全労連公務員制度改革闘争本部は29日、国家公務員制度改革推進本部事務局の立花局長と交渉しました。
政府は、新たに設置する「内閣人事・行政管理局」の役割をふくめて、公務員制度改革の今後のすすめ方を示した「工程表」の月内の決定をねらっています。交渉では、公務員の労働基本権が制約されているもとで、人事院の機能の一部を内閣人事・行政管理局に移管しようとしていることに反対し、労働組合との交渉・協議を尽くすよう強く求めました。
きわめて不誠実な対応で始まった推進事務局との交渉
「工程表」の1月中の政府決定が伝えられたことから、闘争本部は、26日に改革推進本部事務局の岡本次長に対して、勤務条件にかかわる部分が数多くあることからも、労働組合との交渉・協議にもとづいて検討をすすめ、「工程表」の一方的な決定をしないよう申し入れました。
岡本次長は、事務局が作成した「工程表」(案)を示し、「27日の顧問会議をへて、30日に閣議決定もしくは推進本部としての決定をめざして作業している。(案)についての意見があれば出してもらいたい」と現状をのべました。
しかし、示された「工程表」(案)では、焦点となっている内閣人事局の役割の部分は、「顧問会議での結論が出ておらず、示すことはできない」などとして明らかにされず、そのうえ、「これまでの議論経過は、ホームページなどで公開している。それをもとに意見を出してもらえばいい」とのべるなど、労働組合とまともに交渉・協議する姿勢は見られませんでした。
闘争本部は、不誠実な対応に抗議しつつ、やむなくこの日の交渉を打ち切りましたが、その後、推進事務局側からあらためて各レベルで交渉することが表明され、皮切りとなった27日の「実務担当者」レベルの交渉(推進事務局は参事官クラスが対応)では、推進事務局側から、「昨日は、不十分な対応となった。あらためて『仕切り直し』をしたい」との表明を受けるとともに、ペンディングとなっていた部分が明らかにされ、「工程表」(案)にかかわる交渉・協議が開始されました。
翌28日には、闘争本部委員(単産書記長)レベルの交渉が配置され、闘争本部からは、黒田事務局長を先頭に、野村(自治労連書記長)、東森(全教書記長)、岡部(国公労連書記長)の各闘争委員が参加、推進事務局は、渕上・古賀の両審議官が対応しました。
2日間の交渉を通して、闘争本部側は、内閣人事・行政管理局に移管するとしている級別定数の設定などは勤務条件であり、労働基本権制約のもとで、その「代償措置」としての機能を内閣人事・行政管理局に移管することは断じて認められないこと、労働協約締結権を議論している労使関係制度検討委員会の結論を待って、内閣人事・行政管理局や人事院の役割・権限のあり方を議論すべきであることを主張し、また、今後の法制上の措置とかかわって、「政府から人事院に対して勧告等の要請をおこなう」ことの問題点などを指摘しました。
推進事務局側は、闘争本部の主張に一定の理解は示しつつも、「みなさんとは立場が違う。考え方が違う」などとし、全労連の要求を受けいれる姿勢は示されませんでした。
「働いている人とまじめに意見交換すべき」と立花局長が回答
こうした経過をたどって、闘争本部は29日、推進事務局の立花局長との交渉に臨みました。交渉には、闘争本部からは、小田川本部長を先頭に、宮垣(国公労連委員長)、米浦(全教委員長)の副本部長、黒田事務局長とともに、自治労連からは、田中副委員長が出席しました。
小田川本部長は、「『工程表』についての交渉・協議が尽くされておらず、1月中の政府決定をおこなうべきではない」として、内閣人事・行政管理局の機能や権限、「工程表」の勤務条件にかかわる部分の取り扱いや手順、労働基本権の今後の検討方向について、あらためて見解をただしました。
立花局長は、要旨、以下のように回答しました。
● 公務員制度改革を実現するには、公務の現場で働いている人とまじめに意見交換すべきと考えている。特に勤務条件に関連のある事項は、労働組合のみなさんとよく話し合っていきたい。
● 労働基本権制約下で、代償措置として人事院勧告制度があるという基本的な枠組みは無視しない。ただ、級別定数は、さまざまな議論経過はあるが、勤務条件なのか管理運営事項なのかの結論は得られていない。基本法にもとづき、内閣人事・行政管理局の機能を発揮するうえで、人事院の機能移管は必要であり、人事院にもそのことを強く要請してきたところだ。今後、人事院から意見を聞いたり、事後チェック機能を強化するなど配慮しながらとりくんでいきたい。
● 政府が人事院に勧告を要請する点について指摘があったが、一方では、そのような手続きは必要ないとの意見もあるなかで、人事院にもその都度、専門機関としての考え方を示してもらうためにも必要だ。
● 労働基本権は、改革の2つの柱の一つだ。政府として検討委員会を設置し、11月から議論が開始された。甘利担当大臣からは、早く答えを出してもらうよう前倒しの議論を要請している。みなさんの意見も聞いて、今年中に結論を出す。スピード感をもってとりくんでいく。
人事院機能の内閣人事・行政管理局への移管は譲らず
これに対して、小田川本部長は「引き続き話し合っていくことの表明は受けとめたい」とのべつつ、「今回の改革の目的が幹部職員の一元管理にあることからも、人事院からの機能移管は指定職に限定し、一般職は、労働基本権の検討結果を待って議論すべきだ。また、人事院への要請については、現行制度では規定されていない。政府が検討方向を示すことはあったとしても、それ以上に踏み込むべきではない」と追及しました。
立花局長は、「国民への説明責任が求められる。現行では、内閣の人事管理の権限が分散しており、責任の所在がはっきりしない。今後、総人件費管理の議論が不可避になるなか、級別定数も政府が一括して管理することが適当だ。当然、人事院からの意見を無視するようなことはない」とのべ、また、人事院への要請は、「受け身で待つのではなく、国民の声を聞く」「政府から解決する姿勢が必要だ」などと抽象的な回答を繰り返しました。
宮垣副本部長は、「定数改定により昇格が改善し、賃金も変わる。級別定数は明確に勤務条件であり、労働基本権の議論が必要だ。自律的労使関係にむけた話し合いをしているときに、使用者の政府の検討を先行させることは許されない」とのべ、米浦副本部長は、「受け身にならないというが、労働組合との議論を尽くしたうえですすめる必要がある。昨年末、ILO・ユネスコから勧告が出されたが、明確に労使合意の必要性を指摘している」とのべ、十分な話し合いを求めました。また、自治労連の田中副委員長も、「現場の職員は、全体の奉仕者として住民のために働いている。公務員として働きがいを持って仕事をしていくうえで、制度改革は強行するべきではなく、十分に話し合いを尽くすべきだ」と追及しました。
立花局長は、「みなさんからの意見は確かにうかがった。公務員への批判の声に応え、改革をすすめていく必要がある。ぜひご理解をいただきたい。今後とも、いろいろ意見を出していただきたい。十分に労使で話し合っていくべきことは、民間でも公務でも同じだ」と回答し、これをうけ、最後に小田川本部長は、闘争本部の要求もふまえた「工程表」(案)の再考をあらためて強く求めるとともに、「この間のべてきた主張にとどまらず、こちらとしても、いろいろな意見を持っている。話し合いの必要性が表明されたことをふまえ、あらためて労働組合としての主張を申し上げていきたい」とのべ、一連の交渉・協議を締めくくりました。
※「公務員制度改革」闘争ニュース2009年1月29日《No.72》(発行=全労連「公務員制度改革」闘争本部)より転載。
以上
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