第174回通常国会に提出された国家公務員法「改正」法案など公務員制度関連法案は、参議院内閣委員会で審議されていましたが、鳩山前首相の辞任で6月はじめから国会が空転し、6月16日の国会閉会とともに、審議未了・廃案となりました。
昨年の国会では、自公政権が提出した公務員制度改革関連法案が廃案となっており、政権交代のもとで、同種の法案が2年連続して廃案となるなど、「政治主導」で政権党いいなりの公務員づくりをめざす法案が、きわめて大きな矛盾をかかえていることがあらためて明らかとなりました。
鳩山首相辞任の混乱つづくなかで多くの法案が廃案・継続審議
廃案となった公務員制度改革関連法案は、幹部職員の人事を内閣総理大臣のもとに一元管理することを目的に、事務次官から部長級の官職を「同一の職制上の段階」に属するとみなしたうえで、「転任」と称して事実上の降任を可能とすることなどを柱としていました。
「政治主導」により幹部職員を降任させることは、公務員の中立性・公正性を確保することからも大きな問題を持っていましたが、全労連「公務員制度改革」闘争本部の反対を押し切って、鳩山内閣は2月19日に国会提出を強行しました。
内閣委員会に付託された法案は、10年度予算成立後の4月から審議が開始され、衆議院では、委員会審議とともに、参考人質疑、公聴会、総務委員会との連合審査が開かれ、50時間にせまる法案審議がすすめられました。
審議が深まるなかで、法案の数々の問題点が明らかとなり、野党からは資料の提出なども要求されるもと、民主党は、5月12日の内閣委員会で、野党が反対するなかで法案の採決を強行し、翌13日の本会議でも強行採決したうえ、法案を参議院に送付しました。
また、参議院では、5月16日に本会議で趣旨説明がおこなわれ、内閣委員会では約30時間の質疑がすすんだところで、鳩山首相の辞任でその後の国会が空転し、内閣委員会も開かれることなく、6月16日の国会閉会をむかえました。
審議未了の場合、廃案もしくは継続審議の扱いとなりますが、今回、参議院で半数の議席が改選されることから、参議院で審議されていた法案は、すべて「廃案」扱いとされます。この慣例によって、公務員制度改革関連法案は、衆・参での約80時間の後、結果的に廃案となり、ふりだしに戻されました。
各党が公務員総人件費削減を競い合った国会審議
全労連闘争本部は、公務単産の協力も得ながら、内閣委員会への傍聴行動をつづけ、委員会では、「幹部職員の一元管理」にとどまらず、労働基本権問題、公務・公共サービスのあり方にもかかわって議論されるもとで、審議の行方を監視してきました。
とりわけ、看過できないのは、民主党や自民党の各議員が、公務員総人件費の削減を競い合ったことです。民主党の議員からは、「公務員総人件費削減ができなければ、消費税増税の議論が必要だ」とする意見がのべられるなど、公務員削減を増税の「露払い」にしようとするねらいも見られました。
また、こうした主張に応えた仙谷公務員制度改革担当大臣(現官房長官)の姿勢も重大です。仙谷大臣は、労働基本権回復の議論と重ね合わせて、「公務員に労働基本権(協約締結権)を回復したうえで、労働組合と交渉して、総人件費についても適切に削減していく」などと答弁し、民主党・自民党の要望に応えました。
さらに、地方自治体が厳しい財政状況のもとで、独自の給与カットをせざるを得ないことを例にあげ、「(地方公務員は)団体交渉によって、労働組合の理解のもとに給与削減が実現している」と強弁しました。
地方財政を急速に悪化させたのは、補助金や地方交付税の大幅削減など「構造改革」路線が根底にあります。地方の疲弊を招いた政府の責任こそ追及されるべきであり、地方公務員の給与カットを引き合いに出すことは断じて認められません。
民主党は、この間の選挙公約で国家公務員2割削減(1.1兆円)を掲げてきました。参議院選挙では、自民党もこれに対抗して「給与引き下げなどで国家公務員、地方公務員の総人件費をともに2割削減」とのマニフェストが示されています。
公務・公共サービスの後退につながる公務員削減を競い合うことは認められず、ましてや、公務労働者の労働基本権回復を、給与削減の目的として位置づけることなどは、基本的人権を踏みにじるものであり、断じて許すことはできません。
公務・公共サービス拡充、労働基本権回復の国民世論をひろげよう
関連法案の廃案により、当初、今年4月からの発足がめざされていた「内閣人事局」の設置も見送られることとなりました。当面は、協約締結権回復にむけた制度設計をふくめて公務員制度改革の具体化は、引き続き、公務員制度改革推進本部事務局が担うこととなります。
参議院選挙後は、連立政権の合意でもある「郵政改革法案」の早期成立をめざして、ただちに臨時国会を開くとの動きも伝えられています。この臨時国会での公務員制度改革関連法案の扱いは、混迷する政治情勢のもとで見通しは不明です。
こうしたもと、公務・公共サービスの拡充、公務員総人件費削減反対とあわせて、公務労働者の労働基本権回復、民主的公務員制度を求める国民世論をひろげていく必要があります。そのためにも、目前にひかえる参議院選挙での奮闘が求められています。(※全労連公務員制度改革闘争本部「公務員制度改革」闘争ニュース98より転載)
「地域主権改革」課題で、四国選出全ての
国会議員・参院選予定候補への要請を完遂
四国ブロック国公に結集するすべての県国公は「総対話MAP運動2010」の実践として、「地域主権戦略大綱」の策定が間近に迫ったもと地元選出国会議員への要請行動を完遂しました。
今回の要請は、@国民・地域住民に犠牲を強いる「地域主権改革Jを行わないこと、A行政サービスの低下を招く国の地方出先機関の統廃合を行わないこと、B公務員を一律に削減する定員削減計画などを行わないことについて、面会拒否2名と不在1名を除く四国選出の衆参全国会議員と参議院選挙の予定候補者に対して行いました。
要請の結果は、「秘書では判断できないので、議員に伝える」という一方で、党派を問わずに「地域主権改革で住民が犠牲になってはならない」、「国と地方の役割を明確にして、必要な出先機関は廃止すべきでない」、「公務員を一律に削減すべきでない」といった対応もありました。
7月11日に参議院選挙の投開票が行われ、選挙を終えると「地域主権戦略大綱」が策定されることから、たたかいは重要な局面を迎えます。引き続き国会議員との繋がりも強めつつ、「総対話」の運動で対峙していくことが求められています。(※四国ブロック国公 第09-17号より転載)
以上
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