一、人事院は本日、国会と内閣に対して、一般職国家公務員の給与改定などに関する勧告および報告をおこなった。
その内容は、「0・35%、1352円」の官民較差にもとづく初任給を中心とした俸給表の部分的改善、子等の扶養手当の引き上げ、一時金の0・05月増額、「専門スタッフ職俸給表」の新設などである。
昨年に引き続く賃上げなど民間賃金の動向も反映して、今夏勧告は、一部の給与改善にはとどまったが、月例給では、実に8年ぶりの「プラス勧告」となった。
また、報告では、焦点となっていた非常勤職員の給与改善にむけて、人事院として必要な方策を検討していくとの方向が示され、今後の要求前進につなげる足がかりとなった。
しかし、公務労組連絡会が強く求めてきた所定勤務時間の短縮は、人事院みずからが是正の必要性を認めながら、今夏勧告での改善を見送ったことは断じて認められるものではない。来年の勧告を待つことなく、所定勤務時間の短縮にむけたすみやかな措置を強く求めるものである。
二、「格差と貧困」の拡大が社会問題となるなか、中央最低賃金審議会では、最低賃金の大幅引き上げにむけた議論が続いている。継続審議となった最低賃金法案でも、全労連などが求めてきた要求を反映し、「生活保護との整合性を考慮した最低賃金」が明記された。
こうした動きのなかで、人事院も、最低賃金ギリギリにおかれている初任給引き上げを中心に、給与改善の勧告をおこなったものである。
この結果は、公務労組連絡会が、最低賃金引き上げと公務員賃金改善を一体にしてたたかってきた運動の貴重な到達点である。
今年も、公務・民間が共同して2千人が参加し、最低賃金引き上げの課題とも一体で取り組んだ「7・25第2次中央行動」を頂点に、中央での人事院前「座り込み行動」や官庁街デモ、地方での人事院地方事務局に対する「包囲行動」などでたたかいを強化した。
さらに、職場からは、「賃金改善署名」を民間組合とも共同して取り組み、昨年を約4万筆上回る25万6千筆を超えて集約し、「今年こそ賃金改善を、労働時間短縮を」の要求と公務労働者のたたかう決意を人事院に示した。
厳しい情勢を跳ね返して給与改善勧告を勝ち取り、最低賃金引き上げの課題でも新たな局面を切り開きつつあることは、こうした「人勧・最賃」を一体にした仲間たちのねばり強いたたかいがあったからであり、そのことにあらためて確信を持つ必要がある。
三、「ワークライフバランス」をテーマに今年の「労働経済白書」は、企業がバブル期のピークを超える利益をあげているにもかかわらず、賃金は減り続け、長時間労働や非正規労働者の拡大で、大企業の儲けが労働者に還元されない深刻な事態を指摘している。
さらに、財界・政府の総人件費削減政策に迎合し、連年の「マイナス勧告」で公務員賃金を引き下げ続けてきたばかりか、その結果、官民の「賃下げの悪循環」を招き、労働者全体の賃金水準引き下げに手を貸してきた人事院の否定的な役割も重大である。
今夏勧告でも、昨年に引き続いて「企業規模50人以上」を官民比較企業規模として、人事院は、意図的とも言える手法で官民較差を大幅に引き下げ、俸給表改善を部分的にとどめた。
人事院は、労働基本権制約の「代償措置」としての役割を果たすとともに、人事院勧告の社会的影響力をふまえて、すべての労働者の賃金底上げに積極的な役割を発揮すべきである。
四、過日の参議院選挙では、自民・公明両党の歴史的敗北という結果となり、「戦後レジームからの脱却」をさけび、「三本の矢」などと称して公務員バッシングで国民の支持を得ようとした安倍内閣には、国民の厳しい審判が下された。
選挙結果は、また、ワーキングプアやネットカフェ難民を生み出す弱肉強食の社会、公共サービスの切り捨て、地方切り捨てで国民に犠牲を押しつけてきた「構造改革」への怒りが爆発したものである。
公務労組連絡会は、新しい政治状況のなかで、国民本位の公務・公共サービスの実現に全力をあげる決意を新たにする。
むかえる秋のたたかいは、人事院勧告をふまえた給与改善の早期実施とともに、国以上に厳しさを増す地方自治体や独立行政法人職員の賃金改善が焦点となってくる。
「公務員制度改革」では、臨時国会で「地方公務員法改正法案」が審議され、来年の通常国会へ「公務員制度改革基本法案」が準備されようとしている。労働基本権回復を求めるたたかいも、この秋には、政府の専門調査会の結論が出される重要局面をむかえる。
公務労組連絡会は、国民のいのちと暮らし、平和と憲法を守るたたかいと一体で、公務労働者の生活改善、労働基本権回復など民主的公務員制度実現をめざして、引き続き奮闘する決意である。
2007年8月8日
公務労組連絡会幹事会
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