政府・行革推進事務局が、交渉・協議をつくさないまま、12月中の「大綱」決定に固執し続けるなか、12月4日には新人事制度以外の「採用試験制度の見直し」など6項目についてのとりまとめを提示しています。12月7日、国公労連は、一方的な「大綱」決定は許されないと、改めて推進事務局に申し入れし(※別紙参照)交渉・協議を行いました。交渉には、堀口委員長ほか闘争本部事務局メンバー5名が参加し、推進事務局側は春田室長ほか3名が対応しました。以下、交渉の概要です(○は国公労連、●は推進事務局側)。
○ 11月6日に「原案」が示され、12月4日にはその外の残された課題についても示された。12月に入りいよいよ「大綱」決定に向けて大詰めに来ており、今日は改めて申し入れを行う。
現在提示されている案の中身は、到底受け入れられない。一方的な「大綱」決定は許されない。この間、各府省の人事管理権限を強化することが打ち出されたが、人事管理の在り方と労働組合との関係は行政を進める基本だ。各府省の権限を強めるのならば、その規準を誰がどう決めるのか、能力等級の人員枠は誰が決めるのか、基本権の代償はキチンと担保されるのか、降任、降格など人事管理権者の勝手気ままにはならないのか、このような制度は、国民のための行政ということでは国民が受け入れるのか、国民のための行政を行う公務員労働者がイキイキと働くことができる制度なのか大変疑問がある。公務員労働者の基本的人権が問われる中身であり、仲間が期待しているものにはなっていない。繰り返すが、もっと議論すべきだ。
● 十分議論がつくされていないという指摘については、提示している「新人事制度の原案」が行(一)を前提にしたものであり、その中身のいろいろなところもイメージとして提示したものと承知している。他の職種や行(一)のライン職でないところの取り扱いについて、具体的に提示していないことも事実だ。
公務員の皆さんがイキイキと働ける公務員制度ということであり、人を管理するということよりも、職員自らの仕事に持てる力を出し、その力を高め、経験を生かしていく中で充実感を高めるための制度を作りたいという考えは変わらない。
給与など具体のそれぞれについて誰がどう決めるのか明らかでないという指摘はそのとおりだが、評価制度やキャリア制度を新しい公務員制度の中でどう位置づけるのかについても十分議論をつくすべきだし、人員枠は労働条件に直結すると考えている。
行革推進本部で労働基本権についても相当踏み込んだ議論があったが、まだ結論は出ていない。労働基本権は、制度の全体にかかわって大変重要なことなので、大綱決定前には結論を出したい。
議論が十分尽くされていないということは、労働基本権の考えを示さない中でどこまで提案されたかということとも関わることで、その指摘については十分理解しており、できるだけのことはしたい。特に、労働基本権については議論を十分したい。
12月4日に示した採用試験など他のところについても、時間的なものはあるができる限り議論したい。細かいところまで詰まっている訳ではないし、今の段階での整理であるが、提示しているレベルでの協議となる。また、整理しないといけないところは整理して進めたい。
新しい人事制度の中で、当局サイドと労働組合と労働条件性について相談しており、そのルールをどう決めるのか必要な検討をしており、その問題を避けるつもりはない。ただ、労働基本権を示していないので、その限界性の中で大綱をどうするかだ。
働いている職員の意欲を高めるための環境(働くルール)は、積極的に制度の見直しをどう図るかだ。問題意識は持っている。取り組みの課題について引き続き議論していきたい。
○ 11月20日の自民党行革推進本部長会議に提出したという「内閣と第三者機関(人事院)の機能の整理」「人件費予算の決定の枠組みについて」の2つの文書について、我々としても意見がある。この文書の取り扱いについて確認したい。
● 言われているこの前(自民党に)提出したものは、給与水準や人員枠について、今の制約はそのままで代償機能が果たせるのかという前提でまとめたものだ。
「人件費予算の決定の枠組みについて」は、人員枠や給与水準について前提の考え方は示しているとおりだが、意見は伺いたい。
○ 「内閣と第三者機関の機能の整理」「人件費予算の決定の枠組み」については、必要な意見を別途申し述べる。
労働基本権について、協議すべき対象であることは一致してきていると承知している。どの段階で議論するのかだ。能力等級制度の枠組みだけ決まって、その後その枠組みの中でどうするかを1月以降議論しようでは、余りにも乱暴だ。12月にまとめるという「大綱」の性格にもかかわる問題であり、一方的な内容を閣議決定することは認められない。
● スケジュール的には、12月中には「大綱」をまとめるという方針の下作業を進めている。何を「大綱」としてまとめるかは、中身の詰まり具合だ。労働組合とは、それをどう受け止めるかで相談したい。一方的に議論もしないで進んでは、今後の検討がうまく進まなくなるので、そのようにならないように十分考えていきたい。
これらの回答をふまえ「大綱」の内容も含めた交渉・協議を尽くすこと、協議が整わないままの一方的決断は断念することを改めて主張し交渉を終えました。
〈別紙資料〉
2001年12月7日
行政改革担当大臣
石原伸晃 殿
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 堀口士郎
「公務員制度改革」にかかわる申入れ
公務員制度改革作業をすすめている行革推進事務局は、さる12月4日に、「採用試験制度の見直し」など6項目について、基本設計以降の検討状況のとりまとめを提示しました。これらは、11月6日に提示している「新人事制度の原案」とともに「公務員制度改革の大綱」の「基本」だとされています。
私たちは、公務員制度改革は、公務員労働者の労働条件に直結することから、使用者・政府としての「正式提案」である「公務員制度改革の基本設計」にもとづく交渉・協議を、推進事務局を当事者に、9月下旬から行ってきました。しかし、提示されたいくつかの「原案」には、「交渉・協議」の経過が十分反映していないと受けとめています。
それは、第一に、公務員労働者の労働条件をめぐる「交渉・協議」が開始されたにもかかわらず、あらたな制度における労働条件決定システムなど重要な部分について、使用者としての責任ある回答・見解が一度として示されていないことにあります。
第二に、そのことともかかわりますが、交渉事項となる「労働条件性」の整理を先送りにしつつ、与党協議を優先した検討が繰り返されていることです。
第三に、10月段階での「質問書」をはじめ、数次にわたって、交渉の基盤整備等を求めてきましたが、残念ながら「原案」には、それらの反映が十分とは考えられません。
推進事務局は、「基本設計」段階で明らかにした12月中の「大綱」決定に固執し続けていますが、交渉・協議もつくされないままの労働条件変更や、内閣、各府省の人事管理権限拡大に対応した労働者の権利保護の仕組みづくりを議論しないままの決定などは、国公労連として到底受けいれることはできません。
以上のことから、改めて以下の点を申し入れ、誠意ある回答を求めます。
記
1 「新人事制度の原案」で提示されている能力等級制度、能力給をはじめとする給与制度、分限・任用制度など、その内容の多くは、労働条件の基本的な内容です。この間の、状況は、提示されている「原案」の内容について、交渉・協議がつくされたとは到底いえません。
「十分な協議」を言明してきた経緯からしても、「大綱」の一方的な決定は断じて行うべきではありません。
(1)「原案」は、現行の行政職(一)表の適用をうける職員の内、ライン官職を前提としたものとなっています。
基本となる能力等級制度についても、非現業国家公務員全体にかかわる論議や行政職(一)表の適用をうける「専門職」の論議は全く行われていません。仮に、それらの点は、各府省の判断に委ねることとして検討されているのであれば、労働基本権とのかかわりを先に整理すべきであることは、いうまでもありません。いずれにしても、論議は極めて不十分です。
また、能力等級制度と評価制度の核となる職務遂行能力基準は、示されている「モデル例」は抽象的であり、到底、人事管理の基軸になるものとは考えられません。
なお、能力等級、組織段階の区分などは、賃金決定などとかかわる労働条件課題であることは言うまでもありません。
(2)任用制度については、職務(ポスト)との関係が不明確なままです。基準となる能力等級制度、職務遂行能力基準が明確でないままに、降任や分限の基準論議を先行して行うことは困難です。
なお、職務遂行能力基準の抽象性からして、原案で示されている分限、任用などの考え方には、賛成できません。
(3)労働条件の基本ともいえる給与について、原案の内容では、「だれがどのように決定するのか」が全く明らかにされていません。その点を、まず示した上で、その内容もふくめた交渉・協議を行うべきです。
また、能力等級における「人員枠」についても、給与決定の「基準」であり、労働条件課題であることを明確にすべきです。
なお、短期評価の賃金反映についてはくり返し反対を表明していること、配偶者手当の廃止見直しには賛成できないことを申し添えます。
(4)評価制度について、労働条件に直接反映する人事管理制度を検討する以上、透明性や合理性の確保、労働組合参加による苦情処理システムの整備、評価基準決定における労働組合の関与、評価者訓練の徹底、態勢の整備などについて、協議をつくすことが必要です。
そのことからして、原案の内容では、到底賛成できません。
(5)本省幹部職員集中育成制度については、キャリア特権制度を「合法化」するものであり、賛成できません。
なお、このような職員の選抜、育成制度は、結果的に職員の処遇に影響するものであり、選考基準についての労使協議をルール化すべきだと考えます。
2 「新人事制度の原案」以外に提示された事項についても、多くの疑問、問題意識をもっています。12月に入ってからの提示ということを考えれば、この点でも「大綱」の一方的な決定には反対です。
(1)採用試験制度について、「1種試験合格者を採用予定者の2.5倍程度に増加」させることは、試験制度の公正さや、成績主義の原則との矛盾、さらには、就労の不安定さを増大させかねないなどの問題が懸念されます。
また、能力評価試験としての採用試験の位置づけについては、「早期育成制度」などともかかわって、採用後の処遇と不可分のものであり、慎重な検討が求められます。
(2)官民交流にかかわって、「身分の併有」が検討されていますが、公務員としての公正・中立性をどのように確保するのか、労働組合の組織対象範囲や職員団体登録制度との関係、職務専念義務や、懲戒、身分保障などの問題があり、交渉・協議をつくすべきです。
(3)「府省をこえる公募制」については、唐突な提案であり、制度設計の詳細にかかわって、労働条件とのかかわりを慎重に検討すべきです。
(4)自己啓発のための休業については、基本的に反対するものではありませんが、公正な運用方法などについて、協議をつくす必要があると考えます。
(5)留学費用の償還スキームについては、対症療法的な検討との感を拭えません。また、俗に言うところの「お礼奉公」的な制度検討には違和感を持っています。
(6)国家戦略スタッフの必要性は否定しませんが、その政治的役割や採用方法、処遇などの検討内容からして、特別職国家公務員として検討すべきだと考えます。仮に一般職に位置づけるのであれば、能力等級制度などとの関連を明確にすべきです。
3 労働基本権問題について、国公労連は「三権」全面回復の要求を持っています。仮に、「新人事制度の原案」を前提に、現行の代償措置が維持されるとしても、批准しているILO87号、98号条約や、これまでの政府見解をふまえれば、次の点は最低でも協議事項とすべきです。
(1)現在の指定職を「上級幹部職員」と位置づけ、一般職員とは異なる人事制度のもとにおくのであれば、「行政にたずさわる」公務員の範囲についても検討すべきです。
(2)国家公務員法第108条の5の「交渉権」にかかわって、各府省の人事管理権限拡大にみあった整備を行うべきです。また、その際、公務員制度審議会での「残された3課題」のひとつである「交渉不調の際の調整システム」についても整備すべきです。
(3)個別労使紛争がこれまで以上に発生する可能性をもっていることから、「三者構成の救済システム」を設けるべきです。
(4)各省の人事管理権限を拡大するのであれば、公務員労働者のはたらく権利の擁護も必要です。超過勤務規制や、性、労働組合所属、年齢などあらゆる差別の禁止などは、最低でも制度整備が必要です。
また、一般職国家公務員とされながら、極めて劣悪な労働条件のもとにおかれている「非常勤職員」について、現状をふまえた制度改革を行うべきです。
以上