「政官財」癒着構造をただす改革を求める(談話)
 3月4日、外務省は、「『北方4島』支援」問題など、鈴木宗男衆議院議員が外務省に深く関与していたとされる疑惑に係る報告書をとりまとめ公表した。
 1月に東京で開催された「アフガニスタン復興支援会議」へのNGO団体出席を外務省が拒否したことを直接の契機に表面化した外務省官僚と鈴木議員との「癒着構造」は、国会における参考人質疑などを通じて、「ムネオハウス」問題など新たな疑惑が次々に明らかにされた。その疑惑に「こたえる」として出された外務省の報告書は、国会で指摘された「癒着の具体的事例」を裏付けただけではない。報告書が、国後島緊急避難所兼宿泊施設(ムネオハウス)建設工事等の入札参加資格決定において「鈴木宗男衆議院議員と外務省関係部局との間」で詳細なやりとりがあったとし、「社会通念に照らしてあってはならない異例なこと」と指摘している。あるいは、北方4島支援については「鈴木議員の意向が突出された形で重視」され、「(鈴木議員の意向を)実現する方向に動かざるをえない雰囲気が省内に存在していた」と述べている。いわゆる「族議員」の意向で行政が日常的にねじ曲げられてきたことを認めているこれらの点こそ見逃せない。
 にわかに刑事責任を問われるものではないとしても、主任の大臣を飛びこえて、一政治家が官僚に圧力をかけ、利益誘導を行うことは、民主主義をないがしろにするものにほかならない。また、鈴木議員と外務省の関係では、同議員が外務省の人事に強く関与していた事実も露呈し、かつ政治家の権力を背景に官僚が行政を「私物化」していた疑いも指摘されている。一部のマスコミが、同様の構図で公務員制度「改革」が進められていることを報道しているように、「族議員」と言われる政治家と官僚が癒着・結託して私利私欲、利権のために行政・制度をゆがめる状況の深刻化を指摘しなければならない。
 行政やそれを支える公務員の中立・公正さに対する国民の疑念や批判は、相次ぐ官僚不祥事のもとで限界に達しており、喫緊の改革課題となっている。しかし、政府が昨年12月25日に決定した「公務員制度改革大綱」は、その検討の進め方もあって、政治家と官僚の癒着にメスをいれる視点が欠落している。キャリア特権制の「合法化」や天下りの「自由化」、競争原理を貫徹する人事制度への改革などは、癒着をさらに深刻にし公務員のモラル低下を加速する「改革」になりかねない。鈴木議員の行政への介入は、外務省にとどまらず、国土交通省、農林水産省、防衛庁などにも及んでいたことも明らかになっている。公務員制度改革大綱」を撤回し、政官財」癒着の根深さに目を向けて、これを断ち切るための改革方向に舵を切り替えることが、いま政府には求められている。
 国公労連は、「癒着構造」を断ち切るため、1)営利企業への「天下り」禁止など「私企業からの隔離」の規制強化と第3者機関の関与を含めた実効性の担保、2)キャリア特権制度の是正、3)労働者・労働組合の内部告発や行政運営への意見申し出などの権利保障、4)大臣など行政に直接かかわる政治家以外との「接触禁止」、5)国家公務員倫理法に規定する「利害関係者」に政治家・秘書を加えること、などの改革が必要だと考える。
 国公労連は、外務省などにかかわる疑惑の徹底した糾明を求めるとともに、政官財癒着の構造改革にむけた民主的公務員制度改革、行政改革の実現をめざしてとり組みを強める決意である。

2002年3月6日          
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 小田川義和


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