4月20日付の『毎日新聞』は、「公務員改革:能力を6段階で評価 昇任や給与の基準に」とする「公務員制度改革案」が明らかになったと報道しました。
「公務員制度改革」を検討している政府・行革推進事務局のもとにおかれている各省官房長による「連絡会」でも一度も論議されていない「改革案」が、あたかも「決定」された事項であるかのように報道されることは極めて問題です。
また、労働条件の中心といえる賃金について、労働組合に対する事前の説明や協議もないままに、検討が進められているとすれば、それは労働基本権をまったく無視したものであり、すでに労働基本権の「代償措置」が機能不全に陥っていることも意味しています。
「政治主導」とはいえ、法治国家である日本で、労働条件の変更に、労働者はもとより、「労働基本権の代償措置」とされてきた人事院や、人事管理を運用する使用者・各省当局の関与を否定してしまうことは許されません。「政治主導」=ファシズムと言わざるをえません。
賃金制度の大改悪を
許さないたたかい強めよう
報道されている内容が、「改革案」であるとすれば、それは重大な内容です。現在の賃金は、課長、係長など「仕事の役割=職務」を基本に、11段階の俸給表を構成しています。これを、個々人の「職務の能力=職能」で評価した6段階に切り替え、さらに仕事の上での責任(職責)をしめす係長、課長などに応じた賃金(職責賃金)と成果・実績(成果賃金)を上乗せして個々人の賃金を決めようと言うのです。
報道でもあるように、同じ課長でも、基本となる職能賃金が違う、逆に言えば6級のヒラ係員を4級の課長が「指導」するといったことが想定されます。しかも、職能は毎年評価して、格付けを見直すとしていますから、まさに評価をもとにした「信賞必罰の賃金制度」そのものと言えます。
このような賃金制度では、毎年の評価のみが賃金決定の基本になることから、生活の最低保障はもとより、将来の生活設計さえたたない賃金制度になってしまいます。そのことは、行政執行のプロとして専門性を高めることや、行政サービスの質的向上を、組織的にも保障する公務から、上司の目を気にし、短期的な成果(たとえば予算をいくら節約したかなど)のみを追い求める公務員を作り出し、結果として不公正な行政をはびこらせ、非効率な行政サービスの提供にしかつながらなくなります。
賃金制度を「白地から見直す」ことが、公務員制度改革の「白地からの見直し」の内容であることが明白になりつつあります。労働基本権にたいする配慮もなしに、しかも賃金格差が「能力などの評価」でつけられるという労働条件の大改悪を断じて許さないため、たたかいを早急に強める必要があります。
▼『毎日新聞』(4月20日付)の報道
公務員改革:能力を6段階で評価 昇任や給与の基準に
政府の行政改革推進事務局が進めている国家公務員制度改革案が19日、明らかになった。従来の「ポスト」至上主義から「能力」重視に大転換するもので、公務員を職務遂行能力に応じて1級から6級に格付けし、昇任や給与の基準とする。事務局は各省庁の意見聴取を経て、6月にも基本設計をまとめる。
改革案は「現在の行政組織は採用試験区分や採用年次が過度に重視され、硬直的・年功序列的な人事管理が定着している」と位置づけ、リストラなど厳しい環境に置かれる民間企業並みの取り組みを求めた。
現在の国家公務員の給与体系は、審議官以上の「指定職」を除く「行政職」で1級から11級までに分類され、本省は4〜6級が係長、7〜8級が課長補佐、11級が部長・課長に対応する「職務(ポスト)」中心主義だ。支給額は原則としてポストが基準になる。
改革案は「職員資格制度」の新設を提唱。従来の「11階級」を職務遂行能力に基いて「6階級」に整理・再編成する。階級は「課題解決力」「組織形成力」「職務知識」「意欲・姿勢」などを加味して決める。毎年、定期的に格付けを見直し「著しい能力の減退が認められる場合」は降格を行う。在級年数基準(最短・最長)は設けず、同じ「課長」でも
能力によって「4級」や「6級」が存在することになる。
給与やボーナスの支給額はこの資格等級が基準となるが、さらに最も評価が高い「特別」から「抜群」「優秀」「良好」「要努力」、最も低い評価の「例外」まで6段階の「能力考課」が加味される。
退職金は、退職時の最終給与額や勤続年数を重視した従来のものから、「貢献度」を反映したポイント制を導入、過度の長期勤続奨励を改めるとしている。
政府は昨年末、省庁再編に伴う行革大綱を閣議決定した。抜本的な公務員制度の見直しをうたい、信賞必罰の人事制度の実現を求めている。今回の改革案もこの閣議決定の流れを受けたものだが、官僚の間からは「能力」の判定について「どこまで公正、透明にできるのか」「情実が横行するのでは」といった反発や懸念の声が出ている。
以上
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