなど若手研究者の多くが直面している雇用不安をさらに深刻化し、優秀な人材の離反を助長することになりかねない。
そのことは、日本の科学技術の将来を憂いて表明された総合科学技術会議の有識者議員や日本学術会議、東京大学長をはじめとする9大学長などの声明などにも表れている。
すでに、独立行政法人や国立大学法人の事業・業務を支える運営費交付金は毎年、一般管理費については3%、業務管理費については1%の削減が行われてきた。人件費についても、行革推進法によって2006度から5年間で5%の削減が強要されている。そのため、慢性的な人員不足となり業務・研究の継続性が阻害されるなど業務遂行に支障を来している。
「事業仕分け」は、95兆円に及ぶ概算要求を削り込むことを最大の狙いとしている。独立行政法人や国立大学法人の必要とされている事務・事業が、その犠牲となってはならない。
学研労協と国公労連は、国民生活と社会経済の安定等の長期的な公共的見地から独立行政法人と国立大学法人の事務・事業を遂行するための予算確保を求めるものである。
以上
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