衆議院本会議で趣旨説明された公務員制度改革関連法案は、4月9日から内閣委員会での質疑が開始されました。
幹部職員の人事管理一元化や「天下り」あっせん禁止にかかわって、政府案・自民党案の両案が国会提出されるもと、内閣委員会でも、初日から与野党間での激しい議論が交わされました。全労連闘争本部では、内閣委員会への傍聴行動にとりくみ、8人(国公労連4、自治労連2、全教1、事務局1)が参加しました。
鳩山首相の「修正拒否」発言をめぐり議事が紛糾
9時から開かれた内閣委員会では、大泉ひろこ・橋本博明(民主)、中川秀直・甘利明・橘慶一郎(自民)、高木美智代(公明)、塩川鉄也(共産) の各議員が質問に立ちました。
休憩をはさんで7時間を超える質疑では、主に、新センター設置にかかわる「天下り」あっせん禁止、公務員の総人件費削減、幹部職員の人事管理一元化、さらには、労働基本権の回復まで広範囲におよびました。
委員会では、政府法案と自民党提出法案が同時に審議され、そのこともあり、自民党議員から、政府法案の不十分さを厳しく指摘する質問が目立ちました。
とくに、自民党の中川議員は、鳩山首相が記者会見で、野党との法案修正協議にはいっさい応じるつもりがないと発言したことを取り上げ、「(法案の修正をふくめて)国会でどのような法案を成立させるかは、立法府の権限だ。行政府の長として、修正協議に応じないという発言は、立法府の役割を完全に否定するものだ」とし、鳩山発言の撤回を求めました。
仙谷公務員制度改革担当大臣は、「政府案が最善であり、できるだけ早く成立をお願いしたいという意味だ。総理の発言の修正を求められても、私は総理ではないので、修正はできない」と答弁したことから、強硬に発言の撤回をもとめる中川氏との間で激しいやりとりが交わされ、質疑がたびたびストップしました。
最後は、仙谷大臣が、「(発言を撤回すると)ご理解いただいてかまわない」と事実上、中川氏の求めに応じたことで事態は収拾されましたが、議事は1時間以上も遅れました。
その後も、甘利議員が、昨年の通常国会に提出されて廃案となった国家公務員法「改正」法案をめぐって、自民・民主の間で水面下の修正協議をすすめ、すぐにも成立できるところまで合意が整っていたにもかかわらず、その後、政権が変わったら民主党からは何の動きもなくここに至り、「昨年の与野党合意とは似ても似つかない法案が出てきてびっくりした」などとのべて、修正に応じないとした鳩山発言を攻撃しました。
甘利議員は、自民党案にもとづき、定員・定数管理にかかわる人事院や総務省、財務省の機能・権限を内閣人事局に移すよう強く求めました。仙谷大臣が、「労働基本権の改革をふくめた全体的な改革の中でしか、問題は解決できない。次の段階で基本権問題をしっかりと位置づけて、労働組合と協議しながら定数問題をやっていく」と答弁したことに対して、「公務員制度改革基本法は、基本権の問題は別途議論するとなっている。内閣法制局長官も、内閣人事局への機能移管が労働基本権に抵触しないと国会答弁している」と応じ、両者の主張は平行線をたどりました。
恣意的な人事が横行し、政権党言いなりの幹部をつくる
公明党の高木議員は、民主党がマニフェストにかかげる総人件費2割削減について、「民主党は4年間かけて達成するとしているが、1年後でも2年後でももっと早くやるべきではないか」とせまりました。
仙谷大臣は、「賃金の減額となれば、勤務条件の不利益変更であり、労働組合との交渉が必要となる。労働組合との交渉をできるような環境を早くつくらなければならない」として、協約締結権の回復を賃下げの手段として利用しようとするねらいものぞかせました。
また、高木議員は、新しく設置される再就職適正化センターにかかわって、「社会保険庁のような組織改編にともなう職員の分限回避を目的にするならば、その都度、法律や閣議決定に盛り込めばいい話だ」と、新センターの必要性に疑問を呈したことに対して、仙谷大臣は、「民間には整理解雇にかかわる使用者の努力義務の規定があり、国公法でもそうした規定を設けた」などと答弁しました。
共産党の塩川議員は、幹部人事の一元管理、とくに、事務次官から部長級までを同一の職階とみなす「人事管理の弾力化」の問題点を追及しました。塩川議員は、現行の標準職務遂行能力は、次官、局長、部長の各段階で違いがあるもとで、「新たな制度では標準職務遂行能力も一つにするのか?」と質問しました。仙谷大臣は、「法律が施行されてから、総理大臣のもとで新たな標準職務遂行能力を定めることとなる」と答弁しつつも、「わざと違いをつくるために文字に書いてあるだけという程度のことしか私は思っていない」などとのべたことから、「そういう話ならば、幹部候補者名簿そのものの妥当性が問われる。標準職務遂行能力がどのような文面になるのかきちんと示すべき」とせまりました。
さらに、塩川議員は、「現行の標準職務遂行能力でも抽象的な基準となっていて、能力評価に恣意性が入り込む余地が大きい。次官・局長・部長と3つに分けていたものを1つにすることは、ますます抽象的な基準とならざるをえず、ポストにつける際に恣意性の介在が拡大する」とのべ、政権党いいなりの幹部職員をつくりだす危険性を指摘しました。
仙谷大臣は、「理屈で言えばそうかもしれないが、嫌らしい党派性とか政治性とかを排除するためにどうすればいいのかを考えるべきだ」と質問にまともに答えず、塩川議員が、「幹部職の評価が中立・公正におこなわれるとされる建前上の前提さえなくなる。そのことを強く指摘せざるを得ない」とせまっても、「塩川議員とは、幹部人事についての考え方とイメージが大きく違う」などと議論をそらしました。
(※全労連公務員制度改革闘争本部「公務員制度改革」闘争ニュース89より転載)
以上
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