2011年4月28日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 岡部勘市
「地域主権改革関連3法案」(「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法案」(以下「地域主権改革一括法」という)、「国と地方の協議の場に関する法律案」(以下「国と地方の協議法」という)、「地方自治法の一部を改正する法律案」)が4月28日の参議院本会議で賛成多数により成立した。昨年の第174通常国会に提出されたものの、政局の混迷とも相まって継続審議となっていたこの法案は、「地域主権改革」の字句の削除によって日本共産党を除く与野党の賛成で成立したものである。国公労連は、福祉や教育分野をはじめとするナショナルミニマムを保障する国の責任を放棄する法案の成立に断固抗議するとともに、東日本大震災での被災者救援や復興ともあわせて、国民のいのちとくらしを守る国の責任と役割をあらためて議論し直すことを求めるものである。
「地域主権改革一括法」では、国が定める施設等の最低基準などを緩和、廃止して地方自治体に委ねるとしている。たとえば保育所の居室面積基準を後退させれば、児童の詰め込みが横行し、安心・安全な保育と児童の健やかな成長を脅かすことは明らかである。また、「国と地方の協議法」では、附則で「住民に身近な行政は、地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うようにするとともに、地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができるようにするための改革」として地方の自己責任を強調しているが、憲法に定める国民主権の趣旨を公然と歪曲するものである。
3月11日に発生した東日本大震災の被害の把握や被災者救援が遅れているが、この間の「三位一体改革」や「平成の大合併」などで公務員労働者が削減され、自治体が広域化し、地方自治体の機能が破壊されたことが一因と指摘されている。しかし、自らも被災者でありながら、被災者の救援や支援、被災地の復旧・復興にむけて昼夜を問わず奮闘する公務労働者の姿は、公務・公共サービスの重要性を浮き彫りにしている。
東北地方整備局は救援物資などの輸送経路を確保するため全国からの応援も得て短期間で幹線道路の応急復旧を行い、失業者の生活保障や事業主の相談支援を担う労働局や公共職業安定所も全国からの応援のもとにその機能を確保している。地方自治体とともに、国の出先機関が地域で果たす役割の重要性が明らかになっている。
国と地方のそれぞれが責任と役割を発揮することで生存権などの国民の基本的人権が確保できるものであり、国の役割を外交や防衛、徴税や治安などに限定し、福祉や医療、雇用、教育などを地方自治体の責任とする「地域主権改革」は、大震災の実態からも国民の権利保障とは正反対のものである。
一方財界は、「震災復興に向けた緊急提言」(3月31日・日本経団連)で「早期復興に向けた強力な体制整備」として「道州制の導入も視野に入れた自治体間協議の促進」を提唱し、「東日本大震災からの復興に向けて〈第2次緊急アピール〉」(4月6日・経済同友会)では「道州制の先行モデルをめざし、東北地域全体を総合的に考える視点を」を提起するなど、震災復興を逆手にとって道州制推進を訴えている。
大震災からの復興にあたって最も重要なことは、被災者本位の生活再建、住民本位の被災地復興であり、そのための財源確保をはじめとする国の責任と役割発揮が不可欠である。大震災を巧みに利用した財界本位の復興や道州制推進など、新自由主義による「構造改革」を加速させることは許されない。
4月5日には国の基準の緩和・廃止をさらに拡大する「第2次地域主権改革一括法案」が国会に提出されている。国公労連は、「地域主権改革」の名による国民の生活保障の最低基準の引き下げを許さないために広範な労働組合、国民と共同して奮闘するものである。同時に、生存権などの国民の基本的人権を保障する憲法を真正面に据え、その実現のために必要な公務・公共サービスの拡充と国民本位の民主的な行財政・司法を確立するために力を尽くすものである。
以上
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