2月19日に閣議決定され、通常国会に提出されていた国家公務員法「改正」法案は、4月6日の本会議で法案の趣旨説明と各党による質疑がおこなわれました。
本会議では、政府法案の「対案」となる自民党とみんなの党の共同提案による「幹部国家公務員法案」なども同時に趣旨説明されました。
各党質疑では、政府案、自民党案をめぐって激しいやりとりがあり、公務員制度改革とも関連させて一般職員もふくめた公務員給与の見直しなどが主張され、各党が公務員総人件費削減を競い合いました。
とりわけ、人件費削減がすすまなければ、消費税増税を求める意見も出され、政府がすすめる公務員制度改革が、国民犠牲の露払いとしての役割を持っていることをあらためて明らかにしました。
自民党などが「幹部国家公務員法案」を提出して与党に対抗
6日午後から開かれた本会議では、政府法案、自民党提出法案の趣旨説明につづいて、後藤祐一(民主)、平井たくや(自民)、高木美智代(公明)、吉泉秀男(社民)の各議員が質問に立ちました。
自民党などが提出した「幹部国家公務員法案」とは、事務次官・局長など本省庁の指定職約600人を国家公務員一般職から切り離して、「幹部職」として任用することなどを内容としています。「幹部職」は、勤務実績が良くない場合や、心身の故障により職務の遂行ができない場合などは、本人の意に反する降任や免職ができ、さらには、こうした理由がない場合でも、任命権者が判断すれば「特別降任」できることなどを内容としています。
また、自民党の「国家公務員法改正法案」では、課長以下の一般職員もふくめた給与体系全体の抜本的な見直しなどにより、総人件費削減をねらっています。また、昨年廃案となった自公政権時代の政府法案をふたたび持ち出し、労働基本権制約ともかかわる人事院の「代償機能」や、総務省、財務省の機能を、新たに設置する「内閣人事局」に移管するとしています。
法案説明に立った自民党の塩崎恭久議員は、政府法案を「(民主党がかつて批判した)麻生内閣の法案よりはるかに後退し、無力な内閣人事局をつくろうとするものとなっている」と指摘し、「給与体系の改革を実現しない限り総人件費改革はできない。民主党がマニフェストで掲げた国家公務員総人件費2割削減など絵空事だ」と徹底的に批判しました。
また、天下りについても、「新たにつくるセンターを再就職あっせん機関として位置づけ直し、恒久化するものだ。マニフェストで廃止をかかげた早期退職勧奨も続けざるを得ないと言い始めている。民主党は、天下りの根絶を断念したのか!」と、対決姿勢を強めました。
公務員削減でも足らなければ「消費税増税を議論せよ」と主張
各党の質問では、「地方移管による国家公務員削減に加え、それで足りない分は給与カットに踏み込むことで、総人件費2割カットを実現する強い意欲を示していただきたい」(民主・後藤議員)、「給与は、いつまでに、どれだけ減らすのか。政府法案では、なぜ給与法改正は入っていないのか」(自民・平井議員)など、公務員の総人件費削減をせまる質問があいつぎ、これに対して、仙谷公務員制度改革担当大臣は、「各種手当、退職金等の水準や定員の見直しなどさまざまな手法により、4年間かけて2割削減を達成する」と応じました。
さらに、後藤議員は、「総人件費カットや議員定数削減で政治家や公務員が流すべき血を流して、それでもお金が足りなければ、消費税増税の議論を真正面からおこなえ」と声高に主張するなど、公務員制度改革や総人件費削減を、消費税増税の「露払い」にしようとするねらいもあからさまに表明されたことは重大です。
また、労働基本権にかかわって、「なぜ今国会で法案を出さなかったのか。今国会でやらなければいつやるのか。公務員の構成する労働組合からの圧力に屈したのではないか」(平井議員)とせまると、「労働基本権のあり方については、争議権を付与するかどうかもふくめて、幅広い視点から検討していく。基本法施行後3年以内に法案を提出する」「(労働組合をふくめた)関係者との率直な対話という基本姿勢にもとづいて意見交換してきた。今後とも、こうした姿勢で取り組んでいく」(仙谷大臣)と答弁する一方で、「公務員の待遇のあり方についても、労使交渉を通じた給与改定などを通して適正なものにしていく」(菅財務大臣)とのべるなど、協約締結権回復を、給与削減をすすめる手段としてねらっている姿勢も見られました。
憲法にさだめる公務員の公正性・中立性をどう確保していくのか
こうしたやりとりとともに、事務次官から部長級までを同一の職制上の段階と見なす「幹部職員人事の弾力化」について、「一部の政治家の好き嫌いによる恣意的な人事行使の危険性が高まり、政権党に忠実な幹部職員だけが厚遇されるルールなき人事が横行する。政権交代のたびに大幅な幹部職員の人事異動がおこなわれ、行政全体が機能不全に陥りかねない」(公明・高木議員)、「事務次官から部長級への降任で、年収800万円程度の減俸となる。国公法にさだめる『いちじるしく不利益な処分』に相当する恐れがある」「幹部職への任用は、内閣との一体性の確保に配慮するというが、憲法に規定された公務員の公正性、中立性との整合性をどのように考えているのか」(同)など、憲法15条でさだめる「全体の奉仕者」としての公務員の本質にかかわって問題点が出されました。
仙谷大臣は、「人事評価にもとづき適正を判断するうえ、内閣総理大臣、内閣官房長官、任命権者による協議することで、適正に人事がおこなわれるように配慮する」「降任による給与の減額はともなうが、一般職の給与法にもとづいて転任後の官職に応じて給与が決定され、基本的に国公法が示す『いちじるしく不利益な処分』には該当しない」と強弁しました。自民党案についても、「公平性、中立性との整合性、憲法のさだめる『全体の奉仕者』の規定にも十分配慮した内容となっている」(自民・柴山議員)と主張しました。
委員会での徹底審議を求めて闘争本部で傍聴行動を配置
内閣委員会での本格審議は9日から開始されようとしています。指摘された公務員の公正性・中立性の確保は、今回の法案をめぐる最も重要な問題の一つであり、全労連闘争本部も指摘してきたところです。これからの委員会審議でも十分に議論を深め、問題点を徹底的に明らかにしていく必要があります。
全労連闘争本部では、今後、内閣委員会での傍聴行動を配置し、法案審議を監視していくこととしています。
(※全労連公務員制度改革闘争本部「公務員制度改革」闘争ニュース88より転載)
以上
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