公務員制度改革関連法案の国会提出の動きがマスコミ報道で伝えられるもと、全労連公務員制度改革闘争本部は1月21日、国家公務員制度改革推進本部事務局に対して、法案の検討状況をただすとともに、労使関係制度検討委員会の最終報告が昨年12月に取りまとめられたことをふまえ、協約締結権の確立にむけたすみやかな検討作業を申し入れました。
推進本部事務局は、「内閣人事局」等の設置にむけた法案を、2月中旬頃までに国会提出できるように作業をすすめているとしつつも、その内容については、「総合的に検討している」として明確にしませんでした。
予算関連法案として2月中の国会提出を予定
推進本部事務局への申し入れには、全労連闘争本部から黒田事務局長、蟹澤闘争委員(全教)、自治労連から鈴木中執、国公労連から高木中執が参加し、推進本部事務局側は、笹島審議官、境参事官、駒ア参事官、村山企画官ほかが対応しました。
はじめに、黒田闘争本部事務局長は、別添の「要請書」を提出したうえ、「公務員制度改革関連法案の今国会提出が報道されている。関連法案は、昨年の通常国会に提出され、全労連も強く反対し、結果的には廃案となった。その経過をふまえれば、労働組合にも内容を明らかにしながら、作業をすすめるべきだ。また、昨年12月に労使関係制度検討委員会の最終報告が取りまとめられるもとで、協約締結権の確立を先送りにするのではなく、すみやかな検討作業をすすめるべきだ」と申し入れました。
これに対して笹島審議官は、「政権が変わり、大島副大臣が事務局長的な立場で公務員制度改革に係るいろいろな課題を総合的に検討している。昨年12月の閣僚懇談会で鳩山首相から、幹部人事の一元管理、官民人材交流センターの廃止、内閣人事局の設置などが示され、これにもとづいて事務局として作業をすすめている」と明らかにしました。
黒田事務局長は、「新聞報道では、内閣人事局などの設置にむけた国家公務員法改正法案の概要が、すでに政府部内の会議で了承されたと伝えられている」として、法案の概要を明らかにするよう求めました。
笹島審議官は、「いま発言した以上の情報はない。概要が示されたという事実は知らない。公務員制度改革基本法では、幹部人事の一元管理を定義しており、内閣人事局もその方向をめざしたツールづくりの一つと考えている。去年の国会で廃案となった関連法案に対する経緯やみなさんの考え方は承知している。以前の法案のように、一般職員が対象ではないし、勤務条件にかかわって何かを変えるわけではない」とのべました。
今後の検討作業の予定について笹島審議官は、「なるべく早くという思いで作業をすすめている。来年度予算に関連する法案なので、2月中旬くらいの国会提出をめざす必要がある。ただ、政府主導のもとで今後どうなるかはわからない。任命権者たる各省庁大臣との調整もある」と今後の見通しを明らかにしました。
権利回復を先送りせず、最優先で検討するよう求める
黒田事務局長は、「公務員制度改革の重点課題は、労働基本権回復だ。労使関係制度検討委員会の報告が出されるもとで、まず、協約締結権にむけた作業を優先させ、すみやかな検討作業をすすめるべきだ」と求めました。
これに対して笹島審議官は、「政治判断もあり、今後具体化する。法案の提出は、秋の臨時国に提出するとの報道もあるが、決めているわけではない。大臣などからは尻をたたかれており、遅らせることはできない」とのべました。
参加者からは、「労働基本権の見直しにむけては、労働組合との意見交換はもとより、節目での大臣との交渉の場を求める」「消防署職員への団結権付与にむけた検討委員会の議論がはじまりつつある。委員会での意見表明をふくめて、現場の声を反映できるように求める」「前政権下では協約締結権のみの議論となっていたが、争議権をふくめてあくまで労働基本権の回復を求める」など申し入れました。
笹島審議官は、「労使検討委員会ではみなさんからいろいろと貴重なご意見をうかがった。今後とも、みなさんとも話し合いながら作業をすすめる。消防職員の団結権は、総務省を中心に議論がすすむものと思う。労働基本権回復は、現政権のマニュフェストにあるとおりしっかり検討していくこととなるだろう。ただ、天下り問題、定年までの就労確保、定年延長などが相互に絡み合っていて、難易度が高いと思われるが努力していきたい」とのべました。
最後に、闘争本部側から、関連法案の検討状況を明らかにしていくことをはじめ、公務員制度改革にむけては、労働組合との交渉・協議のもとですすめるよう求め、申し入れを終えました。
【※「公務員制度改革」闘争ニュースNo.84 2010年1月25日付(発行=全労連「公務員制度改革」闘争本部)より転載】
《別添》
2010年1月21日
公務員制度改革担当大臣
仙谷由人 殿
全労連公務員制度改革闘争本部
本部長 小田川義和
「公務員制度改革」にかかわる要請書
公務員制度改革にかかわって、政府は、官民人材交流センターの廃止、「民間人材登用・再就職適正化センター」設置や、幹部人事の一元管理をおこなう「内閣人事局」の設置にむけて、今通常国会に関連法案を提出するとの方針が伝えられています。
「内閣人事局」設置等をめぐっては、昨年の通常国会に公務員制度改革関連法案が提出されましたが、労働基本権を制約しながら公務員人事管理の内閣総理大臣への一元化をはかるなど憲法ともかかわる問題を持ち、結果的には、一度も委員会で審議されることなく廃案となった経緯があります。
こうした経過をふまえれば、公務員制度改革関連法案の国会提出にあたっては、労働組合との交渉・協議をふくめて政府としての慎重な対応が求められています。
一方、昨年12月15日には、政府の労使関係制度検討委員会の報告が取りまとめられ、翌16日に仙谷大臣に報告が提出され、現在、協約締結権保障など自律的労使関係の確立にむけた制度検討が政府にゆだねられています。
言うまでもなく、労働基本権回復は、公務員制度の改革をすすめるうえでの最重要課題と位置づけられるべきです。検討委員会の報告が出された新たな局面をうけて、政府は、協約締結権保障の実現を先送りにすることなく、すみやかに検討作業をすすめ、法案提出をはかるべきと考えます。
労働基本権をめぐっては、消防職員の団結権回復、さらには、争議権回復などILO勧告でも指摘されてきた解決すべき重要な課題が残されています。その点からも、協約締結権の早期確立が求められます。
以上の点から、下記事項について、貴職に対して申し入れるものです。
記
1、協約締結権の早期確立をはじめ、憲法とILO条約・勧告にもとづいた民主的な公務員制度を実現すること。
2、公務員制度改革に関連する法案等の作成にあたっては、労働組合に内容を明らかにし、交渉・協議のもとでおこなうこと。
以上
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