国公労連は、本日、「大綱決定」を直前にして政府・行革推進事務局と交渉を行い、国公労連としての態度を表明しました。また、これに先立って、「民主・公正・効率の公務員制度を求める要請署名」の一部(現時点で全体9万6563筆集約のうち今回提出は7万4499筆)を提出し、全国の仲間の怒りをぶつけました。
今回の交渉は、前回19日の交渉で、25日の「大綱決定の断念、交渉・協議のしきり直し」を主張し検討を求めた経過をふまえ、その際の主張点を改めて要求書(別紙参照)として提出し、推進事務局の回答を求めたものです。これには、国公労連から堀口委員長ほか闘争本部メンバー7名が参加し、推進事務局から西村事務局長、春田室長ほか3名が対応しました。
【国公労連の主張点】
冒頭、堀口委員長は次のように発言しました。
国公労連の主張は大きく2つである。一つは、改革の進め方にある。労働基本権問題を棚上げにしたままでの改革の中味論議は困難との認識から、10月末の段階で政府の態度決定を求めたが、結局、政府としての「回答」が示されたのは12月19日だ。
「労働基本権制約は現状維持」とする回答自体は、我々の要求にてらして到底納得できるものではないし、その点での交渉・協議も全く不十分だ。
さらに、百歩譲って、労働基本権制約が現状のままとした場合の、基本権制約の代償措置や交渉権の問題が、新人事制度など改革の内容との関係でもほとんど交渉・協議がされていないということにある。
制度の全てを協議して詰めるべきとまでは言わないが、少なくとも、今回の公務員制度改革の中心である、内閣や各府省の人事管理権限拡大との関係での代償措置や交渉権についてきちんと整理されるべきだ。この間、勤務条件性について争いのある再就職ルール・「天下り」問題などでは、その点が相当程度整理されていながら、重要な課題として労使で確認した労働基本権問題では、抽象的で曖昧な整理しかできていないと受けとめざるを得ない。
労働基本権という、労使間のルールの問題にかかわって、交渉・協議が尽くされていないままでの決定には断固反対だ。
主張の二つ目は、改革の内容にある。当初から、50万国公労働者の全体に目をむけた検討を求めてきたが、結局、本省庁の企画・立案部門、とりわけ1種合格者の人事管理の「改革」に焦点を置いている。その結果、能力等級制などの新人事管理制度が、窓口第一線の公務員労働者の労働条件改善にはつながらず、むしろ職場は混乱し、競争主義が蔓延して行政サービスの後退を招くという思いは、この間の交渉でさらに強くしている。
さらに、営利企業への再就職を原則自由とする制度的転換や、企画と実施を分離し、1種採用者を企画部門の幹部候補生として純粋培養する育成制度などは、公務員制度に対する国民的な批判に背を向けるものだと考える。そのことは、日常的に窓口や現場で批判にさらされる職員にとっては耐え難いものであり、士気に影響するものだと考える。同様の視点から本省勤務手当をみており、19日も強調したが、3年連続の年収切り下げによる生活悪化の状況からしても怒りさえ感じる。
その他、内容にかかわって、相当の問題意識と意見を持っているが、それらも、労働基本権問題が棚上げされたこともあって、ほとんど交渉・協議が煮詰まっていないし、推進事務局側の問題意識も開陳されていない。労働条件の変更にかかわる問題を、これまでの交渉・協議で議論が尽くされたとして決定すべきではない。集中改革期間中の制度改革が所与の条件であるとしても、協議の時間はまだある。
以上、前回の交渉での主張を、再度、まとめて述べた。事務方の最高責任者としての回答を聞きたい。
【西村事務局長の回答要旨】
私どもとしては、大きな改革の「大綱」を決めるに当たり各方面から意見を聞き、誠実に対応してきたと思う。与党とも協議しながら、最大限努力してきたと思う。
労働基本権のところは、与党も現状の維持という決定であるし、政府としても公務の安定、国民生活への影響などを総合的に勘案し、代償措置をきちんと確保しつつ、現行の制約を維持することで整理した。お示しするのが遅れたのは、それなりの大きな問題であったし、年内に大綱を出すという6月の基本的方針もあり、それに沿って努力していかなければならなかった。どうにか各省とも話がついたので、12月25日に閣議決定をしたいと考えている。ただ、詳細はまだであり、これから具体的な検討をしていくことになるが、労働組合とも交渉・協議していきたいし、そのことは大綱にも書いている。
今後の進め方としては、「法制化のスケジュール等」にも書いてあるが、年内に大綱を決めるものの、すぐ法案を出せるわけではない。大きな制度改正であり、私どもが中心でやるが、平成15年の国会に国公法改正案を提出することで進めたい。平成17年度末までに関連法案や政令・省令を整備し、18年度から新しい制度は移行するということで、検討していきたい。事務局として不誠実に対応してきたつもりはなく、ぜひご理解をいただきたい。
【国公労連の追及点】
以上の局長回答を受け、小田川書記長から以下の点について追及しました。
(1)「労働基本権制約の代償措置を講ずることを確保」の意味は、内閣、各府省の人事管理権限と代償措置及び交渉権との関係について、個別制度毎に国公労連と協議することを前提としていると理解してよいか。
その際、現行の「代償措置」の内容はもとより、批准しているILO条約や、労使関係の安定、職員の利益保護といったいくつかの要素もふまえて協議すべきだ。
(2)国公法改正について、引きつづき推進事務局が中心になって進めるとしているが、そうであるならば次の点をふまえるべきだ。
1)この間の交渉・協議の経過には、国公労連として強い不満を持っている。
2)その最大の理由が、労使の立場での交渉・協議ではなく、政府たる政府としての対応になっているのではないかという点にある。与党協議を優先して、交渉・協議が煮詰まらなかった経緯には強い不満を持っている。
勤務条件法定主義や財政民主主義の原則を強調しているが、だからといって労使の協議がおろそかにされるようでは、労働基本権は形骸化する危険性を感じる。それは結果的に、いたずらに労使の軋轢を強める危険性ももっていることをふまえるべきだ。
3)そのことともかかわって、「職員団体との交渉・協議」について、実効性ある協議体制を求めたい。同様に、多様な仕事、職種が公務には存在することもふまえた交渉・協議や、有識者をはじめ国民的な意見を幅びろく聴くことも必要だと考える。
(3)この間、新人事制度にかかわっては、11月の原案があるが、大綱とのかかわりで、その性格を改めて確認したい。例えば、能力等級で9級制がイメージとして示されているが、これは、「大綱」ではどう位置づけているのか。
【春田室長の回答要旨】
労働基本権制約の「代償機能」性については、基本の部分として、給与水準、能力等級の級別人員枠について、基本的考え方を大綱に書き込んでいるが、個別の制度は詳細に書き込んでいるわけではない。今後の設計にあたっては、職員団体とも相談していきたいと考えている。その中で、勤務条件にかかわる取り扱いは、これまでの積み重ねをベースにして、議論していかなければと思っている。
今後の進め方として、一般行政職だけでも、詰めなければならない点は多々あると認識している。事務局が中心となって検討していくことになるが、今後とも職員団体と十分交渉・協議ということで話し合っていきたい。そういう意味では、これまでの経過の評価はあると思うが、交渉・協議がおろそかにならないようにしたい。職員が働きやすく十分な対応がとれる制度となるよう十分な交渉・協議が必要であり、テーマ、テーマでこのことを十分ふまえたい。
先にお示ししていた「行政職に関する新人事制度の原案」は、参考資料の一つであり、議論の出発点(たたき台)である。今後、制度の詳細を設計していく上での参考とし、皆さんとの議論もふまえて詰めていきたい。
最後に、堀口委員長は、要旨次のとおり発言して交渉をしめくくりました。
(1)50年来の公務員制度改変というのであれば、その間の経過と問題点についてどういう議論がされたのか、また、今起きている公務をめぐる状況、公務労働者の権利性や市民的自由の確立などが議論されたのか。与党との協議でその辺が十分になされているとは思えないし、労働基本権の取り扱いは大いに不満を持っている。
(2)推進事務局として、19日の交渉もふまえた検討が行われたことは一定受け止める。しかし、それは、25日の「大綱の閣議決定」を前提としたものであり、「スケジュールが先にありき」であったことは改めて指摘しておく。また、「公務員制度改革」に対する基本的な意見は、2月段階から再三申し入れてきた。そのことに照らせば、行政のあり方を含めて、「大綱原案」との間には相当の開きがある。と同時に、明らかにされている「人事制度」の枠組みを、各府省も、職場の組合員も受け入れていない。
(3)閣議決定が、政府としての意思決定であることの重みを考えれば、冒頭で主張したその「内容」にかかわる問題意識からして、受け入れられるものではない。また、その「進め方」についても、「大綱」決定後に整理すればよいとはならない。
(4)以上のことから、「大綱決定の断念」をあらためて主張する。これは、労働組合だけでなく、公務員労働者全体の意思である。
これに対し、西村事務局長は、「お話は承った。閣議決定は、各府省の了解を前提としており、ご理解をいただきたい」と回答しました。
以 上
【別紙】
2001年12月21日
行政改革推進本部
本部長 小 泉 純一郎 殿
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 堀 口 士 郎
要 求 書
本年6月に、「公務員制度改革の基本設計」が貴本部において決定され、それを使用者としての「正式提案」として、国公労連との交渉・協議が行われてきました。
それは、(1)公務員制度が、民主的・効率的な行政運営を保障すると同時に、労働者である公務員の労働条件の基準を定めるという「二重性」を持っていること、(2)「使用者である政府」が制度の詳細を直接検討するという「制度改革」の進め方、の両面で、労働基本権を尊重した対応が確認されたからだと考えます。
交渉・協議では、「あらたな公務員制度」の内容と労働条件決定システムが極めて密接な関係にあることが、早い時期に明らかになりました。しかし、「基本設計」では労働基本権問題が「先送り」されていたことから、交渉・協議が膠着状況に陥りました。そのことから、国公労連は、10月29日に、労働条件決定システムとかかわる労働基本権の取り扱いについて先行した論議を求めましたが、「与党との調整が必要」として、12月19日に「基本権制約は現状維持」とする回答が行われるまで「棚上げ」の状況が続きました。
国公労連は、「労働基本権制約は現状維持」とする回答自体、納得するものではありません。仮に、百歩譲って、回答を前提においたとしても、9月以降、数次にわたって提示されてきた「新人事制度」の内容について、労働者の利益擁護の観点での「代償措置」との関係論議が必要になることは明らかです。この点で、12月19日の「大綱原案」には、給与水準の勧告や、「人員枠」にかかわる第三者機関の「意見申し出」などの記述はありますが、国公労連が疑問を投げかけてきた点の多くには触れられていません。
現段階は、労働基本権の取り扱いについて、「政府たる政府」の検討結果が示され、「使用者たる政府」と国公労連の交渉・協議が開始される段階だと言えます。そのような経過にてらしただけでも、「新人事制度」など、「公務員制度改革」の内容について、交渉・協議がつくされた段階とは言えません。加えて、「大綱原案」には、「本省勤務手当の新設」などの労働条件変更もありますが、その点の交渉・協議は全く進んでいません。
勤務条件法定主義のもとでも、基本的人権である労働基本権は最大限尊重されなければならず、現行国家公務員法で「交渉権」が認められている所以です。現段階の交渉・協議の状況で政府が「大綱」を決定することは、その「ルール」さえふみにじるものです。少なくとも、現状の労働条件の変更が想定される内容を決定すべきではありません。
以上のことから、下記事項を緊急に申し入れ、誠意ある対応を求めます。
記
1 12月25日の「公務員制度改革の大綱」決定は断念すること。
2 使用者の立場で、公務員制度改革の個別の制度内容、労働基本権「代償措置」などについて の労使協議をつくすこと。
以上