国公労連は、12月19日、行革推進事務局から「公務員制度改革大綱原案」の提示を受けるとともに、交渉・協議を行いました。交渉には、国公労連から堀口委員長ほか闘争本部事務局メンバー5名が参加、推進事務局は春田室長ほか4名が対応しました。以下、交渉の概要です(○は国公労連、●は推進事務局側)。
○ 今日は、12月19日だが、25日の決定日時も決まっているようだが、ここにいたるまで大綱原案の全容も示されてたいない。誠実に交渉・協議を行うのではなかったのか、(労働基本権の考えを今日はじめて示すという)こういう段取りになったことについて厳重に抗議する。
その上で、労働基本権について、この間の検討がどうなったのか説明を求める。
● 今まで新人事制度をはじめそれぞれの制度の各部分について話し合いをしてきたが、一番懸案の労働基本権問題については、「現行の制約を維持する」方針が固まった。この間、政府部内と与党における検討があり、現在の制約を維持するという方針が決まり、それをうけて大綱案に書き込んだ。組合にもこの案文を提示するので、これをもとに意見を聞かせてほしい。労働基本権の取り扱いはできるだけ早い結論を得たいと努力してきたが、結果としてこの段階までタイミングがずれたことは、事柄の内容との関係で申し訳ない。
人事制度をどう組むかは、労働基本権と勤務条件にかかわる問題をどう整理できるか、特に第3者機関、各省、内閣の役割整理でそれぞれの役割機能の整理の中で、労働基本権をどうすべきかについて各方面に議論してもらい、その集約としてこういう結論がでた。
今日提示する大綱原案にはその立場から、人事制度の詰まり具合からみて、最大書き込めるものをそれぞれの箇所に書いている。
公務の安定性・継続的な運営の確保の観点、国民生活への影響の観点わ基本として、現行と同様労働基本権の制約の下における必要な措置を構築することとなった。
この回答を受けて、堀口委員長から改めて以下の指摘を行いました。
○ 「公務員の労働基本権について現在の制約を維持する」というが、室長は先ほど、与党の検討結果を書き込んだと言った。公務員制度を大きく変えると言いながら、労働基本権については、与党の考えを書いただけではないか。使用者権限を強める一方で、労働基本権の制約は現在のまま、これでは片肺飛行だ。
つづいて小田川書記長から具体的な中身について追求を行いました。
<労働基本権と代償機能>
○ 「新人事制度」の固まり具合を見てから労働基本権については検討するというが事務局のこれまでのスタンスだった。今回の「大綱原案」の内容は、労働基本権制約を維持しても整合すると考えているのか。
● 事務局としては、基本権制約の下でも適切な職員の処遇確保ができる枠組みをつくることは必要と考えている。その内容は個別のところに必要な考えと新制度の仕組みとして書き込んだ。
○ 12月12日にも、「人件費予算の決定の枠組み」「内閣と第三者機関の機能の整理」についても意見書を出したが、「大綱原案」が申し入れへの回答か。国会審議でも、片山総務大臣は「労働基本権と代償機能はパラレルだ」と回答しているではないか。
● 申し入れの内容は十分読ませてもらった。基本権制約に必要な枠組みにより、職員の処遇の適切確保は十分対応できると考えている。代償措置として十分なものを確保するという意味では、提案はきちんと対応できていると考える。
<第三者機関の関与>
○ 「人事院は、勤務条件の設定について引き続き関与する」とあるが、給与水準勧告の勧告、人員枠への意見等は代表例か。その後にある、「勤務条件の基準化」についても全て人事院が関与するのか。
● 給与水準の設計、人員枠や能力等級の人員数などは例示であり、特にそれらは給与の中身の基本なので代表例として書いた。その他の勤務条件にかかわるものは、各事項について、代償機能の枠組み(代償機能としての第3者機関が果たす役割を含め)が検討されることになるが、個別にどうするかはすべて網羅できていない。今後、「大綱」を踏まえ適切に検討する。
○ 「内閣と第三者機関の機能の整理」に沿って、これから個別の制度内容との関係で詳細に検討していくということか。
● 基本的事柄については、今回例示したもので、どのような制度が考えられるか、ある程度明確に答えを出した。他の勤務条件の基本は、適切に人事院が関与するのが基本という点を大綱のまとめの段階で基本思想として確認し、具体化の段階でどうするかであり、この段階で全て盛り込んでいるわけではない。
<能力基準の設定>
○ 内閣の企画立案の総合調整機能と各府省の人事管理権限拡大を基本に労働条件を侵さない代償措置を検討するという考え方か、それとも労働基本権と代償機能との関係を一度検証した上で、内閣や各府省の権限を検討するのか、基本的な考え方が不明確だ。例えば、能力等級における等級等の区分の基準となる職務遂行能力基準の設定は、勤務条件と回答してきた。原案では「府省共通の能力基準」に「各府省ごとに内容の追加」を行うことができるようになっている。基準設定や各府省での付加など、それぞれの段階での労働組合の関係はどう考えているのか。
● 能力等級の基準は全体の基本になる基準であり、どう設定するかはあるが、法律なりできちんと定める。その設定に第3者機関の強い関与、あるいは基準そのものの作成での関わりが必要となる。各省でこの共通的なものに対し、運用上必要なものをつくる場合、どういう形で各省が能力基準の上に必要な部分の補いをするか、その点は今のところ具体的な示せないが、その段階でもこの考え方が及ぶことは当然だ。各省がルールなしに設定できるものではなく、統一基準との関係やそれが適切に設定されているのかに関する第3者機関の関与が必要と考える。
<組織段階の分類>
○ 第三者機関の関与が、事前か事後がある。事後チェックであるならば、事前に労働組合がどう絡むのかが問題になる。同様に、本府省や地方支分部局の各機関の組織段階への分類についても、各府省で行うことになっているが、その際の「明確な基準」の設定はどう考えてているのか。
● 組織段階の設定は、もちろん統一基準なしに各府省がバラバラとはいかない。まさに本省、地方支分部局などどう分けるのか統一的に整理し、具体的にあてはめる。しかし、組織段階と能力等級の関係はあるが、組織段階の分類は勤務条件性がどこまであるかもあり、制度をもう少し詰めていく中で、第3者機関の関わりが必要となるかどうかを検討したい。
<賃金配分>
○ 人事院の勧告の具体的中身について、基本給の定額部分、加算額における「加算の段階及びそれぞれの水準」、「加算額でのあらかじめ設けられている段階」、業績手当の「あらかじめ定められた明確な基準」は勧告の中身なのか。
● 給与水準等には多くの要素が入る。基本給以外にも職責手当や他の手当もある。それらをどういう形で、官民給与比較により公務の処遇として反映させるか。させかたはいろんな要素があり、限定してこの部分はこうだと言いにくい。現在でも人事院勧告があり、この制度の果たしている役割も前提に新制度の中で、変化する構造(給与種別や加算制度など)の中でどう設計するか精査する必要がある。いずれにしても、水準等は勧告制度により代償措置を果たすという設計となっている。
○ それでは納得できない。給与水準を勧告すれば事足りるものではない。国営企業でも配分について交渉を行う。それが、労働協約締結権の重要な中味になっている。労働基本権について整理し、それは代償の範囲内だと言うならば、配分についての代償措置の在り方をきちんとすべきだ。
● 新制度では、基本給も能力等級や加算の配分に応じて割り付けられる。これは今の給与法による俸給表の等級・号俸の構造を基本的に踏襲するもの。ただ、今のように水準が一義的に俸給表と結びつくのではなく、基本給の定額や加算額の各枠に応じて金額を入れていることになるとは思う。加算額の具体化はまだ残されている。言われている3点は、これからの検討で詰めていくことになる。
○ 業績手当の「標準を上回る又は下回る支給額の段階数、具体的な額及び分布率の設定」は明確な基準のもとで人事管理権者がおこなうとしているが、現行は勧告や意見の申出、人事院規則で人事院が関与し、全体としてその上で代償措置としてきた。そのことを踏まえて検討したのか聞いている。今の回答は、水準を何%にすると出せば後は良いと聞こる。原資をどう分け合えるのかのという配分は、労使で一番もめるところだ。
● 分布率の設定自体を勧告の対象にすべきということか? 今の級別定数も枠と理解しており、配分ではない。配分の枠(分布率)まで代償措置の範囲内というのは少し検討課題として違うのではないか。級別定数はポストの評価とそれに対する対価ではあるが配分ではない。評価の分布率まで代償措置に入るかどうかは、あとで議論させてほしい。
○ そこのところをこの間繰り返し指摘し回答を求めてきた。今の回答で、基本権は現在の制約を維持することは納得できない。
こと給与に関して、配分に直接、間接に影響することが代償機能に関わらないということにはならない。
● 労働基本権問題は現状を維持し、その中で制度を設計する。その中で、職員の処遇が適切に確保される枠組みが必要となるし、その範囲内で設計している。みなさんは原案でで完全に基本権問題が詰まっていないのなら、結論を出すのはおかしい、給与制度の詳細が詰まっていないと代償措置が機能するか分からないという議論のようだが、そうではない。今後詰める中で意見を聞くし、人事院との意見交換でも人員枠の枠組みは基本的に問題なしとしている。詳細設計については、これからも話し合いたい。
<人事院の代償機能>
○ 労働基本権の制約が現状維持なら、代償措置も維持するのは常識だ。級別定数は勤務条件であり代償措置に含まれると国会でも答弁している。
● 代償機能発揮の方法は多様であり、能力等級制度の中での人事院の関わり方は変わりうる。現在の人事院の役割維持が当然だということにはならない。
○ 労働条件についてはすべて関与することになるのが当たり前だ。それは各府省ではない。交渉権についても、管理運営事項でも交渉事項になることもある。労働組合がどう関与するのかが、この原案には記述すらないし、この間の交渉でも一切回答していない。
○ 我々のこの間の主張にまともに答えているとは思えない。人事制度を変えたい、しかも各府省の自主性は高めるたい、となると労働者の権利が侵されると心配するのは当たり前だ。各府省の権限強化について鮮明に記述して、労働者の権利をどうするのかまで含めて労働基本権問題を検討し結論を出したとは言えないではないか。幹のところは議論したのかもしれないが、各府省の職場での運用が曖昧だ。
また、人事制度にかかわって、どのような事項を法律事項とするのか、政令事項とするのか。法律事項とする場合の内容決定システムはどのように考えているか。勤務条件である場合の労働基本権とのかかわりはどうするのか。
● 「人事院は職員の利益保護、人事行政の中立性・公平性確保の観点から、国会及び内閣に対し必要な意見を述べ、法律の委任に基づき人事院規則を定める」と、規定・基準に関与することとしており、基本思想は今と変わらないと考える。
<本省勤務手当・扶養手当>
○ 本省勤務手当の新設や、配偶者にかかわる扶養手当の「見直し」は、明白な労働条件事項だ。それらの必要性をはじめ、内容に踏みこんだ交渉は一度も行わないままで、政府としての決定ができるのか。強行するのであれば、明らかに労働基本権の侵害だ。
● 記述はしたが、制度化には法律が必要で、その段階で議論することにはなる。本省の仕事は国会対策含め判断が求められるなど、その職務の重い役割に対応するものを払う考え方が必要だとして書いたもの。決まったというより、新設するということだ。
○ 50万国公労働者全体を見た検討をすべきだ。この段階でも離島で一人二人で勤務している国公労働者と本省の勤務とどう比較するのかだ。手当の新設は、人件費のどこかを食うということであり配分問題だ。その程度の説明では、本省勤務手当の新設には反対である。
以上のやり取りを踏まえ、最後に堀口委員長から次の点を主張し以下の回答を得て交渉を終えました。
○ この間、質問、申し入れ等をくり返してきたが、それらへの回答が「大綱原案」だとすれば、我々の意見がほとんど反映されていない。国公労働者の最大組織している当該組合として納得できない。 進め方についても、室長はスケジュールありきではないと回答してきた。誠実に交渉・協議を行うと言ってもきたが、残されたわずかな期間で意見を聞くということが民主主義なのか。交渉・協議が尽くされたとは言えない。
国公労連は、労働条件変更にほかならない公務員制度改革について、政府に白紙委任する考えはない。また、現行法でも、少なくとも交渉権が認められており、労使関係の安定のためにも、協議をつくす「義務」が使用者・政府にはあるはず。
25日にも予定されている「大綱」決定を断念し、協議をつくす立場で「しきり直し」をするべき。それが歴史的な節目としての公務員制度改革に相応しい検討のあり方だ。 最後に、今日の我々の主張に対して、後日回答を求める。その際は、責任者である大臣との意見交換を求める。
● このようなタイミングで労働基本権問題を話すことになったことは、当初述べていたこととの関係でも適うものだというつもりはない。しかし、25日の決定については、この時期における一つのまとめであり、まとまりの姿を見せないといけないのでぜひともやらせてほしいと考えている。しかし、本日国公労連からの厳しい指摘もあるので、主張の意味合いを受け止め検討し、改めて回答したい。
以上
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