国公労連・公務員制度改悪反対闘争本部に設置された課題別プロジェクト(国公労連本部と各単組本部役職員で構成)による政府・行革推進事務局との交渉・協議が行われています。今号では、10月3日に実施した新人事制度に関わっての交渉・協議の概要を掲載します。
10月3日、国公労連闘争本部の賃金・評価プロジェクトのメンバー10名が、行革推進事務局と新人事制度に関わって交渉・協議を実施しました。推進事務局は森永企画官ほか3名が対応しました。以下、交渉・協議の概要です。
▼推進事務局による説明の概要
【基本構造の性格】
○ まず「基本構造」の性格を説明しておきたい。大枠が事務局の考え方であって、基本設計が各省の共通認識であるが、基本設計では具体的に何も見えないという意見があり、同じ土俵で議論ができるように事務局の責任でまとめたものだ。図で描けるものは書いて、ちょっと入れた(加えた)ものもある(国公注:キャリアシステムの見直しなど?)。これをもとに10月中に示す原案に反映させていくために示した。自民党にも説明し、各省にも渡して意見をもらっており、中味を詰めているのが現状である。
【人事制度改革の必要性】
○ 「基本設計」では改革の必要性がわからないといわれていたので、整理してみた。現行の問題点として、能力と適性に基づいた任用が実施できていない。給与上のインセンティブに乏しい。人材育成を行う仕組みが整備されていないため、能力開発が十分に行われず、人を大切にしていなかった(任用、給与、評価がうまく機能していない)。
○ 制度が法令で細かく規制されているため、機能的に弾力的に動いていない面がある。
○ 新人事システムは能力等級を中心に職員を育成し給与を払い、評価していくトータルシステムであり、職員ひとりひとりの意識・行動改革に向け、目標や行動基準を定める(行動原理の改善)ものだ。
【新人事制度の趣旨】
○ 元々の公務員制度の基本的な目標である良質な行政サービスを効率的に提供する観点から、採用試験区分や年次にとらわれない真に能力本意の弾力的人事配置と能力・成果・職責を適切に反映し得る給与処遇を実現する。
○ 職員ひとりひとりに自らの使命を明確に認識させ、組織の目標及び職員の行動基準を定め、守った人が上に行く、これを個々の職員が職務行動を通じて実践する仕組みを設ける。
○ つまり、真に国民に向いた仕事をしたいという公務員の望みをかなえる仕組みにする。
【新人事制度の基本的な枠組み】
○ 制度の中心に役職段階に応じて職員に求める職務遂行能力基準を明確にした能力等級があって、任用だとか給与だとかとがその周りにある、能力等級を基礎としたトータルシステムとしての人事管理システムである。また、それらを支える組織目標・行動基準も明確化するし、組織目標を着実に達成することを目指した目標管理も行う。
【能力等級を中心とする任用・給与制度】
○ <能力等級について>
・ 8等級制は本省をイメージした例示であるが、具体的には固まっていない。例えば、課長と課長補佐では、それぞれ求められる能力が違う。地方機関もあり、地方支分部局ごとにも役職段階に応じて職務遂行能力基準を定めるが、なかなか難しい、これに同じレベルでの格付け(分類)は難しく、鋭意努力している。
・ 能力等級ごとに求められるものが異なる。能力等級ごとに行動基準を書く。適正な能力評価により昇格を決定する際の評価基準は、例えば、本省8級の職務遂行能力基準はこれこれというイメージを示してみた。表の右が能力項目で、左がその行動基準だ。
・ 人員枠の中で昇格していく。
○ <任用制度>
・ 「任用」は任用上の役職段階の整理だが、役職の上下は昇任・降任につながる。能力がなければ昇任できない。能力等級に定める職務遂行能力基準に基づいて役職段階に区分する。能力基準を任用基準として活用することにより、能力本意で適材適所の任用を推進する。
・ 本省の役職段階のイメージは表のとおりで、課長補佐といっても補佐や参事官などいろいろある。係長も主査だとかある、能力がなければ降任もある。
・ (弾力的な任用の確保)各等級の職務遂行能力(の要素)がすべて求められるわけでもない(課長と企画官の違いなど)。これにより、省令職とかにとらわれず、適材適所で弾力的な格付(弾力的な任用)けが可能だ。採用年次にとらわれずやっていく。能力のある人は若くても課長になれる。実質的な職務評価で格付けしたい。高度な専門的知識が要求されるスタッフポスト等については、期待される役割や成果に応じ、各府省において適切な評価に基づいて弾力的に役職段階に分類整理する。特定の専門知識を有していること等により上位の役職段階のポストの最適任者である場合等には、昇格を伴うことなく昇任させることもできる。
・ 昇任・降任と昇格・降格は分かれる。能力のある人しか昇任できない。しかし、あまりリジット(硬直的)にせず、専門官のように部下の管理をしないところもあり、場合によっては、適材適所で弾力的にやれるように考えている。高度な専門的知識が要求されるスタッフポストやその人しかできない特定の専門知識を有している人等は、昇格させずに昇任で対応する。また、3級係長でも、昇格を行わず高い仕事をさせたい(例えば外交交渉など)場合には、弾力的にできるようにしたい。
・ (管理職登用についての厳正な審査)管理職への昇任時は厳格な審査による。それは、課長は業務の組織管理権者として、本来、組織・業務管理やマネジメント能力が必要だが、公務は必ずしもそうなっていない問題を抱える。それが働きやすい職場にならない理由だという若手の意見もある。目標管理も評価もする(人事上の大きな役割を担う)。したがって、年次とかではこの制度は回らないので、厳正な審査を行う。そのイメージとして「委員会」や多面的評価を掲げた。変な管理職がいるのが一番の不幸だ。
○ 給与
・ 能力等級ごとに給与額の幅を決定する。能力給とは、職務遂行能力に対する給与で、各等級ごとに定額部分と加算部分がある。ここが一番苦闘しているところだ。係員だったら1・2級でというようになる。これは(能力というが)広い意味では、仕事で払っている。加算は昇給制度のことである。
・ 能力給は、基本的項目だが、定額+加算で上限があり(業績評価で差がでる)、加算部分は現行の昇給制度だ。真に業績が上がらない場合に昇給停止もありうる運用にできないか検討中(大部分は基準の最初の給与になる)。今のように持ち回りではなく、業績が上がった人は報われるように考えたい。
・ 職責給は課長と企画官(能力給は同じ)の違いなどに対応するが、特別調整額に近く、能力給を補完するものだ。ポストの業務の変動に応じて各省が困難度に応じて支払えるようにする。
・ 同じ課長でも法律改正にかかわっている課長は大変だが、そうでない課長は楽というような違いがあり、業務の困難度にきちんと対応できる制度にしたい。
・ 業績給は現行の特別給(期末・勤勉)と仕組みは同様だ。指定職も業績を反映した年俸制にする(今までは、何をやっても同じだった)。
・ 信賞必罰については、(昨年の)大綱に書かれたので、「どこにあるか」と問われれば、ここにあるということだ。
・ 総人件費については、基本設計と同じだ。
○ 評価制度
・ 評価については、フィードバックが大事なので、マニュアルを作ってやりたい。
・ 年内に案を作り、評価は来年から試行する。内閣官房など幾つかの省庁になる(制度官庁等)。評価が制度の基礎であり、これがうまく回らないと制度が動かない。動ける評価をまず作り、試行をやりたい。
○ 人材育成コース
・ 人材育成コースのイメージが分からないと各省から言われる。これは任用をしばるものではない。職員に育成プログラムを示し、能力を伸ばすということで話し合ってほしい(例:会計畑でやるなら会計研修を受け、出先の該当部署も経験してもらうなどと、主体的能力開発と一体で、専門領域を決めていけるようにしたい)。自分の頑張る目標を示す。
・ キャリアシステムについての批判は多い。育成コースにのせ、途中段階でだめなものは外す。これまでのように一律に課長までいけるというのはおかしい。せいぜい補佐まではいくにしても、地方の課長を早くやったりする。
・ 具体案はといわれると示せないことは認めざるをえない。何ら具体性はないじゃないかという批判は甘んじて受ける。今やってますということだ。ただ、今までのようなキャリアシステムでよいとは思わないので見直しをしたい。
○ 組織目標・行動基準
・ 我が省は何のために存在しているか。組織目標を制定してほしいということだ。基本設計までは、「業務遂行規範」だ。地方機関でも組織目標がないということはないと思う。
・ 目標管理は予算を残すのがよいか、使い切るのがよいかというようなことではなく、組織目標を明示する。目標の定め方は様々あり、どのレベルで定めるかもいろいろある。何のために公務員としてやっているかということを当人が認識するようにしてくれと、そこをはっきりさせる。倫理法のようなべからず集ではない。
・ 行動基準は抽象的でなく、具体的な行動指針として個々の公務員に示せないかということで書いたものだ。「省庁共通のもの」と「省独自のもの」、「会計担当者のもの」などが考えられる。これらを評価のときに、一つのものさしとして使う。
○ 目標管理
・ 業績管理と目標管理:上司と部下の話し合いで合意し、達成度を評価する。ちゃんと達成されたら評価する。取り締まり件数やノルマなど変にやると逆効果になる。行政の存在意義に照らして正しい目標を設定しなければならない。自分で決めた目標があればやりやすい。やりがいのあるものにしたい。
▼質疑応答:質問に対する回答
○ 基本設計の対象は行政職20万人(出先、離島に勤務する職員も行政職には含まれる)であり、地方公務員などは頭にない。霞が関のことばかりという批判は認識している。他の職種については、来年から検討する。個々の職員が一生懸命やれば評価され、その努力が報われる人事管理や役所に入った当時の志がすり切れないようなものを目指す。
○ 改革の必要性は現行制度の問題点にある。これは地方を含めた共通の問題と認識している。行革大綱は政治中心であり、今の公務員が「身分保障に安住している」というような認識は事務局にはない。ただ、本当にだめな人や是正しようとしてもどうしようもない人がいる場合に、基準を作って処遇したい、そういう手続きをはっきりさせたいということだ。どこの管理職にも変な人が一人や二人いて、部下がやる気をなくしたという声もある。
○ 職階制、任用基準、昇任試験があれば別だが、それがないので、各省の人事運用が年次別管理となっている。それをシステム化し、合理的な選抜をできるようにしたい。
○ 仕事は決して無視してない、能力(抽象的)ではなく、それを発揮し、仕事をして評価される。チームでやっているものは、その成果を均等化することになる。チームとして評価する。給与は最後は個人にしか払えないので、相対関係で判断することになる。
○ 地方機関が悪くならないようにやりたい。悪くなれば何のためにやったのかということになる。
○ 人事院の事前規制は、級別定数や昇格の個別承認など(選考採用の承認、課長級の審査)が代表例だが、休職処分の延長などもあり、件数は多い。代表的な例は、提示可能かもしれない。
○ 標準職務表と能力等級との関係は、どう当てはめるか苦労している。省、機関、足の長さなどもある。現在の級の分布を無視しては作れない。級の配分をもとにやれば、自動的に今の標準職務表が反映する面がある。例示は8つだが、ある程度似たものになろう。8つの括りが係員級、係長級、補佐級、課長級の倍数になるという指摘はそのとおりだ。
○ 一度決めた後は、各省が責任をもって人事管理の趣旨をふまえて変更できるようになるだろう。横断的な能力等級を定めるが、各職名は各省の判断で並べるだろう。(全省庁横断的な格付けはとの質問に)職名だけでは整理できない。(会計課長がA省とB省で格付けが異なることも)ありうる。能力が求められるポストであるかどうかで判断することだから。
○ 職務遂行能力の基準は、各省の共通事項であり法令で定めるが、各省が独自にもつ部分もある。それを決めるのは各省だ。最低限の機能が働くようにはしたい。(昇任の基準も各省まかせか、との質問に)能力基準はその一部みたいなもの。能力基準を満たせば昇任できるから。(下位の能力評価で上位の能力が証明できるか、との質問には)そのように推定できる。そうしないと能力基準は降格の基準にしか使えないことになってしまう。
○ 能力等級の人員枠の決定方法はまだ決まっていない。
○ 「情勢適応」による人件費管理の記述は、ベアの有無について、何らかの仕組みを作らないと公平感がなくなるために書いた。人件費管理の中で公務員が不利になる仕組みを作るつもりはない。
○ (加算額で差をつけることについて)加算額は差をつけることが目的ではなく、全員がやる気をなくして寝てしまうことのないよう、目的を見失ってはならないということで、みんなが気持ちよく働けるようにすることが目的だ。
○ 目標は意識、行動、改善の目的のため。業績評価で差別的なことはできないようにしたい。できるだけ定数化できればよいが、目的逸脱はだめ。
○ (能力評価は運用により差別のきわみになるのではないか。労働組合の関与はどうなるのかについて)恣意的に差が付けられた大変だが、フィードバックする仕組みを考えている。労働組合の関与は、労働基本権の問題が絡んでおり答えずらい。
○ 賃金決定の仕組みや統一基準の決定方法はいま努力している。次回はちゃんとできるようにしたい。以上
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