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談話
 行政サービスの低下招く「独法の見直し基本方針」
 行政刷新会議の「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」決定にあたって(談話)
     
 

 

2010年11月30日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 岡部勘市

 11月26日、行政刷新会議(議長・菅直人首相)は「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針(以下、「基本方針」)を決定した。  「基本方針」は、全独立行政法人のすべての事務・事業を洗い出し、事務・事業の廃止や重点化、民間への委託、不要資産の国庫返納、人件費の適正化など855項目について見直し措置を講じているが、以下のような重大な問題を含んでいる。

 1つに、今年4月におこなわれた「事業仕分け」の結果を適用していることである。「事業仕分け」は費用対効果や効率性を仕分け基準として、真に国民生活や社会経済の安定等に貢献している独立行政法人の事務・事業までも「非効率」「無駄や天下りの温床」と酷評するなど、国民受けを狙った政治的パフォーマンスとなっている。その結果を適用することは、独立行政法人が担っている行政サービスを切り捨て、国民生活や社会経済の安定・発展を損なうものである。

 2つに、財源捻出ありきの事務・事業の廃止・縮小、運営費交付金の削減、保有資産の国庫返納等となっていないかということである。マスコミでは、「2兆円返納」「予算に活用」などと報道している。無駄を省く、不要資産の国庫返納などは進めるべきであるが、財政難を理由に「事業仕分け」の結果を利用しての財源捻出最優先では、本末転倒の「基本方針」と言わざるを得ない。

 3つに、「事務・事業の見直しについて」の「研究開発関係」において、重点化のみが強調されていることである。研究開発は、基礎・基盤研究なくしてあり得ない。ところが、基礎・基盤研究についてはいっさい触れず、重点化だけが強調され、類似の研究の重複化の排除をあげている。「類似の研究の重複」と言うと無駄な研究が重複しておこなわれているかのようだが、各研究開発独法はそれぞれが担う各研究分野から異なるアプローチで研究をおこなっており、研究対象が類似していても「重複」しているわけではない。

 4つに、人件費の適正化をあげていることである。そもそも独立行政法人は国の行政機関の企画・立案部門から切り離し、執行部門を行う組織として自主・自律的運営を基本に制度設計した経緯から、賃金・労働条件は労使自治・労使対等の原則で決定されるとされた。運営費交付金など国からの補助があることから国民への説明責任はあるが、人件費をはじめとする運営に対する国からの細かい統制が強化されては、制度設立の趣旨に逆行する。

 5つに、運営費交付金について国の予算のガバナンスの観点から、そのあり方を検討することと、自己収入の拡大をはかることである。国の予算のガバナンスの観点からということは、逼迫する国家財政を考えるならば運営費交付金を削減することと読める。運営費交付金は、これまでも効率化係数をかけられて連年削減されてきた。国の行政の一翼を担い、民間に委ねられない事務・事業をおこなうため利益を追求せず、独立採算制を採らないとされた独立行政法人にとって、運営費交付金の削減や廃止は死活問題である。その一方で、自己収入の拡大をはかることは、公正・中立な運営を阻害するものといわざるを得ない。

 国公労連は、この間一貫して独立行政法人の抜本見直しや「事業仕分け」について、削減ありきの見直しは行政サービスの低下をもたらし、国民生活や社会経済の安定・発展を損なうと主張してきた。独立行政法人の本来の目的にそって行政サービスを拡充する観点からの見直しは行われるべきであるが、今回の「基本方針」はこれまで同様サービスの切り捨てにしかならない。
 また、見直しにあたっては、雇用・労働条件に多大な影響を与えることから、当該労働組合および国公労連との十分な協議・交渉をおこなうことが不可欠であるにもかかわらず、この間説明すらしないまま一方的に決定したことは容認しがたい。
 国公労連は、国民生活や社会経済を支える行政サービスを拡充するため、各独立行政法人の事務・事業の必要性などについて国民的理解をひろげながら、引き続き運動を強化するものである。

以上


(注)「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」は、以下の行政刷新会議のHPを参照してください。→http://www.cao.go.jp/sasshin/kaigi/honkaigi14.html

 
 
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