年金記録問題の解決のメドも立たないまま鳩山内閣は、昨年末に社会保険庁を廃止して日本年金機構を発足させた。長妻厚生労働大臣は、社保庁の廃止にともなって525人の職員に対して国家公務員法第78条第4号による分限解雇を強行した。組織廃止を理由とした分限免職の発動は、実に45年ぶりである。
解雇された職員の中には、懲戒処分歴のない者や育児休業や病気休職中の者も含まれている。懲戒処分も大半は「業務目的外閲覧」であり、職を奪われるような大罪ではない。労働者の権利擁護や雇用の安定を司る厚労大臣による首切りは、絶対に許されるものではない。
全厚生の組合員31人は1月18日、人事院に対して処分取消を求めて不服申し立てを行った。国公労連は、この分限解雇はすべての国公労働者にかけられた重大問題と受け止め、全厚生の仲間を全面的に支援してたたかう。
そもそもこの解雇は、一片の道理もない暴挙である。この間の組織改編等では、行政機関が民営化や独立行政法人化された事例でも、職員の雇用は引き継がれてきた。社会保険庁職員を排除して外部から1,000人以上もの職員を採用したことは、分限解雇の客観的な必要性と合理性を完全に否定している。年金機構は発足時から業務運営に支障を来しているが、この異常な雇用の枠組みによる経験者の不足と大量の欠員がその要因である。
「お客様へのお約束10カ条」などと美辞麗句を連ねても、業務に習熟した職員を欠いた体制では絵に描いた餅でしかない。国民に対するサービスを確保し、年金記録問題の解決や正確な業務運営を確保するためには、年金業務の経験を積んだ専門性ある社保庁職員の存在が不可欠である。そのためにも、被懲戒処分者は一律不採用とする基準は撤回し、社保庁職員の知識と能力を活用しなければならない。これは、一日も早い記録問題の解決と安心・信頼できる年金制度を求める国民の願いでもある。
鳩山政権は、新たな年金制度として消費税増税を財源とする最低保障年金や所得比例年金を2013年までに創設するとしている。そして、日本年金機構を廃止して、国税庁との統合による「歳入庁」を構想している。しかし、消費税は年金生活者など低所得者ほど負担が重くなる生活破壊税であり、社会保障とは相容れない最悪の税制度である。
今こそ、国の責任や企業の責任を明確にさせ、憲法25条を活かす公的年金制度の確立をめざすことが求められている。そのためにも、「安心年金つくろう会(=国の責任で、安心して暮らせる年金制度をつくる連絡会)」の活動を全国で前進させなければならない。
国公労連は、政府・厚労省に対して、「派遣切り」などの雇用破壊に対するルール確立のたたかいとも結んで、不当な分限解雇の撤回とともに、安定した雇用確保を求めていく。同時に、迅速な審理と公正な判定を行うよう人事院に対するとりくみを強化するとともに、裁判闘争に立ち上がる仲間を支援してたたかう。
今拡大中央委員会の総意として、全厚生の仲間たちを激励するとともに、支援体制を全国で確立し、不当解雇撤回、安定雇用の確保のたたかいに勝利するまで全力で奮闘する決意を表明する。
以上、決議する。
2010年1月29日
日本国家公務員労働組合連合会
第134回拡大中央委員会
以上
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