1.基本設計の性格
(1)「基本設計」は、「公務員制度改革の大枠」(本年3月27日)に則って進めてきた検討を踏まえ、国家公務員のうち主に一般の行政職員を念頭に置いて、「新たな公務員制度の骨格」とこれを具体化するに当たっての「検討課題」を政府行政改革推進本部として示すもの(本年6月29日に同本部で決定)。
(2)今後、この「基本設計」に従って政府部内において検討を進め、改革を具体化。
2.基本設計の概要
(1)新たな人事管理システムの確立
@能力等級制度の導入
○新たに能力等級制度を導入し、役職段階ごとに必要とされる能力(職務遂行能力)の基準を明らかにし、任用・給与の基準として活用。
・全ての官職を職務の遂行に当たって必要とされる能力の程度に基づいて一定の役職段階に区分し、それに応じた等級体系を構築。
・能力基準を任用の基準として活用することにより、T・U・V種等の採用試験区分、事務官・技官の別や採用年次に基づく現行の硬直的な人事管理を改革。
・上位の役職段階への任用は当該役職段階に相当する等級の能力基準に照らし最適者を選抜する一方、現に任用されている役職段階の等級の能力基準を満たさない職員は下位の役職段階に任用するなどにより、能力本位の任用を実現。
・現行の俸給を能力等級制度に基づいて再構築し、能力本位の給与を実現。
A給与制度の改革
○職員の多面的な貢献度を適切に反映した給与を実現するため、給与体系を「職務遂行能力に対する給与」、「職責に対する給与」及び「業績に対する給与」に分割し、それらを一般職層、管理職層及び指定職ごとの役職段階の特性に応じて適切に組み合わせることにより、新たな給与制度を構築。
・能力給は、能力等級に応じた「定額部分」と業績評価に応じて昇給する「加算部分」からなる基本的な給与。一般職層及び管理職層に対して支給。
・職責給は、官職の職責に適切に報いるための給与。管理職層のほか、一般職層のうち職務負荷が特に大きい職員に対しても支給。
・業績給は賞与とし、賞与は月例給与に応じた「安定的支給部分」と業績評価に応じた「業績反映部分」とで構成。一般職層及び管理職層に対して支給。
・指定職には、職責に対する給与を基本に業績反映を含めた年俸制を導入。
B新たな評価制度の導入
○任用・給与等の人事管理システム全体を能力・実績に基づくトータルシステムとして機能させるため、「能力評価」と「業績評価」からなる公正で納得性の高い新たな評価制度を導入。
・能力評価は、能力等級ごとの能力基準に照らし、一定期間の職務を通じた能力発揮の程度を定期的に評価。任用及び能力等級の格付けの重要な参考資料。
・業績評価は、職員の業務目標の困難度・達成度等に基づき、一定期間内の業績を定期的に評価。能力給及び業績給の決定の重要な参考資料。
○複数の評価者の関与による評価の決定、評価者訓練、評価結果のフィードバック、評価に対する苦情相談などにより、制度の適正な運用を確保。
○試行期間を設けるなどにより、新たな評価制度を円滑に導入。
(2)人材の計画的育成・能力開発の推進
@人材育成コース及び育成計画の活用
○職員の主体的な能力開発を推進するため、職員に対し長期的に活躍していくことが期待される職務分野等(人材育成コース)を明らかにするとともに、伸ばしていくべき能力の方向性や中期的に予定される研修等を内容とする育成計画を明示。
A職員の自主性に配慮した能力開発の展開
○民間企業等への派遣や海外留学など職員の能力開発の機会を大幅に拡充。
○一方で、留学後早期に退職する職員に対し、留学費用の返還を法的に義務付け。
○内外の大学院等への進学など、職員が自主的に自らの能力開発に取り組む場合に、一定期間休業することができる制度を創設。
B女性の採用・登用の拡大
○女性の採用・登用の拡大のための取組、休暇・休業制度の拡充等の勤務環境の整備を推進するなどにより、男女共同参画社会にふさわしい公務員制度を実現。
(3)多様な人材の確保
@採用試験制度の見直し
○公務を志す者に対し公務員への門戸を広く開放し、各府省が業務の実態に即して真に必要な人材を人物本位で採用できるよう、採用試験制度を抜本的に見直し。
○当面、T種試験について、筆記試験段階での合格者数を大幅に増加させ、各府省が合格者の中から採用面接を行い、総合的な人物評価に基づき採用者を決定。
A民間からの人材の確保
○積極的に官民交流を行い得るよう、行政の公正性の確保にも配慮しつつ、厳格な官民の区分の考え方に根ざした規制を見直すとともに、給与格付け等を見直し。
B公募制の積極的活用
○民間からの人材登用において公募を一層活用。
○府省内及び府省の枠を超えた適材適所の人事配置等により公務部内の人的資源を最大限活用する観点から、公務部内における公募制の具体的枠組みを整備。
(4)適正な退職管理・再就職ルールの確立
@営利企業への再就職
○事前規制に重点を置いた現在の仕組みから、大臣による再就職の直接承認、再就職後の行為規制の導入等、事前・事後のチェックを通じた総合的な適正化のための仕組みに転換。なお、承認基準等についての第三者の立場からの関与の在り方を検討。
○在職していた機関と密接な関係のある営利企業の地位への再就職は大臣が直接承認。
・権限・予算等を背景とした「押し付け型の天下り」として承認してはならない類型を法令上明確化するなど、厳格かつ合理的な承認基準を設定。
・中立公正で客観的な判断を担保するため、各府省共通の承認基準を法令で定めるとともに、所管行政の実態に応じて各府省が定める運用基準を公表。
○承認された全ての案件について、再就職先の地位、職務内容、再就職先の企業との契約関係等を詳細に公表するとともに、内閣全体の承認状況を国会に報告。
○営利企業に再就職した退職公務員が出身府省の職員に働きかける行為について一定の規制を行うための法的措置を実施。
A特殊法人等及び公益法人への再就職
○特殊法人等及び公益法人の事業・組織の徹底的な見直しに併せ、これらの法人への再就職についても厳格かつ明確なルールの下で実施。当面、特殊法人等及び公益法人の役員に関する累次の閣議決定を遵守し、特殊法人等相互間の「わたり」の抑制等を徹底。
○特殊法人等の役職員の給与・退職金の見直しを踏まえ、公務員出身者の退職金について厳格に見直し。
B再就職状況の公表
○大臣の直接の承認の対象とならない公務員の再就職についても公正性、透明性を確保するため、再就職状兄全般に関する情報の公表を積極的に推進。
C退職手当制度の見直し
○退職手当について、長期勤続者に過度に有利となっている現状を是正する方向で、算定方式を含めて制度を見直し。
(5)超過勤務の縮減などによる勤務環境の改善
○国会関係、法令審査、予算折衝、各省協議など、恒常的な長時間の超過勤務の要因となっていると思われる業務を徹底的に見直し。
○管理職員に対し勤務時間管理のより一層の徹底や年次休暇・代休を取得しやすい環境作りを促した上で、適正な管理がなされているか実態把握を実施。
○管理職員の評価に当たり、超過勤務縮減への取組みや縮減成果等を勘案。
(6)組織のパフォーマンスの向上
@機動的・弾力的な組織・定員管理
○内外の環境の変化に即応し、政府全体のパフォーマンスの最大化を図るため、各府省の判断と責任で組織・定員管理を機動的・弾力的に行える仕組みを構築。
・本省庁内部部局の課・室等の改編について、各府省ごとの課・室等の総数及び職責給総額の範囲内であれば、局・部の改編に伴うものを除き、各府省の判断と責任で実施可能。
・各府省内の定員移動について、内部部局の範囲内であれば、各府省の判断と責任で実施可能。
○特定分野の機能強化が必要な場合に、府省の枠を超えて当該分野への人員の再配置を行わせる新たな仕組み(インナーソーシング制度)を創設。
A目標に基づく業務推進(業務遂行規範の明示)
○職員が組織の方針、組織内での自らの役割等を明確に意識しつつ業務に当たれるよう、「組織の目標と職員の行動基準」(業務遂行規範)を職員に明示。
○組織の目標に基づき、上司との話合いの上で職員が一定期間ごとに主体的に自らの業務目標を設定し、期間終了後に業務目標の困難度・達成度等を評価。
B企画立案と執行それぞれの機能強化
○各府省が自らの判断と責任において組織管理を行える仕組みを整備するなど、企画立案と執行それぞれの機能を強化する仕組みを通じ、各府省による自主的な企画立案と執行の分離を推進。
(7)国家戦略スタッフの創設
○国政全体を見渡した総合的、戦略的な政策判断と機動的な意思決定の必要性の増大に鑑み、内閣総理大臣が、自らの判断に基づき、行政内外から内閣の重要政策の企画立案等に従事する職員を国家戦略スタッフとして機動的かつ柔軟に任用、配置できる仕組みを導入。
○官房審議官の活用等により、各大臣の企画立案を直接補佐する大臣スタッフを充実。
(8)政府全体としての適切な人事・組織マネジメントの実現
○各府省が自主的に組織・人事制度を設計・運用できることとした上で、各府省における責任ある人事管理体制を確立し、大臣を「人事管理権者」として明確化。
○内閣は、国家公務員制度の企画立案や統一保持上必要な総合調整を行うなど、公務員制度の在り方に責任を持った取組みを実施。
○人事院など中央人事行政機関等について、それぞれの在り方を明確化した上で、組織、役割を抜本的に見直し。その際、中央人事行政機関等の役割を、事前かつ個別・詳細なチェックから、あらかじめ定めた明確な基準の下での遵守の事後チェックに転換。
(9)改革に向けた今後の取組み
○内閣官房主導の下での改革の取組みをより強固なものとするため、行政改革推進事務局における専門的な検討体制を強化。
○「基本設計」に基づき更に詳細な検討を行い、本年12月を目途に「公務員制度改革大綱(仮称)」を策定。その中で、改革に向けた法制化等の具体的な内容、平成17年度までの集中改革期間におけるスケジュール等を明確化。
○基本設計に基づき、勤務条件に関する制度改革の具体化に向けた更に詳細な検討を進める中で、引き続き労働基本権の制約の在り方との関係を十分検討。
○一般の行政職員以外の職員について、引き続きその職種の特性に応じて検討。
○地方公務員制度の改革について、地方自治の本旨に基づき、地方公務員の実情を十分勘案しつつ、国家公務員制度の抜本的改革に準じて検討。