2009年12月8日
日本国家公務員労働組合連合会
中央闘争委員会
国公労連は社会保険庁の廃止と日本年金機構の設置に反対し、公的年金に対する国民の信頼を回復するために、国の責任で年金記録問題を早期に解決することを求めてきた。そして、そのための社会保険庁における業務体制の確立と社会保険庁職員の労働条件の確保を求めてきた。
しかし、日本年金機構法に基づいて設置された「年金業務・組織再生会議」での議論は、年金記録問題に対する厚生労働大臣や社保庁長官の責任は棚上げしたまま、もっぱら労働組合や現場職員の責任追及に終始するものであった。そして、年金業務の知識と経験を持つ職員を日本年金機構から排除する採用基準や管理統制を強化する「基本方針」を答申し、自民・公明前政権は08年7月に閣議決定した。
日本年金機構の採用基準は、懲戒処分を受けた職員は一切採用しないとするものであり、その他の職員にも全国異動や機構への忠誠を踏み絵にするなど、社保庁バッシングの世論を背景にした強権的なものであった。そして、この採用基準によって懲戒処分を受けた職員は日本年金機構への応募すら許されなかったのである。
長妻厚生労働大臣は10月8日、予定通り日本年金機構を発足させることを表明したことから、500人を超える社会保険庁職員の雇用確保が懸案となった。「分限免職回避の努力義務が課せられている」と表明する長妻大臣が具体的な対応策を示したのは、12月1日の記者会見においてであった。
示された雇用確保策は、(1)懲戒処分を受けていない職員を対象に170人程度の準職員の募集を行う、(2)厚生労働省の非常勤職員として200〜250人程度の公募を行う、というものである。
今日の分限免職を惹起する要因は、年金業務を継承する日本年金機構に社保庁職員の雇用は引き継がないとする自民・公明前政権の執拗な圧力にあったことは明白である。国公労連は、業務が継承される限りその身分と雇用が引き継がなければならいことは国家公務員法第75条の身分保障規定からも当然のことであり、今回の不当性をきびしく指摘するものである。
あわせて、以下のとおり今回の分限免職や回避努力にかかる厚生労働大臣の対応について断固抗議の意を表明するものである。
第1に、社会保険庁廃止、日本年金機構の発足にあたって、国家公務員法78条4号の「官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合」を適用することは許されない。年金業務を継承する日本年金機構は民間から千人超の職員を採用し、記録整備のために大量の人員増を予定していることからも、分限免職をする客観的合理性も必要性も存在しない。
第2に、社会保険庁職員の採用選別にあたって、懲戒処分を受けたことを不採用理由とする採用基準は、日本弁護士連合会も指摘するように二重処分に相当するものであり違法不当である。
第3に、この間の独立行政法人化などの組織改編にあたって職員の雇用を継承してきたことや定員純減実行にあたっても雇用調整本部のもとで他省庁への配転によって過員となる国家公務員の身分と雇用を確保してきたことからすれば、当然に社保庁職員の身分と雇用は守られなければならない。今回の対応は、憲法14条および国家公務員法27条の平等取扱法理に反するものであり違法である。
第4に、「分限免職回避」の具体策として示されたものは、日本年金機構の準職員にしても懲戒処分歴を理由に排除するとともに、一度応募した者の再応募は認めていない。また、厚生労働省の非常勤職員は、労働条件が大幅に低下するもので、分限免職の回避策としてはきわめて不十分であり、再考が求められる。
第5に、分限免職対象者や当該労働組合に対する誠実協議が行われていないことも重大な問題である。全厚生労働組合や国公労連の再三の要求にもかかわらず何らの説明も行っていないことは、分限免職回避にむけた誠実協議を尽くさないばかりか、信義則にも反するものである。
さらに指摘しなければならないのは、公的年金行政を所管する厚生労働省の大臣として、記録問題の解決努力を表明しつつ、業務に必要な知識と経験を有する職員を当該業務から排除することは、国民の負託にも背を向けるものである。記録問題の解決さえ困難にする日本年金機構の体制は、国民の利益にも反し、安心・信頼できる公的年金制度の土台を崩すものであり、断じて容認できるものではない。
また、「無許可専従」を理由とした被懲戒処分者については非常勤職員としても雇用しない旨が報道されているが、分限免職は到底認められるものではなく、法的対抗措置も含めて断固たたかう。
国公労連は、公的年金に対する国民の信頼を回復するためにも、あらためて鳩山内閣総理大臣と長妻厚生労働大臣に対して、日本年金機構への正規採用を基本に、すべての社会保険庁職員の経験と専門性を生かせる雇用の場を確保することを求める。
国公労連はこの要求を高く掲げ、最後まで粘り強くたたかう決意を表明するものである。
以上
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