国公労連は、11月16日、新人事制度の「原案」の内容に関わって、政府・行革推進事務局と交渉を行いました。交渉には、小田川書記長を責任者に国公労連闘争本部の賃金・評価プロジェクトのメンバー11名が参加し、推進事務局側は高原参事官ほか4名が対応しました。
冒頭、小田川書記長は、「『大綱』に向けての出発点として、改めていくつかの質問を行う。『原案』の性格については前回の交渉で聞いたのでそれを前提として、内容について改めて聞きたい」と切り出し、それぞれの課題に関わって、以下のやりとりがかわされました。(※○は国公労連、●は推進事務局側)
1 能力等級
○ 基本構造では、「能力等級に定める職務遂行能力基準をふまえ、各官職の職務内容を実質的に評価し大括りの役職段階に分類整理」としていた。原案の(2)2「能力等級表の構造」にある「一定の基準」とは職務遂行能力基準をさしているのか。
● 個別の職名を各基本職位に分類するときの基準には、まず代表職名がある、それと組織・職務遂行能力基準が一定の基準の基本だ。係長と名が付いているのに補佐の基本職位はダメということも最低限としてある。これは6級補佐だ7級補佐だと分類せず、6級か7級かは個々の能力で人員枠の範囲内で格付けする。
○ 人員枠の振り分けは誰が行うのか。
● 能力等級毎に定めるが、人員枠の枠の決定方についてはまだ提示していない。現在、内部の詰めを行っており改めて提示したい。大変重要なことなので慎重に検討している。
○ 基本職位に応じた職務の分類を最終的に決定するのは誰か。その際の一定の基準との整合性はどうなるのか。誰がチェックするのか。
● 原案では、各府省が(一定の基準に従って)適切に分類するとある。各府省の判断で行っていくことになるが、どういうシステムにするのか、どういうチェックをするのかは、全体的なシステムにかかわるので現在検討中だ。
○ 人員枠を誰が決めるのか、チェックに関わって第三者機関はや労働組合どう絡むのかが決まらなければこれ以上議論がを進まない。
職務遂行能力等級基準は、職務分類や各等級への個々人の格付の基準であり、賃金配分・労働条件そのものではないか。
● 労働基本権に関わって、能力等級が労働条件に関わるかはキチンと整理したい。公務員制度自体大幅に変わるから、今度の新しい制度の中で何が労働条件に関わることなのか改めて整理して示したい。
労働基本権との関係で、権利に制約があるということで、第三者機関の関与の仕方がる。今度の制度では基本権の制約を今のままで行くのかは分からないが、(基本権の制約を)どう変えるかで制度の仕組みが変わる。
○ 今でも級別定数は人事院が設定しているが、それは現状の仕組みのなかで言えば賃金配分の大事な要素の一つだ。賃金配分の仕組みがどのようになるのか。
● 人勧などの賃金水準は労働条件の重要な要素だ。基本設計で書いているように人事院の級別定数管理などは廃止する。仮に、基本権を制約したままなら第三者機関の関与はどうなるのかなど、いろいろと制度を検討する必要がある。能力等級をはじめ様々なことについて労働条件性があるのかないのか検討している。
○ 以前の交渉で機関間格差を持ち込むのかと質したが、今回9級制が提案されており、代表職務の課長職について組織段階毎に1級の差をつけたのはなぜか。
● 本省、管区、府県単位、出張所と組織毎に必要とされる能力の程度が違う、職務が違うので全く同じ等級ということは考えられないので、1級の差が付くぐらいではとイメージしている。
○ 専門官や専門職はどういう位置づけになるのか。
● そこがポイントである。いわゆる専門職制度については、今の標準職務表では1つ程度しか位置づけられていないが、今回はどういう職務内容で、どういう能力が必要かなど、ライン職は簡単に基本職位に当てはまるが、スタッフ職は能力基準に照らしてこれはこのランクの評価にと当てはめる。その結果、今までは係長レベルだったが、キチンと評価したらこんな仕事もしていたのかとなって高く評価し直すこともあり整理し直す。
○ その整理の手順はどうなるのか。どう評価するかは各府省で決めて良いるのか。
● 各府省の判断で行うことになる。基本は、各府省共通の能力基準を決めるが、専門官等のスタッフ職はこの基準だけでは判断が難しいので、専門官なら専門官の基準は、先にふれた「一定の基準」の下、各府省で決めて良い。
ただ、全く今のままと言うわけではないが、今の位置づけがいい加減だということはないはすだから、今の位置づけを前提にすることになる。等級が違うし、能力評価をし直すことになる。洗い直しも出てくるし、出入りがあるはずだ。
○ 組織段階を4区分に分けているが、これに納まらない例えば国土交通省の工事事務所など、だれがどう決めるのか。
● 原案の2Pの組織段階にあるとおり、一定の基準に従って、工事事務所のように府県単位に当てはまらないものは、個々の事務所の仕事(業務内容)や組織体制を見て適切に分類する。地方の事務所の並びがあるだろうし、出先でもいろいろな仕事を行っていだろう。キチンと実質的に見ると能力として府県単位と同じ能力が必要ならその格付をすることになる。
○ その分類は誰が行うのか。
● 基本は各府省の判断で行っていただく。それをどうキチンと行わせるための制度は検討中であり今は言えない。
○ 基本構造では「8等級」とイメージしていた等級数を「9等級程度」に変更したのは、どこが納まりきれなかったのか。
● 基本構造の段階では、組織段階のAしかなかった。本省と地方の人事交流もあり、統一的なセットとして納まりよくするには3〜5級で1つ増やすのが良いのではとなった。
○ 9級「程度」としているのは、9級を前提に各府省がおこなうことも可能と考えているのか、9級を10級に持っていこうということなのか。
● 前者である。労働基本権を返すことになれば各府省が決めることになるだろう。今の基本権の枠組みを前提とするならば、各省バラバラでは大変なので統一の等級を定めておかないといけないということで9級程度とした。また、皆さんの意見も聞いてからということで、決めきりにしていない。
○ 交渉・協議の対象ということか。
● 否定はしない。
2 任用・分限
○ 原案のP6にある「意による降格、降任」とはどういうことか。自分から降りたいということを制度化するのか。
● そのとおりだ。事情があって地方に帰りたいとか、今でもない訳ではない。降任・降格は不利益処分だから、それを制度化してキチンとする。
ただ、全く自由に勝手気ままにというわけにはいかない。俺はもう管理職はいやだということを全部聞いていたら大変だから、やむを得ない事情がある場合はということをキチンと制度化しようと考えている。
○ 「特例的昇任」にかかわって、下位の等級で特例的昇任をおこなう場合の能力給との関係を明らかにされたい。
● 例えば、7級の補佐を能力等級は変わらないので当然給与も変わらないままに課長職に就けることになるが、課長職としての職責があるので職責給は当然上がる。
○ その逆の、上位の等級で下位の職位にある職務に就く場合とは。
● 8級の能力等級で7級の補佐という場合だが、補佐職だが8級の仕事をやっているという場合の特例として設けた。
○ 原案のP7(4)Cの例にある「複数の機関に属する職務で」職務分類の修正をおこなうことなく、上位の等級のものを就ける場合の「手続き」はどのように考えているのか。
● 課長として同じ分類で関東や近畿の課長とその他の地方の課長の大変さが違う中で、1つの級でくくるなら厳しいので、ここのところを読んで基本職位は変えないで対応する級を変えるのもあって良いだろうということだ。これは特例として設けた。専門官等でもあり得るし、職務の中身をよく見たら上席専門官の職務だったということもあるだろう。そこは各府省にしっかり見てもらうことになる。
○ 免職基準で、「能力にふさわしい適切な職務が認められない場合」とはどういうことか。
● 免職とは退場してもらうことだ。日本全国のポストを探してもどこにも行くところがないではなく、その管理者が努力する範囲内でポストがないなら退場していただくことになる。
○ 原案P9の(参考)1dの職務がなくなった場合に免職できるとするのはなぜか。能力等級制のもとで、個々のポストがなくなったとしても当該職員を免職できるのか。
● 定員がなければ仕方がない。枠がどうこうではないのでは。
○ この前の中央省庁再編で多くの課長ポストがなくなったときと同じだ。職がなくなっても能力等級で位置づけられている者を免職できるのか。
これは整理解雇基準なのだから厳密に議論しないといけない。能力等級制度に変わっても、今までどおりポストがなくなれば解雇と言い切れるのか。個別の職務ではないのではないか。
● 今の制度は、ポストがなくなると他に回すところもないとなると辞めてもらうことになる。今度の能力等級制度でも仕事がなくなれば辞めてもらうことになる。
○ 今提案されているのは、個別の職務ではなく能力等級制度を前提とした任用・分限だ。職務と能力の関係を見直さないで良いはずがない。
○ 不利益処分についての救済の仕組みはどのように考えているのか。見た限りではどのように仕組むのかハッキリしない。現行の公平制度を考えているのか。
● 新な評価制度が入ると個別の紛争が多くなると考えられる。評価の苦情は各府省で処理してもらう。それと公務員の権利に絡関わる免職・降任などの不利益変更の救済問題をどうするかは、全体の人事制度の機能の中で議論している。
○ 処分の選択権は人事管理権者が持つのか。
● 個々にはそうだ。免職と降格の基準についてはこれまで1つだったが、今度は個々に分ける。免職は降任や配置換などをしてもダメな場合ですと、しかし降格はここが違いますと明確にしたい。
3 評価制度
○ 各省の意見はどう取り扱うのか。評価制度の試行などどうするのか。
● 今、各省から意見を聞いている。修正すべきところは修正していく。評価そのものは速やかに実施していきたい。
○ 評価そのものは、労働条件になり得る。評価制度については、「原案」が示している評価基準、フィードバックなどの透明性確保の仕組み、評価者訓練・苦情処理など周辺システム、何れもが、任用、給与反映の「大きさ」に照らして極めて不十分と言わざるをえない。このまま「確定」することはもとより、現段階では「試行」についても賛成できない。少なくとも、この前(10月29日)も賃金への反映は行わないようにとの申し入れたをしが、賃金への反映は外すべぎだ。
4 交渉・協議の進め方
○ 給与制度にかかわる検討内容は、労働条件の変更そのものである。現段階では、新給与制度の枠組みしか提示されておらず、しかもあらたな制度での決定システムは全く明らかにしていない。議論を進めるには極めて不十分な内容と言わざるをえない。民間で言えば、労働協約の変更にあたる問題だ。このままの検討状況で決まるとすると合意できないところが沢山ある。質問にも答えていない、人員枠や労働基本権もそうだ。
● 人員枠だとか労働基本権についてはまだ示していないので、早く示すべきだという意見は分かるが、私どもは政府なので、国民の代表である与党の連携の下、一緒に検討しないといけない。それが議会制民主主義というものである。残されたところは早く決めるように努力している。
○ 労働条件については交渉・協議すると言ってきたではないか。残された部分も交渉協議の素材ではないか。
● ILOの場で日本国政府として答えたように、職員団体と誠実に交渉・協議をしていく。
○ 誠実に交渉協議をするというからには中身の議論が大切だ。使用者・政府として中身をキチンと提示しないと検討できないではないではないか。これ以上何を議論するのか。
● 交渉・協議の性格論だが、国公法108条の5(交渉)の規程について、人事院との関係をどう位置づけるのかもあが、合意が不可欠だと考えているのか。
○ そうだ、合意が前提だ。国営企業でもそうだが、賃金の水準が確定した後の配分は労使で協議する。非現業の国家公務員は、配分などその基準も含めて人事院が代償として勧告してきたのであって、今度の改革では、配分基準の変更を政府・使用者として進めようというのだから、協約締結権まで視野に入れた交渉・協議は当然だ。
● 人事院の代償機能は、労働協約の締結機能がないから設けられているので、今の108条の5があっても、最後は人事院の代償機能で担保されるという理解ではないのか。
人事院と皆さんが会見することを否定しないし、人事院は意見の申出を担保されている。
○ 推進事務局の交渉・協議の位置づけを聞いているのだ。ただ意見交換をして済むとはならないはずだ。
● こちらの説明が不十分なところもあるが、お互いに中身を議論して理解し合うことだが、合意がないといけないということか。我々は現行法の枠内で議論しているつもりだ。
○ 現行法では、今の進め方はどうなるのか。そして、労働条件が含まれるところも含めて交渉・協議を進めた結果がどんなことになるのか逆に聞きたい。
● 他の団体もあるし、各省の意見もあるし、そして皆さんの意見もある。
○ 最終的なものができ上がってその際に大きな意見の違いがあったとなると、俗に言う紛争状態になったとしたらどうするのか。
● それは、法律論としてはさっき言ったとおりだが、なるべく誠意を持って話をしたいし、これまでの説明が悪いと思うが理解を求めたい。誠意を持って対応したいと思っている。
○ 例えば、本省勤務手当のようなものを実際に動かすにはどうするのか。
● それが実際に動き出すには法律が必要だ。法律を国会に提出するために法案を閣議決定するが、それも最終段階ではない。決定となれば国会での法の成立だ。
○ 我々も勤務条件法定主義は承知している。法律が完成するということではそうだが、過程が大切だ。使用者たる政府としてどうするのかだ。
● 大綱の性格論になるが、大綱をどうやって決めるのかだが、中身やどこまでやるかはまだ未定である。中身についてはいろいろなところとやっているが、大綱の性格や閣議決定になるのかどうか未定だ。基本設計も行革推進本部決定だった。大綱は閣議決定だろうと言われているが、どうするかはまだ決まっていない。
行革推進本部で決定したということもあるが、手当の新設は基本的に法律事項になる。行革推進本部でどうこうするとはならない。法案を閣議に出さないとできない。
○ だからこそ、労働組合と労働条件について交渉・協議しているのだろう。労働組合との合意もないままに、閣議決定で交渉は終わりということにはならない。
● 現在の法律では、合意が前提とされていない。我々は現行国公法の下で生きている。そこは法律を国会に提出して国会議員が決めるのでしょうから。
○ 手順として、人勧を受けずに法案を提出することがあるのか。
● 現在事務局がやっているのは、人事院の勧告を経ずに事前調整するもの。人事院の機能を肩代わりするのかなんて考えていない。
人事院の機能が働いていないとは考えていない。内閣とか国会に対して勧告なり意見の申し出なりをするかどうかは人事院自身の判断であり、人事院が決めることだ。その点は、人事院制度を国公法上留保すると言う意見をもらっている。
● それは代償機能なのか。
○ 人事院が何も動かなかった。そして、労働組合は強く反対したら、その場合どうするのか。
● 交渉はするが、皆さんの意見が膨大だったので合意ができなかった。その場合に、国会への責任から法案を提出して進めることはあり得るかもしれない。そのときに人事院がどうするかは人事院が考えることだ。
○ ここからは現実論でやろう。もうすぐ12月になるがどうするつもりか。
● 12月だと言っても大綱をどうするかは決められていない。急に法案ができるなんてことはない。皆さんが、この1カ月で勝手にやるなんてひどいということは分かる。勤務条件決定システムの検討が進んでいないのは申し訳ない。
○ 最後に、結局労働条件決定システムが決まっていない。賃金の基準は誰がどう決めるのかなど労働条件決定システムに行き着いて議論がこう着してしまう。周辺制度も出すと言っていたが、いつになればトータルな議論ができるのか。進め方についても、本日の回答は納得できない。
● 大綱をいつ頃出すかは、まだ決まっていない。重要なポイントである水準の決め方とか等級毎の人員枠をどう決めるのかとか、代償機能と一緒に内部で議論している。これまでも、議論に入る前に行革大綱や大枠や基本設計などで我々の姿勢は示しているし、政治的な部分もあり、現在検討しているので待ってほしい。
○ 本日の中身は大変不十分だ。10月29日の3項目の申し入れに戻って詰めの議論をしようではないか。
● 承知した。
以上
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