2001年6月14日
ILO第89回総会「条約勧告適用委員会」における
公務員労働者の労働基本権に関する日本政府の表明について
全労連「公務員制度改革」対策本部
|
1、6月12日、ILO第89回総会「条約勧告適用委員会」は、ILO第87号条約(団結権)に関する日本案件として、消防職員の団結権、国立医療労働者に対する「代償措置」とともに、公務員のストライキ禁止問題について審議した。
2、冒頭、日本政府の発言は、公務員のストライキ禁止に対し、「最高裁による繰り返し合憲とされた判断にもとづいて適正に制裁をおこなうことは法治国家として当然」とのこれまで繰り返してきた主張をおこなった。対して、労働者代表(連合)から、「『全面一律禁止』はILO第87号条約に違反」、進行中の「公務員制度改革は一方的」、「今後は、ILO基準を遵守すること、労使協議をつくすこと、閣議決定(3月27日)の『公務員制度改革の大枠』は今後の交渉を制約するものでないこと」を求める発言をおこなった。世界の労働者代表が発言、「刑事罰は基本的権利の侵害、行革で賃金・労働条件にインパクトを与えるのだから労働組合と協議すべき」(フランス)などである。
3、再度日本政府が反論を述べた中で、「公務員制度改革の大枠」に関して、「政府内部の検討方針であって職員団体に事前に提示して協議すべき性格のものではないと認識しているが、今後は職員団体はじめ関係者と誠実に交渉・協議しつつ、制度の内容について検討していく」、「制度の内容については今後職員団体をはじめとする関係者と交渉・協議していく中で順次決まっていくものと考えている」と述べた。
4、審議の最後に、委員会議長が「日本政府代表の表明に留意し、委員会は日本政府に対し誠意をもって労働組合と協議し、権利を保障することを期待する」「労働組合との社会的対話を希望し、次回政府が詳細に報告されることを希望する」との結論を述べ、これが採択された。
5、以上の委員会審議に対して、全労連「公務員制度改革」対策本部は、以下の見解を明らかにする。
第1は、公務員のストライキ権禁止が最高裁判決によって日本国憲法に違反しないという日本政府の主張は、ILO「条約勧告適用専門家委員会」が指摘しているILO87号条約と国内法の整合性について応えていない。そもそも公務員労働者に対するストライキ権の「全面一律」禁止を規定する国家公務員法、地方公務員法が憲法の精神に反するものである。ILO87号条約批准国としての日本政府がグローバル社会に対応する公務員制度というからには、国際労働基準に沿って国内法を整備することを改めて要求する。
第2は、政府が「公務員制度改革」の進め方について、「大枠」が「制度の具体的内容を決定するものでなく」「今後の交渉・協議を制約するものでなく」と述べている点は重要である。「大枠」が公共の福祉を増進する行政やそれを支える公務員制度から見て重大な疑義があり、容認できないことはこの間指摘してきた。このことから、「今後労働組合をはじめ関係者と交渉・協議していく」としていることも、「大枠」に示された基本方向を既定方針とするのではなく、行政・公務員制度のあり方について広く意見を聞き、関係労働組合との合意を前提にすることが必要である。6月末にとりまとめるとしている「基本設計」が、少なくとも日本政府代表の表明をふまえた「性格」となるよう求める。
6、我々は、今回のILO委員会審議を通しても、日本における公務員労働者のストライキ権の禁止が国際的にも異常であることが明らかになったものと受けとめる。現在、政府によって進められている「公務員制度改革」に対し、国民本位の行政と労働基本権回復をふくむ民主的な公務員制度確立に向けて奮闘するものである。
以上