2012年1月30日
国公労連独法対策委員会
委員長 岩崎恒男
政府は1月20日、「独立行政法人の制度・組織見直しの基本方針」(以下、「基本方針」)を閣議決定した。
独立行政法人の抜本見直しについては、野田政権発足後、行政刷新会議の中に独立行政法人に関する分科会が設置され、「廃止・民営化・統廃合を含めた抜本的な見直し」に向けて検討がすすめられてきたものであり、今回の閣議決定内容もそれをふまえたものとなっている。
「基本方針」にもふれられているとおり、そもそも独立行政法人制度は「公共上の見地から確実に実施することが必要な事務・事業」を実施するための担保として創設された。
今回の抜本見直しにあたっては、「組織のあり方と業務運営の両面で綻びが露呈」したことや「様々な分野で様々な対応の業務を行っている法人全てを一律の制度にはめ込んで」いるために独立行政法人の機能が発揮されていないこと、「我が国の厳しい財政事情や、東日本大震災からの復興に向けて政府をあげての取組が求められている」ことを理由に制度を見直すとしている。
しかし、「綻び」については、組織や財政の規律、目標・評価、説明責任・透明性の問題を指摘しているが、自主性・自律性の担保を制度の「ウリ」にしつつ、運営費交付金や目標設定など国の関与を強めてきた矛盾が生じたものといえる。また、「全法人一律の制度」についても、それぞれの業務や果たすべき役割のあり方ではなく、行政機能の減量・効率化を目的に制度検討がすすめられ、わずかな時間の審議で法案成立がはかられた結果であることは明らかである。このことは、独立行政法人制度が国の責任を放棄し、各法人における自主性・自律性を縮小し、効率化・減量化押しつけにつながることを指摘してきた国公労連の主張の正しさを証明するものでもある。
にもかかわらず、今回の「基本方針」でも、国の責任放棄につながる内容を含んでいる。
例えば、独立行政法人の類型分けの一つである「成果目標達成法人」については、「一定の自主的・自律的裁量」のもとに業務が行われると位置づけている。しかし、「研究開発型法人」については、「成果重視の実践的な評価を行う」とともに、「科学技術イノベーション戦略本部(仮称)」と制度所管官庁に置かれる第三者機関の二つが法人運営に関与を持つことや、「研究資金の配分」にまで戦略本部が関わることが盛り込まれている。これでは、およそ「自主的・自律的裁量」にもとづいて研究を進めることができないばかりか、国民生活にとって大きな役割を果たす基礎研究分野がないがしろにされる重大な危険性をはらんでいる。
また、「行政執行法人」について「執行に関する法人の裁量が小さいことから、意志決定の仕組みを必要最小限の簡素なものとする」とされているが、そうであるならば本来そうした機関は独立行政法人化する必要はなく、まさに国の責任放棄や行政の不必要なアウトソーシングがおこなわれたこととなる。
また、「国民目線での点検」についても、各独立行政法人が果たしている役割が明らかにされず、財政運営や成果など表面的な結果だけで組織や業務の切り捨てが行われる可能性が高い。
国公労連は、独立行政法人の抜本的見直しにあたっては、こうした廃止・縮小ありきでなく、国民生活の向上や公務・公共サービスの拡充につながる見直しを実現するために、最後まで奮闘するものである。
以上
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