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行革推進事務局は、10月16日、各府省及び労働組合に対して「新たな人事制度の設計の考え方について(議論のたたき台)」(以下たたき台と略)を提示し、翌17日、国公労連に内容の説明を行いました。説明会には、国公労連から山瀬副委員長、小田川書記長ほか各単組代表を含めて8名が参加し(公務労組連絡会からも若井副議長、浜島事務局長を含む3名が参加)、事務局側からは高原参事官ほかが対応しました。 以下、推進事務局が行った「新たな人事制度の設計の考え方について(議論のたたき台)」についての説明及びやりとりの要旨を掲載します。(注:○は国公労連、●は推進事務局) □■推進事務局の説明要旨■□ 「たたき台」は、国公法改正に向け、労働基本権制約とのかかわりで内閣と人事院の関係について、現段階の基本的考え方を示したものである。 今回の公務員制度改革は、行政改革の一環として内閣機能の強化策として検討している。国民に対して行政運営の責任を有する内閣が、中央省庁改革の主眼である内閣主導の理念の下、責任をもって人事制度を設計し、人事管理の事務の統一保持のため必要な総合調整機能を充実させることが適当ということは「大綱」でも述べている。一方、職員の利益の保護及び人事行政の中立性・公平性の確保も引き続き重要であるということで、人事院が一定の役割を適切に行う仕組みとするとともに、その運用を充実・強化することとした。公務員の労働基本権制約の代償措置の考え方はしっかりと確保していく。 「たたき台」の「4.政令、人事院規則など具体的な下位規範の設定等に当たっての考え方〜人事制度の具体的な仕組みを考えるに当たっての考慮事項」からが、「相応の措置」を誰が決めるかという、いわゆる「主語入れ」の詳しい内容となっている。主に行政の機動性・効率性など、国民への適切な行政サービスの提供、行政の民主的監視や国民に対する行政の透明性の確保、国民への内閣としての責任の明確化、職員の労働基本権制約に対する適切な代償措置の確保、行政の中立性・公平性の確保、これらの観点を重視していく。 このような複数の目的の存在を踏まえつつ、新人事制度の具体的な仕組みについて法律で書ききれないものが政令や人事院規則などの下位規範に委ねられることになる。この時の整理をどのようにするのかであるが、職員の利益保護については「(1)職員の利益の保護の関係」にあるとおり、下位規範で規定する内容が職員の利益に及ぼす影響の度合いに応じ、職員の利益の保護をその任務とする人事院の適切な関与等を組み合わせた適切な仕組みとすることが必要となってくる。 これは大きく分けると3つになると考えている。一つめは「給与、勤務時間等の勤務条件」(たたき台、ア)についてであり、これに関する仕組みとしては、基本部分を法律で規定し、勤務条件、特に給与水準決定に際して、人事院勧告制度を設置する。下位規範に委任する場合には、人事院規則に委任する。個別具体的な問題に対しては、人事院に対する行政措置要求及び不服審査請求の制度を用意する。二つめは上記「給与、勤務時間等の勤務条件」以外で、内閣自らが政令で定める事項のうち、「能力本位の人事管理を行うための基準など、…個々の職員の勤務条件を決定する際のプロセスにおける基準・手続である事項」(たたき台、イ‐1)、三つめが「効率的な人事配置を行うための基準など、…勤務条件に関係する可能性がある事項」(たたき台、イ‐2)であり、これらは具体的な任用に際しての基準となる事項である。 勤務条件性の整理の仕方は受け入れられない! □■推進事務局との主なやりとり■□ 【「議論のたたき台」の位置付けは】 ○ 「大綱」では、労働基本権制約について「相応の措置を確保しつつ」となっていたが、今回の「たたき台」の性格と位置付けは何か。 ● この「たたき台」は、今後行われる国公法の改正作業にあたり、大綱に書いてある基本的な考え方を法律、政令、人事院規則など下位法令に条文化して新人事制度を決める際、それに誰が関与するのかについての考え方を示したものである。組合側からも、大綱の具体化にあたって誰が主体的に関与するのかが不明であると指摘を受けてきたし、公務員の基本権制約と大きく関わる部分もあるので、条文化の前に頭を整理して意見交換するために示したものである。改正になるのは国公法だけでは済まない。当然、下位法令や別の法律から落ちる場合もあるが、共通項としての位置付けにある。 ○ 地公法では、首長と職員の関係で国の場合と公務員制度上の違いがある。それが明らかであるのに、国家公務員と地方公務員を共通基盤で議論していいのか。 ● 地方公務員法については、大綱の趣旨からいって国公と共通した考え方で扱われることになると思うが、総務省公務員部が作業している。われわれが責任を負っているのは、国公法の範囲だけである。だが政府としては提案する時に、同じ公務員の中で国公と地公がバラバラではいけないので、当然そこは総務省公務員部と調整していく。だが、「たたき台」をもとに議論するのは、国公法のことだ。こちらが固まる前に地方はどうなるのかを聞かれても分からない。そういう前提で説明させていただく。 ○ 労働基本権の制約という側面から考えた場合、地方公務員については労働基本権制約の代償措置に関する検討はどこが行うのか。 ● それについては総務省公務員部となるだろう。公務員部も、こちらの固まり具合を見ながら作業を進めることになるのではないか。 【公務員制度の現状認識は】 ○ 公務員制度の現状認識として、現行のように人事院規則に相当数委ねられていて弊害があるのは適切でないということだが、具体例はあるのか。 ● 憲法73条で公務員の処遇は内閣が定める事項とされているが、現行では国公法で下位法令や人事院規則にほとんど委ねられており、各府省の適材適所の運営が阻害され、国民に責任を持つ内閣が決定する事項がほとんどない。これについて大きな問題意識を持っている。 ○ 人事院は内閣の所轄ではないのか。人事管理(労働条件)の基準設定において人事院の権限を内閣に移さなければいけないような現状があるということか。 ● 実際の人事管理をやっているのは各府省であり、大綱を作るに当たって、内閣主導の行政運営の観点から今の公務員制度のどこが悪いのかを考えた。現行の人事院の関与のどこが悪いというわけではない。その問題意識を受けたわれわれの答えは大綱に書いてあるとおりである。次に、どう改革をしたらいいかという問題の答えが、この「たたき台」である。その上で、どういう制度を具体化しようかとかは、その先の議論である。今回は、労働組合側から、勤務条件との関わりで誰が制度を決めるのか分からないという指摘を受けたので、総論としてここに示したということだ。 【「人事当局と職員とのコミュニケ−ション」とは】 ○ 新人事制度における改革の方向として、「人事当局と職員とのコミュニケーションの充実」が取り上げられているが、これはどういうことを指しているのか。ここでいう「職員」とは、個々の職員なのか、それとも職員の集団も含んでいるのか。 ● 広い意味での職員である。一人一人の職員というのを強調しているわけではなく、まだ考え方のイメージだ。コミュニケ−ションの充実と言っているのは、これまで個別の職員と当局のコミュニケ−ションが十分でなかったところがたくさんあり、そこが問題だったので、例えば評価者と被評価者の面接とか苦情処理、公平審査制度、それらをまとめてコミュニケ−ションの充実と言っている。 ○ 「職員と人事当局」の関係はどのように整理しているのか。労働契約が前提なのか、それとも特別契約の関係か。「たたき台」は基本権制約の「相応の措置」とは無関係だと言うが、具体的な下位規範の設定等に当たっての考え方の中で、内閣自らが政令で定めるとした事項に関し、「個別の評価に際しては面談、評価結果のフィードバックや苦情処理の仕組みを導入」とあるところをみると、これが「相応の措置」にあたると考えているように読めるのだが。 ● 代償措置の「相応の措置」の定義はない。「3.今回の新人事制度における改革の方向」の「(3)労働基本権制約の代償措置の確保」に、要約であるが、(1)法定された勤務条件の享有、(2)勤務条件についての人事院の国会及び内閣に対する勧告又は報告、(3)準司法機関的性格をもつ人事院に対する職員の行政措置要求及び不服審査請求、の3つをあげている。これらが代償性の考え方の基本であって、今後もしっかり維持すると書いてある。 ○ 「人事当局等」とは何なのか。この文書の中でも、後の方にはカッコ付きの内閣があり、ただの内閣もある。内閣、各府省、人事院を一括しているのか。それとも各省人事課のことか。 ● 現行では、例えば職員から内閣所轄の人事院への不服審査請求制度がある。これから面談とかが出来るようになるとすると、「人事当局等」に上司や評価者も入ってくるものと思われる。 ○ 評価基準を設定する内閣も、「人事当局等」に入るのか。 ● 私たちも、いうなれば内閣と言えるが、今日のような話し合いもコミュニケ−ションの充実になるということだ。具体的にどこまでが対象に入っているのかは分からないが、排除するものでもない。まだ考え方の整理を作った段階であって、法律論的につめたわけではない。 ○ 各大臣の負う「人事管理についての主体的責任」とは何か。制度の基準設定と各省の責任、運用の責任の二面性が考えられるが、どう整理しているのか。 ● これまで各大臣は任命権者だけであったのを、人事管理権者という概念を作り、積極的に関与してもらう。つまり、職務分担として行政の分担を持つそれぞれの大臣に、人事管理権者も合わせようとしているということだ。 ○ 原則は法律で決め、各大臣には運用権限を置くというのでは、今と変わらないのではないか。 ● 法律論でつめたわけではない。例えば、人事院に任せていて55年間も発動されていない制度(人事行政改善勧告制度)もある。人事院に聞いても、そういう機会がなかったとか、事前の調整で済んだとか言う。そういうものを無くし、各省が責任を持って人事管理を行い、それを人事院が事後チェックする枠組みを考えている。 【労働基本権制約の代償措置の確保は】 ○ 「今回の新人事制度における改革の方向」の中で「労働基本権制約の代償措置の確保」に触れている。これに関連して言えば、6月のILO・結社の自由委員会で岡山県高教組事案についての勧告が出ているが、過去の公制審の「残された3課題」(注)を含めて、こうしたILOの要請を頭に置いていると理解してよいか。 ● 当然考慮している。逆を言うと、だからこそ労働組合も懸念があって、今回も提訴しているのではないのか。 ○ 勤務条件法定主義を強調するが、一人一人の勤務条件を国会がチェックするのは無理ではないか。基準設定の主体と運用主体の関係をどう考えるのか。 ● 労働基本権制約の代償措置を書ききれなかったものは下位法令で決まることになるが、基本は国会が決める。全て法律で決めることが出来ないというのは、指摘のとおりだ。人事管理権者に委任するなら運用をどうするか、条文化されたときには明らかになるだろう。当然、相応の措置についても、主語が誰になるのかハッキリすれば、別途の検討の余地が出てくる可能性もある。 ○ 人事管理について、国会が基準(根本)を設定し、内閣が運用基準を決め、運用は各府省でということなら、各段階で相応の措置について明らかにすべきだ。 ● 今の段階で皆さんに対してお答えできるのは、「4.人事制度の具体的な仕組みを考えるに当たっての考慮事項」にあるとおりで、職員の労働基本権制約に対する適切な代償措置の確保として、勤務条件の法定、人事院の勤務条件についての勧告・報告、人事院による行政措置要求及び不服審査請求、を考えているということだ。 ○ 推進事務局が言うような新人事制度の設計を行う場合でも、それに伴ってそれぞれの段階で労働基本権と代償措置との関係を整理してもらわなければならない。 ● 何がそれぞれの範囲内で、何が議論する部分になるのかは、これから明らかになるだろう。下位法令や規範を考えて、これから示していきたい。組合と当局の関係については理解しているし、主語入れのまとめたものは現段階ではちゃんとしたものは作っていないが、出来たときには組合に対して必ず出すつもりだ。 【勤務条件性の区分理由は】 ○ 何をもって勤務条件性を3つに区分け整理したのかを明らかにすべきだ。「たたき台」では、憲法上、法定することとされているのは「賃金、就業時間、休息等」であるとしているが、そのように区分けした根拠は何なのか。民間における労使関係を根拠としてるのか、国労法におけるものか、それともこの改革に当たって一から考えるということなのか。 ● それは総合的に考えることになる。公務員には国公法があって、労働基本権制約や全体の奉仕者という面があるので、民間のものは直接持ってこれない。今回、3つに分けたのは、それらの事情も考えたうえで、機動的、効率的な行政をめざすために個々検討したもので、ある事項が勤務条件であるかどうか決めるとき、どう整理するのかを示したものである。勤務条件とそれに関するものはいろいろあり、色の濃い薄いは確かにある。従って、ご指摘のように個別の概念で切り出しをしないと、議論不足になるというのは分かる。 ○ 勤務条件の有無の区分や、管理運営事項だが勤務条件に影響する度合いで区分するという整理の仕方は、受け入れられない。少なくとも検討のスタンスは、勤務条件性を広く認めた上で、公務の特殊性による制約から、代償措置を必要とする整理が妥当ではないか。評価に際しては面談、評価結果のフィードバックをすれば労働基本権上の問題は生じないとする整理も受け入れがたい。行政措置など個別紛争と同時に、集団的な労使関係を検討すべきだ。 ● 従前と今度は違うものになる。内部にもいずれ話をする。 【中立性・公平性の関係は】 ○ 中立性・公平性の関係では、「政治的行為の禁止又は制限に関する事項を除き」とあるが、何故除くのか。 ● ここで言っている「中立性・公平性」は、法律用語としての中立・公正ではない。ご指摘の部分に関しては、内閣がやると党派的懸念が強いから除いた。実施機関の仕事を減らさないようにと見られるところもある。 ○ 職員の利益保護の具体的な仕組みに関し、中立性・公平性の確保に係る下位規範について、中立性・公正性が損なわれた場合の是正等の具体的な措置として、人事院が適正に関与するとあるが、これはどういうことか。また、「人事院の特別の関与」という同じ言葉が、内閣が政令で定めるとした事項(たたき台、イ)にもあるが、どう違うのか。 ● 現段階で明らかとなっている人事院の一般的な関与は「意見の申出」であり、基本的には事後チェックであるが、「特別の関与」の内容は今後検討することになる。なお、後のほうの「特別の関与」とは、いわゆる事前協議制のことである。給与、勤務時間等の勤務条件に際しては、人事院勧告制度を設置すると書いてあるとおりであって、法律でどうなるかはまだ決めていない。 【「議論のたたき台」の扱いは】 ○ 「議論のたたき台」ということは、基本的なところも含めて、見直しの可能性があるということか。 ● 相当自信作として出したものであることは間違いない。考え方を整理したものを「たたき台」という言い方でお出しした。従って、これが変形してぐしゃぐしゃになると言うことは考えていない。組合から完全に論破されたら、という場合はあるが。本来は条文の形で見てもらうべきだと思うが、要望もあったし、労働組合がどう考えているのかは立法化の過程でも非常に重要である。だからこうやって「たたき台」という形でもお渡ししている。 (以 上) (注)公務員制度審議会の「残された3課題」1965年の国家公務員法改正でも決着が図られなかった、(1)消防職員の団結権の保障、(2)(労使)交渉不調の際の調停方法の新設、(3)団結権禁止規程違反などに対する刑事罰の撤廃、の3点をいう。 |