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国公労連は4月26日、「行政職に関する新人事制度の原案(2次)」を受けて、行革推進事務局に対し、申し入れ書を手交するとともに、石原大臣宛のジャンボハガキ(1674通)を提出しました。 交渉は、堀口委員長を責任者に山瀬副委員長、小田川書記長ほか4名が参加、事務局側は、春田室長、高原参事官ほか3名が対応しました。 冒頭、堀口委員長は、「昨年12月に『大綱』が出され、その後の作業にかかわっても、国公労連と十分交渉・協議するよう申し入れてきた。その際、『大綱』では、労働基本権制約維持とかかわって『相応の措置をとる』と書いたことの具体的内容についての考え方を早急に示すよう求めた。推進事務局が使用者として誠実に交渉に応ずるとする以上、我々の要求に応える対応をすべきだ。示された2次案は、我々が求めている点に応えていない。そればかりか、『人員枠』設定の主体を内閣とするなど、『大綱』からさらに基本権尊重の姿勢が後退している。極めて不満だ。これでは『誠意を持って交渉協議を進める』ことにはならない」と厳しく抗議しました。 引き続き、小田川書記長は次の点での回答を求めました。 「1月23日に、『大綱』で示している内容で、勤務条件性があるとする事項及び労働条件の基準設定にかかわる『相応の措置』などについて、最優先で交渉に応ずるよう申し入れた。また、評価制度の試行についても交渉に応ずるよう申し入れている。それらの点に、2次案で言及しなかったのはなぜか、考えを聞きたい。2点目は、『大綱』でも推進事務局が中心になって改革を進めるとしているが、事務局が使用者として国公労連との交渉を行う立場にあることをあらためて確認したい。3つ目に、2次案の性格について聞きたい」 これに対し、春田室長は、次のように回答しました。 (1)労働基本権については、「相応の措置」を前提に現行の制約を維持することになった。勤務条件に関し代償機能を働かせて制約を維持することとあわせ、「相応の措置」の整理は重要なことという認識は1月にも述べたとおりで、変わらない。明確な制度化は、人事制度の固まり具合を見てこれから図っていく。 (2)2次案の中で「相応の措置」を細かく整理しているかというと、人員枠などについては素案としての整理の考え方は書いたが、他の勤務条件については多方面にわたり、法制的な検討も進める中で整理しなければならず書き込めなかった。 (3)評価が今回の能力、業績を反映した人事制度にとって大変重要なものであるだけに、いかに実効ある形で運用できるかを考えている。そのことから、2次案では評価制度について、より具体的なイメージを提示している。運用できる制度として固めるためにも、試行は真摯に考えないといけないが、人事制度が固まらなければ、試行できないというものではない。 (4)事務局として交渉協議する立場は、制度をとりまとめていくという点で、労働組合と誠実に交渉協議することであり、各省の使用者の立場での交渉を代弁するものではない。全体をまとめて新制度に替える上で調整機能として交渉協議していく。 (5)組合の方で解明を求める事項に答えよという主張は受けとめる。提起された問題点には整理して答えていく立場にあると考えている。国公法をとりまとめる立場で、対応をはかる考えだ。 (6)2次案の性格は、昨年11月に「行政職に関する人事制度原案」を提示した以降、関係者(各省や職員団体)の意見を聞くための機会をもち、その上で、各省と合意できるところを『大綱』にまとめた)。その後、『大綱』をもとに事務局で検討を加えてとりまとめたものが2次案だ。 これから新人事制度の内容を固め、平成18年度の移行を目途に進めている作業の一貫として現段階でまとめたものを提示した。各省での検討や制度設計のベースになるものである。この案をもとに関係者の意見交換で議論を深め、今後の作業に生かす。職員団体と交渉協議を進めるベースでもある。 (7)2次案の中では、「相応の措置」の内容、人事院の関与など、法制的にも適切に進めていかなければならないものがあり、今後の検討の中で適切に措置しなければならないと考えている。 そのような回答に対し、国公労連は以下のように、労働基本権にかかわる問題点を中心にした追及をおこないました。(○は国公労連、●は推進事務局側) ○ 2次案の内容そのものが労働条件を変更する基準の提案ではないか。制度の運用についての各省単位での交渉協議までは責任をもたないから、各省の使用者性まで代弁しないといったが、基準変更についての使用者たる政府の立場で国公労連との交渉に応ずるのかどうか応えてほしい。 ● 新しい公務員制度を組み立てる中で、どういう制度、枠組みにしていくのか、勤務条件に関する制度を含めて設計する。勤務条件にかかわるものにどういうふうに代償機能を入れ込むかは、まさに制度設計の中で整理する必要がある。事務局が調整役でとりまとめる立場で誠意をもって交渉協議していきたい。 ○ 我々は、3つの点で、労働基本権と制度内容との関係を明確にすべきだといっている。1つには、新たな制度での労働条件の基準設定にかかわり「相応の措置」がどう担保されるのか。2つには、例えば能力等級を8級制に設定することを2次案で提示しているが、これ自体、労働条件の変更であり、配分の問題だ。そのような直接労働条件にかかわる事項を、どのような手続きで決めようというのか。3つには、各省段階の運用にかかわり「相応の措置」を制度的にどう保障するのか。3つの点で応えてほしい。 ● 基準の設定で、内閣と人事院それぞれが、どのような役割を発揮するのかや、各省の運用の自主性をどの程度とするのかは、法制面でのつめが必要であることはさきほど言った。具体的にどうなるかは、国公法、給与法など法体系が決まることや、その所管がどこになるか、給与制度の内容がどうなるのかとかかわっている。事務局としては国公法の整理ををまずやるが、そのためにも運用も多少かかわる全体の人事制度がどうなるかの議論が必要だと考え2次案を提示した。法律や人規、政省令に、この人事制度の原案のどの部分をどう振り分けるのかと、労働条件変更になることをどう議論するかということは関連している。法律にしても下位の法令にしても多くの内容があり、それぞれの段階でどう固めていくのかも提示して相談しなければと考えるが、今の段階では整理できない。 ○ どういう仕組みで労働条件を決定していくのかを決めないと、例えば11級を8級にすることの交渉を推進事務局が責任を持って対応しているのかさえ曖昧になる。「大綱」で労働基本権の制約維持を決めたことから、労働条件の基準を誰がどういう仕組みで設定するのかを最初に交渉しなければ、また、誰がどう決めるのかが決まらなければ、不安定な交渉になることを危惧したので1月の申し入れを行った。これ以上、回答を先送りすることは許されない。重ねて聞くが、8級制をあらたな制度の中味として、推進事務局が責任を持って決めていこうとしているのか。 ● 2次案はこれで固めましたというものではない。 ○ 不安定な交渉協議では、2次案でいっている「有益な議論」にはならない。基準設定の「主語入れ」や内閣、人事院、各省の関係について、中心的な労働条件についての議論の素材を示すべきだ。 ● 必要性は十分認識している。2次案では人員枠など一部の制度しかいっていない。他は法制度面の整理が必要だ。 ○ 法制度の検討と並行してやればよい。その検討、整理が進まないと労使の交渉もできないでは、納得できない。 ● 法律を作ってからといっているのではなく、どう手続きを作っていくか、構成をきちんと考えなければいけない。人事院がどういう役割、手続きの体系をとるかなど、全体の整理をしてできてくる。それぞれの行政上の責任を(労働基本権の保障とのバランスをみて)整理する。その作業が必要ということで棚上げということではない。2次案の内容を各事項につき制度的に、労働条件性があるものについてどう代償機能を果たすか並行して検討を進める。今はないとしても示せるようにしたい。 ○ 基準設定で、誰がどのような役割をもつのかということ自体が交渉協議の対象だ。11月段階の交渉でも、その点が不明確であったことが障害となり、まともな交渉にならなかった。それをもう一度やるというのか。「大綱」から4カ月経つ。我々が繰り返し求めてきたことに対して答えていない。 ● 「大綱」以前は、労働基本権の制約維持か解除かの結論が決まってなかったので、相応の措置以前の問題で議論ができなかったのは事実だ。相応の措置の内容について1月から議論が始まったと理解して良いのではないか。 ○ 労使の中心的な争点には応えず、制度の形作りの議論には応じてほしいという進め方は、「大綱」決定までの一方的な対応と同じことだ。例えば、人員枠について「大綱」に書かれたことと同じか疑問だが、設定主体は内閣でという考えを示しておきながら、労働組合との関係については何ら触れていない。その点は「相応の措置」とかかわる重要な問題点だが、交渉・協議をつくすには相当の時間がかかるのではないか。「相応の措置」の内容について、交渉対象から外そうとしているのではないか。 ● そうではない。それはみなさんと詰める中で議論できるように努力したい。法制的関係があり、いつごろになるかもまだわからない。 ○ それではだめだ。 ● 「相応の措置」の主語あるいは組合との関係が確定しない限り能力業績給の議論はできないということか? ○ 考え方が示されていないと議論が行ったり来たりする。 ● それはする。能力級の基準について代償機関が定めるとでも書けばよいのか。 ○ その点を明確に書いていないことが問題だ。 ● それはまさに法制的問題だ。それとも組合の関与がないと相応の措置といえないというのか。極論的にいえば、基本権の相応措置の考え方を示さなければ議論しても仕方ないというのか。であれば、「相応の措置」はまだ書けないが、こうすべきという意見があれば、その意見をもらうことは可能だ。 ○ 意見だけか。 ● 何が交渉協議かは定義していない。 ○ お互いに納得性が生まれることが必要だ。交渉とはそのためのものだ、事務局に都合のよいところだけいただいたでは駄目だ。真剣に良い制度を議論しましょうという立場にならないではないか。人員枠以外ははいつの段階で考え方を示してくれるのか。 ● まだ具体的にいつぐらいとは明確にいえない。法制的関係で整理も必要だ。 ○ それはそちらの問題だ。解明を求めている問題は重要だ。時期はいつになるのか。2次案は、新人事制度を固めるベースだといっているが、どこまで各省当局は交渉対応できるのか、交渉した結果を誰に伝えればよいかなどにもかかわる。それとも、制度改革を進める際や、改革後の新人事制度では、労働組合の関与はできるだけ小さくしようというのか。 ● そういう考えはないが、手順として新しい制度の組み立て方の問題もある。どの枠組みでやるか、それと内容との関係の整合性がとれるよう、ある程度体系的に議論が必要だ。法制的にも少しは詰めたい。両方並行しながら進めねばならぬし、2次案もそういう性格で、そこを固めないと国公法改正はできない。法制と内容で行きつ戻りつし柔軟にやりたい。2次案の中身に入っていないということは、体系的な整理までにはまだいってないからだ。求められている点は、国公法の改正の詰めでは必要で、その前に必ず提示し議論をする。その点は約束する。 ○ 法制面を強調し直前で決着では問題だ。早急に論議の素材を投げるべきだ。 ● できるだけ早く、必要なことは。法制的にも固めるが、そう早い段階は無理だ。 ○ 人員枠については、法制的検討が済んだのか。だから書いたのか。 ● ある程度法制的な検討はした。能力級を入れると、与党との議論で各省の自由度を上げるときに、基本権の問題でどこまでできるかという議論になる。人員枠という新しい考え方であり、そこは基本権とも議論しないといけないので、法制的にも検討はした。 ○ これが他の制度でもモデルになるのではないか。 ● その他の形態もある。例えば、給与の水準は内閣が決め、意見の申し出ができるとはいっていない。(第3者機関による)勧告権などあり、それは慎重に考えている。人員枠の設定方法の考え方を敷衍したり応用させるつもりはない。このように各項目ごとに「相応の措置」がどういう形で必要かを議論してやっていくので時間がかかる。 ○ 評価についても能力等級制を前提にしたものでなければならないはずであり、能力等級制度の固めなしに試行できるのか。 ● 新制度を念頭に置き、その意味を体現した形でないと意味がない。目標、行動基準、各人の受け止めなど、新制度がまだできてない中ではあるが、一定のやり方で新しい思想のもとで試行をやる。もちろん何のためにやるのかも含めて試行は否定されるものではない。準備も必要だ。 ○ 能力評価のもととなる能力基準の勤務条件性についての整理が重要だ。この点も含め、労働基本権問題の早急な整理が必要だ。代表的、中心的なものをまず初めに整理して議論すべきだし、それが煮詰まらない限り、他職種の検討や試行の強行には納得できない。それは交渉の打ち切りに等しい。 本日の申し入れについては、連休明けに検討結果をききたい。 ● 承知した。 以上 【※別添・申し入れ書】2002年4月26日 行政改革担当大臣 石原伸晃 殿
日本国家公務員労働組合連合会 「公務員制度改革」に関する交渉・協議について政府が昨年12月25日に決定した「公務員制度改革大綱」にもとづく検討作業が、行政改革推進事務局を中心に進められています。そのよなう中で、4月25日には「行政職に関する新人事制度の原案(2次)」なるものが提示されました。国公労連は、先に閣議決定されている「大綱」が、その内容はもとより決定にいたる交渉・協議の不十分さをはじめとする経過にも重大な問題意識をもっており、「大綱」の撤回・再協議を強く求めています。そのような基本的な意見は持ちつつも、現実に検討作業が進められている状況もふまえ、本年1月23日には、「『公務員制度改革』に係る申し入れ」をおこなっているところです。 しかし、昨日提示された「原案(2次)」は、その「申し入れ」に全く応えていないばかりか、能力等級制度の人員枠では、その設定主体を内閣とし、人事院による意見の申し出を「できるものとする」と規定するという、労働基本権保障の重大な後退が含まれています。また、能力等級の等級数、能力給などの水準などをはじめ、現行の労働条件を変更する内容が、労働組合との交渉・協議もないまま、かつ、その決定手続きも明確にされないままに一方的に提示されています。このような状況は、政府・推進事務局が、くり返し「誠実に交渉・協議」を進めると述べてきたことが、空約束であり、反故にされたものと受け取めざるをえません。そのことは、国政上も最大限の配慮が求められると同時に、労使関係安定という公益の観点からしても尊重されなければならない公務員労働者の基本的人権を「最善の使用者」である政府が侵害するという重大な問題になりかねません。 以上の観点から、あらためて下記事項を申し入れ、早急な回答を求めます。なお、回答は、文書により、5月8日までにおこなわれるよう重ねて要求します。 記 1 公務員労働者に対する推進事務局の「使用者性」をあらためて確認し、労働条件変更となる制度改革については、合意をめざした交渉・協議をつくすことの確認を国公労連との間でおこなうこと。2 公務員労働者の労働基本権について、「相応の措置を確保しつつ、現行の制約を維持」するとした「大綱」をふまえ、賃金決定やその基礎となる能力等級制度などの基準決定と運用の双方にかかわる「相応の措置」について速やかに使用者としての検討状況を示し、国公労連との交渉・協議を開始すること。 3 「労働条件決定システム」(相応の措置)についての交渉・協議が整わない間は、行政職以外の職種への「新人事制度」適用の要否等や、評価制度の試行の検討作業はおこなわないこと。 | |||
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