1月23日、国公労連は、「公務員制度改革大綱」の閣議決定をふまえ、政府・行革推進事務局に対して、「大綱」の撤回、交渉・協議の仕切直しをせまる申し入れ(別紙「申し入れ書」参照)を行いました。これには、国公労連・堀口委員長ほか闘争本部事務局メンバー6名が参加し、推進事務局側は春田室長ほか4名が対応しました。以下、申し入れの際の概要です。
冒頭、堀口委員長は、次の2点を主張しました。
○ まず、「大綱」の閣議決定を踏まえ、改めてその撤回、再協議を強く求める。
国公労連は、12月21日の交渉で、「大綱の閣議決定に反対する」旨の主張を行った。その理由は2つ、(1)昨年3月以降節目毎に要求書等を提出してきたが、我々の要求に対して「大綱」はほとんど応えていない。(2)重要な争点として、労働基本権問題について使用者政府としての考え方を示したのが12月19日であり、制度改革の内容も含めた議論が全くないままに「現行制約を維持」とする結論を出すべき段階でないことなど、労使の交渉・協議が不十分という2点に要約される。その立場は、基本的に現段階も変わっていない。
○ 「大綱」が閣議決定されたという事実も踏まえて、先に触れた国公労連の立場を改めて主張するとともに、これから個別制度の内容検討や国家公務員法などの「改正」作業を引きつづき推進事務局で進めることとなっている以上、労使の「交渉・協議のルール」化などについて、本日改めて申し入れを行う。
詳細は、別途書記長から述べるが、公務員制度改革は公務員労働者の労働条件変更に直結していること、それだけに労使の真摯な交渉・協議が不可欠なこと、取りわけ政府から交渉回数のことが何度となく述べられているが、「交渉・協議」は回数ではなく、我々の要求なり政策がどれだけ取り入れられるかが問題であり、中味こそが労使関係安定のためには必要なこと強調しておく。以上点について、昨年の反省点として改めて申し入れる。
つづいて、小田川書記長が申し入れ書にそって、以下の5点にわたって追及しました。
(1)最終局面の交渉でも、12月には「大綱」をまとめなければならないというスケジュールの下で、「個別の制度は詳細にまとめているわけではない。それぞれ制度の中でどういう設計にするかは、今後職員団体とも相談すべき」との推進事務局からの回答を改めて確認する。
制度の具体的な内容も重要だが、国公労連として特に重要だと考えるのは、内閣、各府省の人事管理権限と労働基本権との関連について議論が必要だ。先の国会答弁にもあるように、現行の代償措置の中味と労働基本権はパラレルの問題であり、そのことを前提に「労働基本権制約にかかわる相応の措置」について、労使の立場での交渉対応を強く求めておく。
また、そのことにかかわってくり返し主張しているが、制度の抜本的改革をいうのであれば、公務員制度審議会の残された3課題やILOなど国際機関からの指摘事項など、長い歴史の中で残されている課題についても協議の遡上にのせるべきだ。
(2)その際、何が労働条件課題かからの議論も必要となる。この間の交渉・協議や「大綱」の中味でその仕切りは必ずしも容易ではなく、意見の不一致も当然考えられる。基本設計のときも申し入れたが「大綱」の全般にわたって「交渉・協議」の対象であることは改めて確認する。
(3)公務員制度改革基本法の論議があるやにマスコミ報道されているが、その真偽を確認したい。仮に、検討が進んでいるのであれば、労働基本権との関係は明確にすべきだ。
(4)評価制度については、労使の立場での交渉はほとんど進んでいない。内容、手法、周辺システムなど、試行をするに際しても最低限統一すべき点はあるはずだ。また、何を目的に試行するのかも重要な課題だ。制度の具体化に向けた動きそのものであり、当面試行内容の作業が先行するので「交渉・協議をつくす」という具体的な姿勢を推進事務局として示すべきだ。
(5)「大綱」では、大枠のスケジュールは示されているが、「交渉・協議」を進める上でも、当面の検討スケジュールを示すべきだ。現段階の考えはあるか。
これに対して、春田室長は以下のように回答しました。
(1)昨年の12月25日に「大綱」を閣議決定したが、大綱によって今後詰めるべきものは各般にわたっており、さらに具体化が必要なものは多々ある。今後、制度の詳細設計に当たっては、組合を含めた関係者と十分意見交換が必要であり、その点も「大綱の法制化スケジュール等」の中で触れている。交渉は回数より内容という主張はそのとおりであり、まさにこれから制度の詳細設計作業の中で、誠実に交渉・協議を行っていきたい。
(2)勤務条件関連課題かどうかも含め幅広く交渉すべきという主張だが、改革全般にわたり広く意見交換していく考えだ。どの部分と限定するつもりもない。特に勤務条件関連事項は、組合とも十分協議する必要があり、申し入れがある場合には、採り入れるべきものは採り入れるスタンスで対応したい。
(3)「改革基本法」制定の必要論が与党の一部に強いことは承知しているが、推進事務局の対応は「法制化スケジュール等」の中で、事務局で検討の上15年中に国会提出という内容以外に体制的なものには触れていない。事務局として「大綱」が改革の基本方針であり、基本法提出は織り込まれていない。ただ与党の中に組織的な面で体制や位置づけが必要との議論があり、これからも出てこよう。それにどう対応するかは今後の課題だ。
(4)詳細設計に当たっての内閣と第3者機関との関係は重大な課題になる。大綱はそれぞれの機能整理を具体化するとあり、大綱の考えにもとづき分類していく必要がある。労働基本権制約との関連についても、「これに代わる相応の措置を確保しつつ」という考え方を示している。労働基本権制約されていることに十分留意しつつ代わる措置をきちんと検討する必要がある。各制度官庁と調整についても、内閣官房として十分調整を図り進める必要がある。なお、人事院は制度改変で必要な意見申し出の制度もある中、当然その役割を果たすこともあることは認識している。
(5)中立・公平確保にかかわる内閣と第3者機関の関係の整理については、特に試験などが問題となるが、その内容に応じてどういう役割を果たすかについての考え方に応じて整理する中で具体化したい。試験制度については、関係者意見も踏まえて考えるし、幅広く意見を聞くつもりだが、その範囲などはまだ決まっておらず、今後検討したい。
(6)評価制度は新人事制度の中で非常に重要な役割を果たすものと考える。その円滑な導入のためにも、各府省の実情を踏まえ、どうできるか試行が必要と考えている。具体的にどうやるかは未定だが、内容、実施官庁などについて十分調整を図る。実施方法や体制については、今後検討するが現段階では未定であり、必要に応じ組合にも相談したい。
(7)当面のスケジュールの基本的なことは「大綱」の「改革に向けた今後の取り組み」のとおり、15年中を目標に国公法改正案を国会提出し、残余の法律案は17年度末まで、18年度を目途に移行というもの。当面、15年中の国公法の目標が一番近いが、これ以前に取り組む事柄もある。1つは試験制度(16年度移行)であり、今年半ば(6月頃)を目標にとりまとめる必要が、具体化はまだだ。もう1つは、再就職問題にかかわる特殊法人等への再就職役員の退職金や給与の決定(今年度中)がある。今年度中に結論を出したい。
以上の申し入れに対する回答を受けて、以下のように若干のやりとりを行いました。
○ 公務員制度審議会の残された3課題などはどう扱うのか。
● 現時点で特に申し上げるものはないが、新しい制度を検討していく上で重要な部分だと思っている。十分議論していかないといけない。
○ 「改革に向けた今後の取り組み」の中で出ている、行政職以外の職員や地方公務員制度のスケジュールはどうなるのか。また、地公法の検討はどこが行うのか。
● 行政職以外の職員については、大綱では触れていない。先ず、行政職のところが固まっていかないといけない、併せて、行政職以外の職員のところも固まらないと15年の国公法改正とはならない。それまでに大体の内容がある程度固まったものになるようにしたい。ただ、給与の詳細は、給与法改正案を国会に出すまでに固まればよいので、15年までに完全に固まらないとダメということではない。
また、推進事務局の編成も詳細設計に向けて切り替えつつある。
地方公務員制度の改正作業は総務省(公務員部)が主管だ。まだ具体に動き出してはいないが、事務局の作業の進捗をフォローしつつ整合性を図りながら進められるようできないかと考えている。
最後に、堀口委員長から改めて以下の主張を行い交渉を終えました。
○ 室長の回答で、「交渉は内容が大切だ」「交渉・協議の範囲を限定しない」ということは確認したい。
コスト論をはじめ、いつもの省庁からいろいろな意見や疑問が来ていると聞いている。改革に対して、職場に不安や不満があるからだ。大綱が決定されてから、職場の不満が一層大きくなってきている。交渉・協議を踏まえて職場の仲間の不安や不満をどう解決していくのかが大切だ。真摯な対応を改めて求めておく。
● まさに改革のスタートラインについた段階であり、制度が円滑実施できるようにしなければならない。各省からも意見をもらっており、新制度への疑問も出されている。職場では、今後どうなるかよく分からないという意見があることは分かる。それを埋めてどうよくしていくか、その作業がこれから始まる。組合との話し合いはその中でも、大事なウエイトを占めるという気持ちで取り組みたい。これからも誠実に交渉・協議を進めてまいりたい。
【別紙:申し入れ書】
2002年1月23日
行政改革担当大臣
石原伸晃 殿
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 堀口士郎
「公務員制度改革」に係る申し入れ
昨年12月25日、政府は「公務員制度改革大綱」を閣議決定しました。国公労連は、閣議決定に際し、9月以降の「交渉・協議」の経緯や「大綱」の内容からして、使用者・政府が公務員労働者の労働条件変更を一方的に強いるものと判断し、「『大綱』決定を断念し、協議をつくす立場での『協議継続』」を求めました。その立場は、現段階でも変わるものではありません。
公務員制度改革にかかわっては、内閣・各府省の人事管理権限拡大、それとかかわる労働基本権の検討が求められていました。しかし、「基本設計」段階では「人事制度の固まり具合をみて労働基本権を検討」としていたにもかかわらず、新人事制度の詳細検討をおざなりにしたままで、「大綱」決定直前に「労働基本権制約は現状を維持」とする政府「回答」を行ってきました。このことにも端的に示されるように、この間の「交渉・協議」は不十分です。
「大綱」決定後、一部マスコミは、政府・推進事務局が公務員制度「改革」をすすめる「権限」を明確にするための「基本法」制定の動きを報じています。現行の公務員制度は、労働基本権制約を前提に、民間の労使関係であれば労使協定や労働協約、就業規則など「労使自治」に委ねられている労働条件事項まで、法令等で規定するものとなっています。その点からすれば、国家公務員法をはじめとする法令の「改正」作業でも、労働基本権との関係を整理しておくことが必要です。しかし、「大綱」ではその点に言及しておらず、かつ、先にも触れているようなこの間の「交渉・協議」の問題点を解決するための論議も行われていません。
「大綱」が閣議決定されたという段階で、改めて、政府・推進事務局と国公労連との「労使の交渉・協議のルール化」が求められていることから、下記事項を申し入れ、誠意ある対応を求めます。
記
(1)「公務員制度改革大綱」を撤回し、労使の「交渉・協議」のもとに制度改革をすすめること。
(2)個別の制度検討に当たって、勤務条件に関連する事項であるか否かも含めて「交渉事項」とし、勤務条件性が確認された事項の改革・見直しについては、労働基本権との関係を明確に整理し、合意のもとに行うこと。
(3)個別の制度検討にかかわって、労働基本権を最大限尊重する立場から、内閣・各府省と現行制度官庁との関連についても明確にして進めること。
なお、内閣と制度官庁及び制度改革と労働基本権との関係を曖昧にしたままでの「基本法」制定は行わないこと。
(4)公務員の中立・公正性を確保する諸制度についての「内閣と第三者機関の機能整理」については、関係労働組合や専門家をはじめとする国民の意見を聴取し、その結果も明らかにして検討をすすめること。
とりわけ、「採用試験制度の見直し」については、教育機関などの広く関係者からの意見を聴取すること。
(5)評価制度の試行については、その対象とする府省や試行内容について、協議をつくすとともに、強制にわたる押しつけや、協議をつくさないままの強行は行わないこと。
また、試行実施に当たっては、その「評価」のための機関を労働組合参加のもとに設置すること。
以上