※全労連「公務員制度改革」闘争本部発行:「公務員制度改革」闘争ニュース2003年5月16日No.25より転載。
一部マスコミが「関連法案、今国会提出見送り」などと報道するなか、衆議院内閣委員会は16日、一般質疑がおこなわれ、民主・公明・共産の各党が「公務員制度改革」にかかわって質問しました。
石原行革担当大臣は、「今国会への法案提出めざして努力する方針には変更はない」と答弁するなど、法案の閣議決定、国会提出にあくまで固執する姿勢をしめしました。
この日の委員会には、全労連「公務員制度改革」闘争本部で傍聴行動を配置し、のべ16名(国公労連9名、自治労連2名、全教2名、事務局3名)が参加しました。
◆「新聞記事にはびっくり仰天した」と石原大臣
午前9時から開かれた内閣委員会の一般質疑では、民主党の中沢健次、山内功、公明党・遠藤和良、共産党・吉井英勝の各議員が「公務員制度改革」問題で政府を追及しました。
中沢議員(民主)は、「坂口厚生労働大臣が4月28日に、ジュネーブのILO本部を訪れ、ソマビア事務局長に会った。坂口大臣は、公務員制度改革には、(1)国内で政府と労働組合が話し合う、(2)その結果をILOに伝える、(3)そのうえでILOの意見を聞き、(4)政府としての最終的な判断をする、という4段階の手順が必要だと公言している。そのことをどう考えるのか」と、石原大臣に認識をただしました。
石原大臣は、「坂口大臣から口頭でうかがった。組合との話し合いを、ILOには暖かく見守ってほしいという考え方を示したものだと聞いている。事務レベルをふくめ、労使での十分な交渉・協議を尊重したい」と答弁しました。
また、石原大臣と野中自民党公務員制度改革委員長が会談し、今国会への法案提出を断念したという新聞記事の事実関係を問い質すと、石原大臣は、「記事にはびっくり仰天した。記者の先読みではないか」としたうえで、「できるだけ一致点を求めて今国会に法案提出をめざす」と、政府の方針には変更がないことを言明しました。
民主党からは、その他、山内議員が、政官財の癒着や「天下り」問題、能力等級制度にかかわる評価制度などについて質問に立ち、公明党の遠藤議員も、関連して質問しました。
◆「見切り発車で閣議決定するな」には明確な答弁なし
共産党の吉井議員は、(1)交渉・協議をつくし「見切り発車」で閣議決定しないこと、(2)ILO勧告に応えた国内法整備などの努力、(3)能力等級制度の勤務条件性などの点について、石原行革担当大臣を追及しました。
労働組合との交渉・協議にかかわって、吉井議員は、「国公労連のホームページでは、ILO勧告をふまえた検討を求める国公労連と、『大綱』の枠内での交渉・協議を主張する推進事務局とのやりとりが報告されているが、勧告を受けいれがたいとする政府見解が前提では、何回、交渉しても平行線なのではないか。ILOが求めるように、労働基本権問題について広く関係者の意見を聞くべきだ」と迫りました。
石原大臣は、「ILO勧告に対しては、3月末に追加情報を出した。労働基本権の議論は否定するつもりはない。古くて新しい問題であり、人権にもかかわることから、職員団体ともよく相談しながらすすめていきたい」と答弁しました。
さらに、吉井議員は、「ILO勧告は、連合と全労連の2つのナショナルセンターの提訴にもとづくものだ。連合だけでなく、両者と協議をすすめる考えはあるのか」との質問には明確な答弁がなく、「『すべての関係者との意義のある協議』というILOの要請に応えることこそ重要だ。見切り発車で関連法案を閣議決定しないと明言せよ」と迫ると、石原大臣は、「ILO勧告は、あくまで『中間報告』であり、今後、ILOと日本政府の考え方の違いを埋めていくことが大切だ」と問題をすりかえ、明確な答弁を避けました。
また、吉井議員が、「国政全般にかかわる重要法案である以上、国会での慎重審議が必要だ。会期末まで1か月となった現在、今国会への法案提出は断念せよ」と強く求めましたが、石原大臣は、「本日の閣議のあとで、福田官房長官、坂口厚生労働大臣、片山総務大臣とともに協議し、公務員制度改革にむけて、関係者に理解を求めつつ、今国会への法案提出をめざして努力する方針には変更がないことを4者で確認した」とのべ、あくまでも通常国会での法案提出・審議をねらう姿勢を示しました。
次に、ILO勧告で指摘された「国家の行政に従事する公務員の範囲」や「監獄職員の団結権」などの点にかかわって、「国際的な労働基準の適合を真剣に議論することこそ、日本政府に求められているのではないか」と指摘したことに対しては、「大筋ではそのとおりだ」と石原大臣がのべました。吉井議員は、「それならば、ILO勧告を承服しがたいとの態度をとるのではなく、勧告に応えて国内法整備などの努力をすべき」と求めました。
最後に、2月26日の内閣委員会での審議(闘争ニュースNo.22参照)とも関連して、吉井議員は、能力等級制度の勤務条件性について、人事院と政府の考え方を質しました。人事院の佐藤人事官が、「公務員の給与とかかわる制度であり、勤務条件と深くかかわっている」とのべたことに対し、公務員制度等改革室の春田室長は、能力等級制度の内容を説明したうえで、「行政の組織のあり方とかかわるものであり、勤務条件そのものではない」とのべ、石原大臣も、「勤務条件そのものではなく、人事院とは見解の相違がある」と答弁するなど、前回の委員会審議に続いて、正面から意見が対立しました。
吉井議員は、「民間や現業公務員では労働条件とされるものを、非現業公務員では使用者が勝手に決めることは許されない。政府の見解をあらためるべきだ。そのことがなければ基本的な問題は解決しない」と強く指摘し、質問を終えました。
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