本日、政府・行革推進事務局は、「行政職に関する新人事制度の原案」を明らかにしました。同事務局は、この「原案」は、9月20日、同事務局が国公労連などに提示した「新人事制度の基本構造」に対する各府省及び国公労連などの「意見」をふまえて、12月中旬に予定している「公務員制度改革の大綱(仮称)」を固めるための「議論の素材」であり、「大綱の基本」となる文書だとしています。
国公労連は、6月にジュネーブで開催されたILO総会で、日本政府が、公務員制度改革にかかわる労使協議を明言したことも受け、6月末に政府・行革推進本部が決定した「公務員制度改革の基本設計」が、労働条件問題での使用者・政府の「正式提案」であることを推進事務局との間で確認した上で、9月段階からの「交渉・協議」をおこなってきました。
1月余りの間の「交渉・協議」は延べ12回に及んでいます。この間の「交渉・協議」で明らかになってきていることは、(1)能力・業績反映の人事管理を全府省で貫徹することを最大の目標に、能力等級制度と「新評価制度」を中心においた任用、給与、分限、人材育成などの「内容」が、職場の人事運用の実態やその問題点の検討も抜きに「白紙」から検討されていること、(2)各府省の人事管理権限の拡大が「至上命題」とされ、そのこととの関係で人事院の「代償機能」権限の縮小が検討されながら、労働基本権については現行の「交渉権」以上には拡大しない方向での検討姿勢を強めていること、(3)能力等級制度の「役職段階の括り」や制度の内容、本省課長補佐段階までを対象とする本府省幹部候補職員集中育成制度で1種試験採用者を「当然」の対象としていることなどに示されるように、「キャリア特権」人事の制度化を公然と打ちだしてきていること、(4)人事管理に直接かかわる制度検討が進む一方で、長時間過密労働の縮減など「働くルール」にかかわる制度検討などは大きく立ち遅れていること、などの点です。総じて、国公労連の要求にはまともにこたえず、「基本設計」の具体化を強引にすすめようとしているのが現状です。
労働組合として特に見過ごせないことは、給与制度改革の内容が、公務員給与の水準決定やその配分とも言える各給与費目などの「基準」づくり、級別定数にかわる各級の「人員枠」を誰がどのような手続きで決定するのかを全く明らかにしないままに、各府省の給与決定にかかわる権限拡大のみが検討されていることです。現状の制度でも、人事院勧告によって大きく制限されている労働基本権はそのままに、「代償機能」の形骸化をおこなおうとする、憲法第28条にも抵触する「ルール無視」の検討がすすめられています。
また、本日の「原案」では、本府省の課長補佐、係長を対象とする「本省勤務手当(仮称)」の新設や、配偶者に係る扶養手当のあり方検討にもふれ、給与制度の全般にわたって現行制度の「大改革」をおこなおうとしていることがさらに明確になりました。このような、労働条件の大幅変更を使用者・政府が一方的におこない、その具体化のための法案作成に突き進むこと自体が、公務員労働者に対する人権侵犯であり、到底許されるものではありません。
制度改革の内容にかかわって、公務員労働者の労働基本権をどう扱うのか、そして、労働条件の大幅変更を労働組合との「合意」もないままに使用者・政府が一方的に決定することを許すのか、この2点が、「大綱」決定期の最大の争点になっています。
国公労連は、推進事務局との「交渉・協議」もふまえ、11月6日の中央闘争委員会で、最大限の大衆行動を背景に、(1)各府省の人事管理権限を拡大しながら労働基本権には「いっさい手をつけない」という改革内容の決定は許さない、(2)労働条件の大幅変更を使用者・政府が一方的に決定することに断固反対、の2点を闘争課題に、「大綱」決定にむけた、たたかいの強化を確認しました。
具体的には、(1)11月段階での「職場学習」、「当局追及」などを11月19日の週の第3波全国統一行動を基軸に強化すること、(2)11月30日の第3次中央行動を、国公労連として、5000名結集を目標に最低でも3000名以上が結集する行動として成功をめざすこと、(3)11月17日からの行政相談活動の全国的展開や、12月初旬の緊急宣伝行動などを通じた国民への働きかけを強めること、(4)「大綱決定期」の最重要時期には、職場の怒りとたたかう意思を内外に示す「全員結集の退庁時職場集会」を追求すること、などです。また、政党、マスコミ要請など、できる限りの取り組みをこの時期に集中することも確認しました。
いま、小泉内閣がすすめる「聖域なき構造改革」路線のもとで、憲法が定める基本的人権を意図的に軽視し、政府・財界にとって都合の良い方向への改革が相次いで強行されています。5.3%にも達する完全失業率のもとで、雇用不安、将来不安を高める労働者・国民に、追い打ちをかける医療保険制度改悪やリストラ支援の諸制度づくりなどは、その代表例です。また、同時多発テロを最大限利用して、憲法が否定する集団的自衛権に踏みこむテロ特措法の成立が強行されたことは、この国の政治が、国民の意思や法治国家の原則をもふみにじる極めて危険な領域に踏み込みはじめていることを示しています。
そのようなルール無視の政府の姿勢は、公務員制度改革でも共通しています。一部の特権官僚の処遇改善のために、労働者の基本的人権をふみにじり、国家公務員はもとより地方公務員などもふくめた750万労働者に、能力・業績を口実とした労働条件の改悪を使用者が一方的におしつける「改革」を黙って通すわけにはいきません。
全国の国公労働者のみなさん、いまこそ、労働者の最大の力である団結と連帯を固め、使用者・政府による人権蹂躙、労働条件改悪を許さないたたかいに、職場・地域から決起しましょう。
2001年11月6日
日本国家公務員労働組合連合会中央執行委員会