【青森県国公発】
青森県公務共闘(青森県公務・公共業務労働組合共闘会議)は11月27日、青森市内で学習会「公務員制度改革の動向 労働基本権問題を中心に」を開催し、県内の各産別から20人余が参加しました。
権利は与えられるものではなく勝ちとるもの
学習会では、公務労組連絡会の黒田健司事務局長が講演し、「マイナス勧告、年齢による賃金差別を内容とする国家公務員給与法案が昨日(11月26日)可決成立した。公務員の権利が危ない現在、このような学習会はタイムリーな企画」と述べ、公務員制度改革の現状と労働組合のとりくみについて報告しました。
黒田さんは、過去10年の公務員制度改革の歴史にふれ「ILOが公務員の労働基本権の回復について再三政府に勧告している。にもかかわらず、財界主導で公務員を全体の奉仕者から一部の奉仕者へと歪める狙いをもって『改革』が押し進められてきた。政権が自民から民主に移っても、この大きな流れに変わりはない」と指摘。「1948年の人勧制度開始後、4半世紀近くにわたって勧告が完全実施されない状態が続いた。80年代以降、行革臨調路線で人勧が凍結され、90年代以降はマイナス勧告、今世紀に入って本俸の引下げなど、人事院は一貫して政府の意向を具体化してきた。こうした歴史は人事院が労働基本権の代償機関たり得ていないことを示している。」と強調しました。
労働基本権回復をめぐる動きについては、労使関係制度検討委員会が09年12月に最終報告を行ったが、政府は1年近くなんらの検討も行わず店ざらしの状態にあると指摘。またその内容について、人事院勧告制度の廃止、労使交渉による賃金・労働条件決定、協約締結権を回復するといった積極面がある一方で、ストライキ権を回復しないなどの問題点があると話しました。今後、次期国会での公務員制度改革関連法案提出の動きに注意しつつ、労働基本権の回復にむけて重要なのは、スト権も含む労働基本権の全面回復、労働条件にかかわる幅広い分野を交渉事項とすること、また、労使から独立した公正中立の第三者機関が必要であることを強調しました。講演の結論では「権利は与えられるものではなく、勝ちとって手に入れるもの」として、労働組合の組織強化・拡大によって力をつけることと同時に、公務・公共サービスの拡充と結びつけた官民一体のたたかいが重要であることを訴えました。
人勧に基づかない給与法改正は労働基本権の侵害
団結力強化と官民共同のたたかいが重要
質疑討論では、黒田さんが応答する形で討論を深め、多くの参加者から積極的な質問がありました。
民主党政権による給与法改正案への危機意識を持つ参加者からは、「人事院勧告制度の軽視と新たな賃金カットという現政権の圧力に、職場段階からどう対峙するか」と、切迫した情勢認識が表明されました。黒田さんは、従来の人勧制度における賃下げと民主党の手法との相違について「民主党の給与法改正案は、勧告にもとづかない賃下げ法案であり、端的に憲法違反。人事院勧告は、民間準拠を賃下げの理由とし、情勢適用の原則に則っていた。今般の民主党案は財政状況を理由としているが、法律のどこを見ても財政状況を理由として賃金を策定する枠組みはない。法律に規定のない賃下げでは、政府自ら法律違反を犯すことになる」と指摘。あわせて、「これは公務だけの攻撃ではなく、賃下げは民間に波及する。国民に犠牲を強いる政策のつゆ払いとなる。かつて人勧凍結を100万人の署名で跳ね返した例に見られるような、官民共同のたたかいが求められる」と強調しました。
また、「排他的交渉代表制が導入されれば、少数組合が排除される」との危惧の発言に対しては、「この制度に関しては、労使制度検討委員会でも、労働者、有識者双方から批判が多く、導入の見込は低い。となると、交渉拒否といった不正実な当局対応を監視するための第三者機関の役割が重要になる」と答えました。
ストライキ権の回復について、「スト権の行使には議決等の手続を踏む必要があるが、こうしたノウハウが組合の側にまだない」との意見に対しては、「ストライキの意義は組合員の団結を示すことにあり、ただやればいいというものではない。この観点から、機関会議での決定や、場合によっては組合員投票といったプロセスが重要になる」と話しました。
各職場からは、人事評価制度にかかる職場実態の報告があり、本格実施とはいうものの管理者も組合員も戸惑いを隠せない様子であることや、順次予定される給与への成績反映への不安などを表明しました。
公務員制度改革をめぐっては、次期国会にかけて今後ますます危機的なものになることが予想される中、情勢を展望しつつ、憲法やILO勧告といった私たちがふまえるべき原則やたたかいの基本を確認できた時宜を得た学習会となりました。
特に、後半は参加者から計10件もの発言が集中して活発な討論が展開され、この問題への組合員の関心の高さが伺われました。参加者が20名あまりだったことも幸いし、内容の濃い討論ができました。(青森県国公事務局長・伊藤嘉明)
以上
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