2003年4月15日《No.141》

公務員制度改革で総務省と緊急交渉
 交渉協議のあり方、労働条件性明示、労働基本権等で
 総務省のスタンス明確にした態度表明を

 国公労連は本日午前、総務省に対し、行革推進事務局が進めている国公法等の改正作業にかかわって、緊急の申し入れ交渉を実施。労働条件変更にかかわる公務員制度改革作業の進め方や内容に関し、使用者政府としての立場から、推進事務局に対して必要な申し入れを行うことを求めました。
 交渉には山瀬副委員長、小田川書記長以下5名が参加。総務省側は人事・恩給局の戸谷審議官が対応しました。
 冒頭、小田川書記長は、「3月末に国公法等の条文改正案が非公式に示されたが、この間の進め方・内容ともに不満がある。労働条件変更にかかわる実質的な協議の保障もなく、ILOも指摘し、戦後の懸案である労働基本権の整理問題も残されたままだ。公務員制度の所管省である総務省として、現在の公務員制度改革の進め方や労働基本権問題への意見表明とか、合意なしに閣議決定など乱暴なやり方を避ける努力をすべきではないか」と主張。それを踏まえて、以下の疑問点を示しながら、総務省のスタンスを質しました。
(○=国公労連、●=総務省)

 ○ 公務員制度改革が公務員の労働条件変更につながる以上、総務省としても、労使協議が尽くされるべきだと考えないのか。
 ● 今回の改革は、特命で内閣の行革推進事務局中心に進めている。その進め方や内容については一元的に事務局が答える方がよい。われわれが答えるとしても、事務局とすり合わせの上で行うことになる。この問題では、総務省は事務局に協力する立場だ。聞くところによると、事務局は交渉・協議を一生懸命やると言っている。そのスタンスで進められると考えている。
 ○ 中央人事行政機関として、労働組合との協議の必要性をもう少し深めて議論してほしい。それは国公法以外の下位法規の整理などにもかかわる。その点を事務局に対し、中央人事行政機関として申し入れることは可能なのか。
 ● 現時点でその必要性はあるとは思えない。組合の意見は伝えられるが、事務局は「努力している」といっているので、重ねていうことはどうか。もともと、制度の改正作業で議論の対象となる部分があり、その中で意見をいうとか、整理に努力している。その中で協力して早く進めることは必要だが、申し入れは考えていない。
 ○ 事務局は使用者というより、いわゆる政府の立場。専門の司(つかさ)の立場から必要な意見をしかるべき時期に行うことはありうるのではないか。総務省は事務局と一体ではないはず。
 ● 公務員の問題を扱う上で、組合の方々と互いに向き合ってやっていくことは重要だとは前から言っている。
 ○ 内容にかかわって、片山総務大臣は能力等級制は勤務条件性が薄いなどと積極的に発言しているが、これは総務省としての見解か。
 ● 事務局から聞いた限りでは、それは勤務条件からは遠いと。しかし、そこは制度の作り方の問題であり、公式の答えは事務局に聞いてほしい。
 ○ 急に勤務条件に遠いといわれても、そうはいかない。級別定数は労働条件性が高いとしていたこととの関係はどう変わったのか、説明してほしい。
 ● 能力等級制度の中でそこをどう考えるのか、制度を固める中で結論もでてくると思う。推進事務局の方で主張してほしい。
 ○ なぜ勤務条件性が薄いのかについても、労使で議論すべき点があるのではないか。「管理運営事項によって影響を受ける勤務条件は交渉事項」という公務員制度審議会答申との関係整理も残される。あれは昔の話ではすまないし、総務省の労使関係のあり方検討グループでも自明の理とされていたことであり、これも議論の俎上に上るべきだ。
 推進事務局に対しても、われわれの懸念を伝えてもらう時期になっている。今日の質問事項について、正式の回答を求める。
 ● 事務局にガンガンつめてもらうことも含め、よろしくお願いしたい。

 最後に、山瀬副委員長は、「昨年11月のILO勧告に対しては総務省が真っ先に政府見解を出したはず。公務員制度改革大綱の具体化に向け協力して作業しているという以上、総務省としてその作業をどう見守るのか。管理運営事項や級別定数を含め、それが変わる時には、勤務条件との関係からその問題点を指摘するスタンスをこそ期待するし、大事な時期には事務局に対する申し入れも必要だ」と主張し、交渉を終えました。

(別添)
 内閣総理大臣  小 泉 純 一 郎   殿
 総 務 大 臣  片 山 虎 之 助 殿

2003年4月15日
日本国家公務員労働組合連合会      
中央執行委員長  堀 口 士 郎  

国家公務員法等「改正」作業にかかわる申し入れ

 さる3月28日、行政改革推進事務局から各省に対し、国家公務員法の一部「改正」等にかかわる条文案が非公式に提示され、極めて短時間での意見提出が求められたと承知しています。私たちは、そのような事実に驚きと同時に激しい怒りを禁じ得ません。
 今次の公務員制度「改革」にかかわる国公労連と政府の争点は、「改革」の進め方と能力等級制度導入などの内容、及び人事管理制度変更にともなう集団的労使関係のあり方の3点に集約されるところです。
 とりわけ進め方にかかわっては、2001年12月の「大綱」決定はもとより、その後の経緯でも、労働組合をはじめとする関係者との協議を無視した独断的な「改革」作業に対し、国公労連は労使の立場に立った有意義な交渉・協議をくり返し求めてきました。昨年12月19日にも、前月のILO勧告もふまえ、「労働基本権制約の現状維持」とする「大綱」決定の見直しも含め、誠実な交渉・協議を申し入れたところです。しかし、今日にいたるも「(国公労連との)具体的、実質的な交渉・協議」を言明した12月19日の交渉結果は履行されていません。そのような中での、前述の事態であり、「大綱」決定時をこえる推進事務局の不誠実対応と言わざるを得ません。
 言うまでもなく、国家公務員法等「改正」は、行政運営に直接影響すると同時に、公務員労働者の労働条件変更をともなうものです。それだけに、開かれた場での関係者との交渉・協議をつくすことが求められています。そのことが重視されないことに、批判と不満が噴出するのは当然のことです。
また、経済の国際化が推進される中で、労働基準についても国際基準への適合が求められており、そのことからして、ILO結社の自由委員会「中間報告、勧告」を今次「改革」で具体化する努力が政府には課せられていると考えます。
 国家公務員法等「改正」条文案の内容以前の問題として、現時点までに明らかになっている「改革」の進め方及び改革課題の設定については、その不適切さを指摘せざるを得ません。そのことから以下の事項を緊急に申し入れ、誠意ある対応を要求します。

1 昨年11月のILO結社の自由委員会「中間報告、勧告」にそった公務員制度改革をおこなうため、労使の協議を速やかに開始すること。

2 国家公務員法改正については労使間の交渉・協議をつくすこととし、合意が成立しないままに「改正」法案を閣議決定することは断じておこなわないこと。  
        (以 上)

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