2001年10月11日《No.42》
官民交流・再就職に関わって推進事務局と交渉・協議
 「官民交流」は効率化のみ追求
   「退職管理」は重大な方針変更
     「再就職」は「天下り」自由化

 国公労連は、10月4日、公務員制度改革をめぐる内閣官房行革推進事務局との「交渉・協議」の第2弾として、9月20日に提示のあった「官民交流及び再就職についての考え方(案)」を中心に行革推進事務局側の考え方を追及しました。これには国公労連から山瀬副委員長をはじめ闘争本部「天下りプロジェクト」メンバーほか8名が参加し、行革推進事務局側から松浦企画官、堀江企画官、古田企画官らが対応しました。今回の「交渉・協議」をめぐる経過のあらましは次のとおりです。

□■ 説明概要 ■□

 まず、行革推進事務局の松浦企画官が、「官民交流」関係を中心に要旨次のとおり説明しました。

 【松浦企画官説明】
 1 改革の視点
 官民交流及び再就職に共通する改革の視点として、複雑多様化する内外の政策、課題に適切に対処していくには、公務部門でもそれに対応しうる能力を有する最適な人材の確保を目指す必要がある。
 一方、従来、公務部門においては、公務の独自性や中立性を強調するあまり、人材の確保・活用において硬直的・閉鎖的になっている実態があり、官民の人的交流についても過度に厳格な規制・運用が行われてきたところである。
 今後、公務員制度の見直しを行っていくに当たっては、各人事管理権者が、人材の確保・育成・活用の戦略を機動的・効果的に立案・実施できるようにすることが重要であり、官民の人的交流についても、公正・透明な行政への信頼を確保しつつ積極的に推進することが必要がある。

 2 官民交流についての基本的考え方
 1)官民交流のあり方
 現在、官民交流に関する制度として、中途採用制度、官民人事交流制度、任期付職員採用制度等があるが、(1)専門的分野での政策企画立案能力の向上、(2)民間の業務遂行の発想を取り入れた行政の効率化、(3)即戦力の確保、など民間人材の積極的な確保・活用及び公務員の民間企業への派遣を積極的に推進していく必要がある。従来から行政部門について指摘されている硬直性や閉鎖性の改善のためにも必要である。
 2)官民交流についての検討の方向性及び検討課題
 (1) 官民交流の主な制約要因として考えられるものは、【公務側】として、○従来の人事慣行これは、横並びや順送り人事のことだがそれへの安住、公務と民間の業務は本質的に異なるとの過剰な意識等により、民間人材を活用する必要性等についての意識が欠如しているのではないか。○民間からの採用が、例えば任期付で高い処遇で採用した場合とかで、元々いるプロパー職員の処遇や士気の低下につながるのではないかとの懸念がある。○人事院の事前承認・協議手続きなど、手続きが煩雑である。
 また、【民間側】として、○民間企業を退職しなければならないことになっているから雇用保険や企業年金、退職金が通算されないこと、給与が下がるケースもあるなどの処遇上の不利益が発生する。○応募時点で業務内容等が明確にされていない、個人から採用するというよりも組織主導の派遣により採用者の意志と仕事内容とのミスマッチ、民間企業にとって魅力が少ないことなどから応募に対するモティベーションが不足している。
 (2) 検討の方向性及び検討課題としては、○公務に必要な人材を適時適切に採用できるよう、さらには、現行の硬直性を改善するため、人材交流のあり方について再整理するとともに制度・運用を全般的に見直していく。○現実に官民交流の制約要因となっている事項の解消のため、公務員と民間企業職員との身分の併有を認めて、雇用保険、企業年金等が繋がるようにする。公募制の活用等を積極的に推進・促進する。人事院の事前承認・協議手続きの見直しを行う。各府省の意識改革のための方策を講じるとともに、公務での経験が民間企業での評価されるよう交流効果のPRなど周辺環境の整備をしていく。

 続いて、行革推進事務局の堀江企画官が、退職管理を含む「再就職」関係を中心に要旨次のとおり説明しました。
 【堀江企画官説明部分】
 3 再就職についての基本的考え方
(1)退職管理のあり方については、任用・給与・育成・採用・退職手当など人事制度全般の改革の課題をふまえつつ、○年齢や採用年次にとらわれない人材活用と働きに応じた適正な処遇を実現するため、退職勧奨を含む人事管理施策を適切に実施できるようにすることが必要である。○現行の定年年齢(60歳)の延長については、高齢社会の中で、現下の厳しい雇用情勢や民間企業の定年制の動向等を踏まえつつ中長期的に検討すべき課題であるが、不必要な人員の抱え込みになったり、年功に伴って仕事に見合わない高い給与の支給となれば国民の納得は得られない。
(2)再就職規制等についての検討の方向性及び検討課題については、○事前・事後のチェックを通じた総合的な総合的な適正化を図る仕組みを実現していく。その検討にあたっては、○国民の信頼確保の観点から特に以下のような点に留意していく。大臣承認制、行為規制、公表制度の導入という三つの制度で合理的でなければならず、全体として厳格、合理的で透明性のあるパッケージとする観点から、それぞれの制度の適切な役割分担(対象範囲等)について検討する。公表制度によって再就職状況全般の透明性の格段の向上を図ることももちろん必要だ。○公務部内で個々人の能力を最大限に活かす方策を講じつつ、真に個人の能力を活用した再就職については、考え方を変えて、これを支援する方向に転換する。再就職規制等の「等」とは公募制をさすが、能力ある人材の社会的有効活用の観点に留意するとともに、再就職支援方策(能力開発支援、人材バンク等)の充実を図る。働きに応じた処遇が必要であり、退職勧奨は止めるべきだとは考えていない。

□■ 質疑応答 ■□

 以上の説明を受けて、冒頭、山瀬副委員長が「今回、能力等級制度を中心とする『新人事制度の基本構造(議論のたたき台)』とセットで出された『官民交流及び再就職についての考え方(案)』は、先の『基本設計』と比べて退職管理に関する新しい部分もあるが、全体を通じて『基本設計』をなぞった部分が目立つ」と指摘した後、国公労連として以下の点を追及しました(●は行革推進事務局の回答内容)。

 【官民交流関係】
 (1) 「官民交流のあり方」にかかわって、「民間の業務遂行の発想」を取り入れるとか、公務は硬直的・閉鎖的なので民間から人材を入れないとダメだとか書いているが、こうした問題意識はどこから来ているのか。また、官民交流の主な制約要因として、民間企業にとって官民交流のメリットは余りないとしているが、今の実態をふまえたものなのか。そもそも官民交流は専門的分野から徐々に導入され、官民の垣根がどんどん下がってきたが、こうした民間を賛美し公務を卑下するような発想で果たしていいのか。
 ● 基本的な考え方として、民間が優れ公務が劣っているというコンセプトを持っているわけではない。「民間の発想」云々は官民人事交流法でも書いており、民間の効率的な手法を忘れてはならない。「お役所仕事」といわれるように国民からみて閉鎖的で非能率的と思われているのは否めない。だから、それを改革するために書いているので、国民から批判されていることは素直に書いている。しかし、公務の違いもあり、行政の公平性の確保は当然である。こうした違いをふまえ、民間の優れたところを取り入れ、公務をより良くするというスタンスである。
 (2) 「検討方向及び検討課題」にかかわって、中途採用制度、官民人事交流制度、任期付職員採用制度という現行3制度を再整理して「制度・運用の全般的な見直し」を行うとしているが、その具体的な検討方向とは何か。また、現行3制度の状況に対する評価はどうなっているのか。
 ● 現行の官民交流に関する3制度については、そんなに長い年月はたっていないが、それなりの実績を上げている。しかし、全体として必ずしも人数が多い訳ではない。より進めるためにはどういうことをすれば良いのか、やろうとする上での問題点をまとめた。
 (3) 官民交流の制約要因に対する「処遇面での不利益の解消方策」として、雇用保険、企業年金等の通算を可能とする措置など、公務員と民間企業職員との身分の併有についての法制的検討を含めて検討するとしているが、その具体的な検討状況どうか。また、そのタイムテーブルはどうなっているのか。
 ● 年金などをどうするかはまだ結論が出ておらず、スケジュールについても部内の検討に止まっている。法制的な検討については、内閣法制局に相談に行っている程度で、それから先には進んでいない。
 (4) 「人事院の事前承認・協議手続き」について、「基本設計」で「廃止」となっていたのが、今回は「見直し」となっており、その意味するところは何か。
 ● 人事院による事前承認とか協議とかの垣根を低くするということで、チェックをなくすということではないが、基本設計の姿勢を変えたとは思っていない。行政の公平性の確保とかの配慮は当然いるわけで、手続き面の簡素化も含めて検討を進めている。
 (5) 「基本設計」では「給与格付けや退職手当の算定方式の見直し」に触れていたが、今回の検討内容にその記述がないのはなぜか。
 ● これで全ての検討課題を網羅しているわけではない。給与をはじめ全体的な検討作業の中で位置づけられるものと考えている。
 (6) 官民交流を促進することで生じるデメリットについて検討したのか。特定の企業に情報が流れるなど、公務の公平性、中立性が阻害されるというデメリットをどう考えるのか。公務としての基本はないのか。
 ● 公務の中立性・公平性が阻害されてよいとは誰も思っていない。
 (7) そうしたことが起きないよう、弊害を除去するために制度を作るのではないのか。それらの危惧があることは書かず、逆に「民間からの採用がプロパー職員の処遇や士気の低下につながるのではないかとの懸念」などと書くと、公務員はみんなこんな奴らばかりだとならないか。
 ● 制度を作るには当然そんなところに配慮しないといけないが、変えるべきところを集中して書いているのであって、原則的には公平性、中立性の確保云々と書くのであり、それを否定するものではない。

 【再就職関係】
 (1) 「退職管理のあり方」にかかわって、退職勧奨を止めないとあるが、国民の「天下り」批判もあって、公務で定年まで働けるようにする方向でこれまで進められてきた方針を変えるのか。また、定年年齢についても、政府・公務員制度調査会の基本答申などで定年延長も展望してとあったが、今後は公務部内であまり抱え込むなというように受け止めるがどうか。現行の新再任用制度についても触れていないが、どのような認識か。
 ● これまでも退職勧奨を止めるとは言っておらず、そういう意味では考え方は変わっていない。年齢や採用年次にとらわれない人材活用と、働きに応じた適正な処遇をしようという基本的な考え方を書いたもので、基本設計と変わるものではない。60歳定年制の延長については、どう考えるのかということを今回書いただけだ。不必要な人員の抱え込みや仕事に見合わない高い給与の支給とならないことは、国民から見ても同じではないか。新再任用制度の考え方は変わっておらず、きちんとやることに変わりはない。
 (2) 公務内での抱かえ込みから公務外への放出という感が強く、能力なき者は公務から去れということか。公務のライフサイクルをどう考えているのか。
 ● 高齢社会をふまえた働き方の考えは変わっていない。ただ、人材の流動化は、これまでも発想がなかったとはいわないが、それが大きくなった。人材の計画的育成・能力開発の推進をいっているように、育てもしないでそんなことを言うつもりはない。
 (3) 再就職規制等の「検討方向及び検討課題」にかかわって、再就職規制等の対象が曖昧だが、営利企業と特殊法人・認可法人・公益法人を含めての内容か。「天下り禁止」を求める国民の声や私たちの要求をなぜ受け止めないのか。
 ● この文章では民間の営利企業を中心に書いている。それから、「天下り」にかかわって、大臣承認制に批判あることは十分受け止めている。大臣承認については、大枠ではじめて入れられたものであり、各省で責任を持って人事管理をキチンとやらなければならない。事前に広範にチェックするのではなく、事後的にやるべきものがあるのではないか。この文書にもあるように、承認基準を明確にして大臣が恣意的に行えないような厳格なものとし、第三者によるチェックもするようにして、国民の信頼が確保できるよう検討しようということである。
 (4) 「基本設計」では「なお書き」として「第三者の立場からの関与のあり方についてけ検討」となっていたが、今回は「第三者によるチェックの仕組みについて検討」するとしていることの意味はなにか。その具体的なイメージはどうか。
 ● そのイメージはまだできていない。

 【その他関係】
 (1) 退職手当制度の「見直し」問題はどこまで検討が進んでいるのか。
 ● 退職手当の問題は、特殊法人改革との関係でいろいろ言われており、その中で先に議論されていくのではないか。また、公務に長くいれば得だとかはという話は、国民から理解されないのではないか。給与制度と併せて考えないと、そこだけ独立してこうだとはならない。今この瞬間にこんなことを考えているというものはなく、今後給与制度と併せて考えていくことになる。
 (2) 「大綱」策定にむけて、官民交流及び再就職に関する部分の検討スケジュールを改めて聞きいておきたい。
 ● 大綱までにどれだけ検討が進むかであり、今後のスケジュールがあるわけではない。

以上


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