2002年12月26日《No.132》

行革推進事務局長と交渉(12/19)
ILO勧告にそった抜本的改革を要求!

 国公労連は12月19日午後、行革推進事務局に対し、去る11月21日に示されたILO勧告にそって公務員制度の抜本的な改革を図るよう求めるとともに、「公務員制度改革大綱」を撤回し、国公労連と十分、率直かつ有意義な交渉・協議を速やかに行うよう求め、「ILO勧告にそった公務員制度改革を求める要求書」(別紙参照)を提出しました。国公労連側は堀口委員長、山瀬副委員長、小田川書記長、岸田書記次長ほか4名が参加、事務局側は堀江局長、春田室長、高原参事官ほかが対応しました。やりとりの概要は以下のとおりです。(注;○は国公労連、●は推進事務局)

【国公労連の主張】 ILO勧告を受け止め、「大綱」を撤回せよ!
○ 今日お渡しした要求書に基づき、公務員制度改革を今後どうしていくのか、私どもの要求をどのように考えているのか、回答を求める。11月21日の勧告において、日本の公務員の労働基本権制約の現状がILO89号、97号条約に違反していることが指摘され、公務員制度改革大綱がその制約を維持するとしたことについて明確に再考を指示した。同時に、この間の推進事務局の検討作業の進め方及び労働組合との対応のあり方についても、厳しく問題点を指摘している。2年近くの議論の上に出されたものであり、こうした経過と勧告の内容を捉えるなら、大綱を撤回のうえ、仕切直しをして、これまでの国公労連の主張やILO勧告の主旨にそって改めて協議を行うべきである。国際世論の変化や国内マスコミの厳しい批判を受けて、推進事務局としてこれらをどう受け止め今後どのように進める方針なのか、お聞きしたい。

【推進事務局長の回答】 「大綱」に固執しつつも、十分な交渉・協議を約束
● 公務員制度を抜本的に改革するためには行政サービスにからんでいろいろな方面の意見を聞きつつやることが必要だと思う。これまでもそうした認識でステップバイステップで作業を進めてきて、昨年の大綱まで来たと承知している。ILO勧告が出されたことも承知しているが、今回の勧告を読むと過去の見解と異なるところがあり、整合していない部分もある。今後、内容を十分に精査した上で、政府として理事会に対し日本の現状など説明を行っていくことが必要であると考えている。一方、公務員制度改革の問題は山積しており、大綱に基づいて作業を進めているが、検討を進めるに当たっては皆さんとの協議が重要であると考えている。皆さんだけでなく広く国民生活にも影響することを考えると、今後も引き続いて議論を真面目にやっていきたい。

【回答を受けての主なやりとり】
○ 主語入れなど重要な議論のポイントについて、議論が詰まっていないのが事実である。10月にたたき台が示されたことが障害となって、新人事制度の中身の議論が出来なかった。交渉の場は持ってもらっているが、ILO勧告が言うとおり、単に聞くだけではなく、推進事務局と国公労連の実質的な交渉、意味のある交渉をどう具体化し保障するのか。集団的労使関係でいえば国公労連は各単組の代表であるし、推進事務局は政府の代表者だ。明確な回答を求める。2点目は、労働基本権の制約を維持するというが、そのための相応の措置についてたたき台でも明確にならなかった。各府省・内閣と人事院の関係を整理するのなら、団体交渉権の問題について、たたき台をベースにするとしても現在どのように考えているのか提案があって然るべきだ。具体的に改めて提案する準備があるのかどうか。それがなければ局長が言うような実質的な協議にはなり得ない。また、勤務条件法定主義とも関わって、こちらの理解では、労働基本権を制約するのであれば労使自治の制約を受けて、使用者側も一定の制約を受けなければバランスが取れないはずだ。そこに矛盾があって、その整理が付かないところに混乱の原因がある。このままでは労使関係でも良い関係は生まれないのではないか。
● 私ども内閣官房が公務員制度改革を進めるに当たって調整役としての責任を果たすものであるので、職員団体と公務員制度改革の中身について交渉していく立場であると考えている。労働基本権制約を維持するための相応の措置については、今後の法制化に向けた議論の中で、たたき台をベースに話を深めることとなっている。12月9日にもお話ししたが、法律改正に向けて、どういうところで話を進めることが出来るのか、そのテーマの持ち方も工夫して交渉・協議が出来るようにしたいと考えている。前回も進め方についての意見をもらったし、実質的議論が出来るやり方をという意見は十分に分かるので、相談していきたい。
○ 推進事務局がこの問題の調整役であることは承知している。集団的労使関係として、民間でもやっているやり方だ。だからこそ労使という関係で議論する姿勢も必要ではないか。国公法の改正が国公労働者の労働条件の変更につながることは明らかである。各省の代表、各単組の代表として交渉することがこの間の経過と整合する。たたき台をベースに相応の措置を検討すると言うなら、その範囲でも少なくとも内閣と国公労連、各省と各単組の対応で議論することが必要だ。
● その点はまさにたたき台をどう進めていくか、より具体的な検討をどのように進められるか、議論が進んでいないところだ。法制化に向けてどう議論できるか、どういうふうに整理するかなどについて、具体的協議が進められるよう努力するし、どういう形で議論したらいいのか相談していく。
○ 昨年、総務大臣も労働基本権制約と代償措置はパラレルの関係にあると答弁している。相応の措置の中身の問題はたたき台から見ても提案されて然るべきだ。そこを是非ふまえて対応すべきだ。
● 基本的に大綱の撤回は考えていない。ただ、更に詰めていかなければならないところはある。その時は関係者の意見を十分聞いていく。100%聞き入れることは難しいかもしれないが、プロセスとしては大事だと思っている。最終的には政府として決断するが、閣議決定の時も憲法上の問題を確認した上で進めたと理解している。労働基本権の制約に代わる措置をどうするか、人事院の関わり方をどうするのかなど、議論すべきであると思うし、当然意見を聞きながら進めていく。憲法に違反することをやるつもりは全くない。ILO勧告は正直思いもしなかった内容だったが、今後、現行の人事院勧告制度の下でどうなるのかなど全般の問題を含めて、制度改革についての考え方を説明していくことになる。我々は国民のための制度を考えているし、公務員はどうあるべきか考えることが必要だということでやっている。個々具体的なことについて、いろいろな意見があり、労働基本権から考える意見もある。労働基本権の制約維持を前提に検討作業に入っており、大綱の枠の中で実現を図り、その過程で話を聞くのが基本的スタンスだ。

 以上のやりとりの後、最後に堀口委員長が、「公務員制度改革は国民生活に大きく影響するものであり、いろいろな意見を聞きながら議論を進めるよう、改めて申し入れる。これまで議論を重ねて、新人事制度に対する疑問を出してきたが、十分な回答は出されていない。こうした中でILOから勧告が出された。局長はステップバイステップで議論をしてきたと言ったが、交渉の回数そのものは否定しないが、協議の進め方や改革内容に我々の意見が全く反映されていない。ILOはその不当性を指摘したのだ。もう一度、労使の代表的立場同士で話し合うべきであるし、国際基準から外れたような形で進めるべきではない。勧告に対し国内事情を主張したりせず、真摯に聞くべきだ。12月9日に3法案一括問題を協議したときも、今後の交渉・協議は改めて相談していくと回答したはずだ。今日の交渉はそれを受けたものだが、相応の措置について具体的にどう考えているのか、問題を投げかけた。その点と今日要求した中身を含めて、今後のやり方について誠実に対応するよう求める。」と述べ、交渉を終了しました。

(以上)


( 別 紙 )  

                          2002年12月19日

 行政改革担当大臣
  石 原 伸 晃  殿


                    日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 堀 口 士 郎   

ILO勧告にそった公務員制度改革を求める要求書

 公務員制度は、「国民全体の奉仕者」たる公務員の基本的性格を担保し、かつその労働条件の基本を定めるものとして、極めて重要なものです。それゆえに、公務員制度改革の検討過程においては、広範な国民的論議と併せて、使用者たる政府・推進事務局と当該の国公労働者・労働組合との十分な交渉・協議が不可欠です。
 こうした観点から、私たちはこれまで、広範な国民とともに、政府・行革推進事務局が進める「公務員制度改革」の問題点を指摘するとともに、「政官財ゆ着」の根絶、「天下り」の禁止や特権的キャリア制度の是正など、真に国民のための民主的公務員制度の確立を求めてきました。しかし、推進事務局はこうした声を顧みることなく、昨年末の「公務員制度改革大綱」にもとづく2003年中の国公法等「改正」案の国会提出など、当初のスケジュールに固執して検討を推し進めています。
 こうした中で、日本政府の「公務員制度改革」に関わって全労連などがILOに提訴していた案件について、ILO理事会は、11月21日、日本の現行公務員制度そのものがILO87号・98号条約に違反しているという、結社の自由委員会の「報告・勧告」を承認しました。そのうえで、ILO勧告は、「政府は公務員の労働基本権に対する現行の制約を維持するという言明された意図を再考すべきである」として、「大綱」そのものの「再考」に言及しています。
 このことは、私たちの提訴内容が国際的にも支持されたことに他ならず、去る10月16日に提示された労働基本権制約の「相応の措置」に関わる「新人事制度の設計の考え方(議論のたたき台)」の不当性にも連動するものであり、政府・行革推進事務局はこのことを重大かつ真摯に受け止めるべきです。
 以上をふまえ、貴職に対し下記のとおり要求しますので、誠意ある回答を求めます。

● ILO勧告にそって公務員制度の抜本的な改革を図ること。そのため、「公務員制度改革大綱」を撤回し、私たちと十分、率直かつ有意義な交渉・協議を速やかに行うこと。
以  上

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