◆安心して働ける高齢期雇用を
勧告期に定年延長の「意見の申出」
人事院は、定年延長に向けた制度見直しについて、労働組合や各府省庁の意見を聞きながら「意見の申出」に向けた作業をすすめています。9月の中下旬と予想されている今年の人事院勧告にむけて大きな山場を向かえます。高齢期雇用に関する課題等について理解を深め、要求実現に向けてジャンボハガキ行動など各種行動にとりくみましょう。
◇高齢期雇用をめぐる状況−私たちの基本スタンス
【年金支給開始年齢 段階的に引き上げ】
公的年金の支給開始年齢が60歳から65歳へと段階的に引き上げられることに伴い、官民ともに2013年以降60歳で定年退職となる場合には無収入となる期間が生じます。高齢社会を迎える中で、定年延長を中心に高齢者の本格的な雇用システムを追求し、その能力を十分に発揮できる社会を作ることが官民を問わず緊急の課題となっています。
民間では2006年に高年齢者雇用安定法が改正され、@定年の引き上げ、A継続雇用制度の導入、B定年廃止のいずれかの措置が義務付けられています。しかし、定年延長を選択する企業は少なく、再雇用等の「継続雇用制度」によって対応している企業が大多数です。その雇用形態の変化に伴って賃金水準・年収が大きく落ち込んでいるのが現状です。
【公務員の定年延長 社会全体に影響】
こういった情勢の中で国家公務員の定年制度がどのように見直されるかは社会全体に大きな影響を与えます。それだけに9月に予想される人事院の「意見の申出」の内容は重要であり、国公労連は、高齢者が長年培ってきた知識と経験を活かしながら、安心して働き続けられる充実した制度の構築を求めていきます。
◇60歳を超えても給与水準の連続性を保てるように
【ふさわしい定年延長の給与制度とは】
国公労連は、定年延長後の給与水準を考える基本として、@60歳以前の賃金水準との連続性を保つとともに、従事する職務の内容、職責及び蓄積された知識・能力・経験にふさわしいものとすべきであること、A高齢期にふさわしいゆとりある生活を保障するだけのものであること、が必要と考えています。
60歳を超える職員の給与水準を決めるにあたって、60歳を超える官民の賃金水準比較を正確に行うには多くの難しい問題があります。
【正しい水準比較とは】
仮に、民間の賃金実態を参考にする場合には、@定年延長と同様の雇用形態にある従業員の賃金実態を重視すること、A民間企業における定年延長・再雇用時の職務・職責の変化の有無と給与水準との関係を十分考慮し慎重に検討すること、が必要だと考えています。
【年齢差別に反対】
一定の年齢に達したことのみを理由として賃金を引き下げることは「職務給原則」や「能力・実績主義」にも反することから認められません。
現在、行(二)労務職の定年年齢は63歳です。そういった現行の特例定年が適用されている職員は、新制度下においても現行特例定年年齢までは現行の給与水準を維持すべきです。
◆60歳以降の大幅賃下げねらう人事院
◇知識・経験を有する職員を低い賃金で
人事院が表明している高齢期雇用制度は、次給与の面からみても定年延長の名に値しないものであり抜本的な改善を求めていく必要があります。
【総人件費抑制手段】
昨年の勧告以降、60歳を超える職員の給与について、総給与費の増加を抑制することを前提に、給与制度を見直すという立場に立っていることが最大の問題です。
60歳の前後で給与水準の連続性を断ち切り、60歳前と60歳後の給与を全く別扱いとして制度設計することを表明していますが、定年延長という以上現在の定年年齢を引きずって制度設計すること自体違っています。
60歳の時点で職務・職責になんら変更がないにも関わらず、一定の年齢に達したことを理由として給与を引き下げる事は「職務給原則」や「能力・実績主義」にも反するものであり問題です。
【同種・同等比較で】
人事院は、「国民の理解を得て定年延長を行う」ことを理由に雇用形態の違いを度外視して民間の60歳代前半の給与水準に合わせていくといった道理のない判断を示しています。しかし、これまで人事院の主張してきた「同種・同等比較」の基本的な考え方にも反するもので人事院の姿勢が問われます。
【低い賃金で雇用】
人事院の表明している60歳代前半の給与は、公務で長年培ってきた知識と経験を有する職員を低い賃金で働かせるための政策に他なりません。
昨年の勧告で定年延長の基本的な方向について「高齢期の職員にも能力を十分発揮して質の高い行政の展開を担ってもらう必要があり、その働きにふさわしい給与処遇を図ることが基本」とうたったことに責任を持つべきです。
引き続き、民間のモデルケースともなり得る公平で納得性の高い仕組みとするため、正確な官民比較を含めて定年延長にふさわしい給与制度を求めていく必要があります。
◇「意見の申出」に向け
高齢期雇用課題で当面の山場となる9月の「意見の申出」に向けて、人事院に対し交渉を通じ要求の実現を求めます。
また人勧期の要求実現のため8月30日に中央行動を配置するとともに、賃金・労働条件改善の要求とあわせて、高齢期雇用の要求を盛り込んだ「寄せ書き(ジャンボはがき)」など職場からのとりくみを完遂することが求められています。
◇高齢期給与に関する2011年勧告のポイント
【55歳超の給与抑制措置の撤回を−給与構造見直しの現給保障継続せよ】
10年人勧では、行(一)職員のうち、6級以上で55歳を超える職員の俸給月額を1・5%減額するという制度改悪が行われました(他の俸給表職員も同様)。
この改悪の理由は、50歳代では公務の給与水準が民間を上回っているからというものです。民間の50歳代後半の賃金の落ち込みは、かつて定年年齢が55歳であったことから55歳前後を頂点とした人事管理(具体的には出向・転籍など)を反映したものです。その事情を無視した、単純な年齢別の官民比較は意味がありません。55歳超の給与抑制措置は撤回させなければなりません。
05年の「給与構造改革」の中で、年功的な給与上昇を抑制するとして、給与カーブのフラット化が強行され、平均で4・8%、中高年齢層は7%もの賃金水準が引き下げられました。その際、生活防衛の立場から私たちは、引き下げ前の給与額を保障させる「現給保障措置」を実現させました。
しかし、人事院は、昨年度で給与構造改革が完成したことなどを理由に、現給保障措置の廃止を表明しています。現給保障措置は、重大な賃金カーブの見直しの影響をできる限り和らげるための制度であったはずであり、わずか5年で打ち切れるものではありません。現給保障は50歳代のみならず40歳代にまで対象が広く分布しており、廃止の影響は重大です。なんとしても現給保障の継続を求めます。
◇用語解説
【短時間勤務制度】
60歳以降の職員が希望する場合、定年前に短時間勤務の官職に就くことによって通常より短い勤務時間で勤務できるようにする措置です。
60歳以降の働き方について、健康上の理由や職員の希望する人生設計上の理由に基づく多様な働き方を可能とするための措置です。あわせて、60歳以降の職員が短時間勤務に移行することで新規採用や若年層の昇進を可能とし組織活力の確保を図る目的もあります。
短時間勤務への変更は、その官職に異動することで行われることから、任命権者の判断が介入することが考えられますが、本人の希望が最優先されること。また、本人の希望によって短時間勤務からフルタイム勤務への変更が可能となる仕組みの整備を求めていく必要があります。
一定の範囲の管理職を対象に、一定の年齢に到達した場合に当該管理職を離れる措置です。
【役職定年制】
幹部人事の新陳代謝を図り、組織の活力を維持することを目的としています。
昨年末に出された「高齢期雇用問題に関する検討状況の整理」では、対象について、「本府省課長以上(事務次官・外局長官を除く)及び管区機関等のこれらに相当する職員」で検討する。また、年齢については、現在の定年年齢である60歳とすることで検討するとしています。
役職定年は、一定の年齢に達したことをもって、職員の意向に関わらず管理・監督者の地位にある官職から職員を異動させるものであり、成績主義による任用原則や平等取扱原則からみて重大な問題を含んでいることから、導入しないことを求めていく必要があります。
【希望退職制度】
2010年6月22日に閣議決定された「退職管理基本方針」で示されたもので、任命権者があらかじめ設定した条件に合致し、職員が自発的に応募した場合に退職手当が優遇される制度として政府で検討されているものです。現在の退職勧奨制度に替わるものとして考えられています。
◆最賃引き上げ、公務員賃金改善を−7・28中央行動に1500人
◇震災被災地の復旧・復興めざす
国公労連は7月28日、全労連、国民春闘共闘、全労連公務部会に結集し、最低賃金引き上げ、均等待遇実現、公務員賃金改善などを求める夏季闘争勝利7・28中央行動を展開しました。
長野県労連・長野県国公が貸し切りバスで駆けつけるなど全国から1500人(国公労連はブロック・県国公含む約300人)の官民労働者が参加しました。
中央行動は、10時からの国会議員要請行動からスタート。「最低賃金の改善と公契約法の制定を求める要請」「公務員給与引き下げ法案」の廃案を求めました。
中央行動を通して、全国加重平均6円と極めて低い最低賃金目安額答申に怒りを示し、公務員賃金引き下げ阻止にむけて、運動の強化、被災地の復興、原発ゼロをめざす決意を固めあいました。
◆原発被害に全面補償を
経産省前で行動
「国民要求実現7・28中央行動」の一環として28日、全労連、国民春闘共闘委員会、国民大運動実行委員会らは、東京・霞が関で「原発ゼロをめざす経済産業省前行動」を実施しました。
原発立地県(福島、宮城、山口、静岡、佐賀)の代表による地域の実態と訴えがありました。参加者は、原発政策を推進してきた経済産業省に向かって「国と東京電力は、原発被害に全面補償をしろ!」などのシュプレヒコールを行いました。
◆今こそ人事院の役割発揮を−2011年人勧にむけ要求書提出
国公労連は7月25日、宮垣忠委員長を責任者に人事院に対し、今人勧にむけた重点要求の提出・交渉をしました。人事院側は吉田耕三事務総長が対応しました。
【今勧告の持つ意味】
宮垣委員長は、「給与引き下げ閣議決定に人事院総裁も『遺憾』とする談話を発表したが、人勧制度を無視する政府のやり方は認められない。今勧告は特別な意味を持っており、改めて人事院の機能発揮を強く求めたい」とのべました。
【55歳超抑制やめよ】
岡部勘市書記長は要求のポイントについて説明し、@生活と労働の実態にふさわしい給与水準改善をA一時金10%削減などありえない、積極的改善を。55歳超の抑制措置は撤回すべき。給与構造改革に伴う経過措置額廃止は認められないB超勤縮減の抜本的改善策を。定員問題での意見表明を。C「心の健康づくり」に向けた対策の充実・強化を。国公労連のセクハラ・パワハラ調査では依然ハラスメントがなくなっていない。パワハラ防止に向け、「指針」策定などの対策をD非常勤の均衡待遇や安定雇用の確保に向けて使用者責任が問われている。夏季休暇制度化や採用時からの年次休暇取得が重要E協約締結権回復は一つの到達点だが、争議権の先送りや、認証制や管理運営事項の法定化、協約締結に際しての事前承認性、仲裁裁定の努力義務化、幹部人事の一元管理、など公務員制度改革法案に重大な問題点がある。人事院は専門・中立的な人事行政機関としての意見表明などいまこそ役割発揮を、とのべました。また、阿部春枝副委員長は、男性職員の育児休業取得がすすまないのは、休業期間中の所得保障が不十分であり、育児休業や介護休暇中の所得保障の充実を、と発言しました。
以上の主張を受けて吉田事務総長は、「要求は確かに承った。国公法に定められた責務を着実に果たしていく所存」などと回答しました。
◆最賃目安6円アップ−中央最賃審が答申
中央最低賃金審議会は7月27日、2011年度最低賃金の平均6円アップ736円の目安を正式決定し、細川律夫厚労大臣に答申しました。
「生活保護算定値」さえ下回っている道府県では、最高が神奈川の18円で、以下東京16円、北海道13円、広島6円、埼玉5円、大阪4円、兵庫2円となっています。その他多くの県の改定額は1円となっています。
全労連は同日、小田川義和事務局長の談話を発表し、大震災による影響を「過大に主張して、『ゼロ円目安』を求めた使用者側の言い分に大きく引きずられた」と批判しています。
今後、全労連と国民春闘共闘委員会は、地方の最低賃金審議会で目安を乗り越え引き上げを求めることとしています。
◆賃下げ反対の運動 全国的に−全労連公務部会が定期総会
全労連公務部会第7回定期総会が7月27日、86人が出席して開催され、賃金・労働条件の改善、公務・公共サービス拡充、労働基本権回復、組織強化に向けての方針を確定しました。
討論では、21人が発言、公務員賃金削減反対闘争での奮闘ぶりや決意が述べられました。
「連合が賃下げ反対から早々に放棄するなか、公務部会は唯一たたかえる組織だと痛感した」(青森)、「ディーセントワーク宣伝にとりくみ、社保庁の分限免職撤回も訴えている。また、公務員賃下げでは京都経済がマイナスになると訴えてきた」(京都)、「今人勧は賃下げの法案が提出されているもと、情勢適用の原則から不当と人事院に言わせることが重要。年齢差別の給与抑制措置は今勧告で中止させていく」(国公労連)などの発言がありました。
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