2003年6月17日《No.149》

「能力等級制に勤務条件性はない」?!
 推進事務局の不当回答に怒り集中!

   国公労連は、6月16日午前、行政改革推進事務局と交渉を実施し、同推進事務局が6月6日に国公労連に対して明らかにした「『国家公務員制度改革関連法案の主要論点の整理について』への質問書に対する回答」について、再質問を行いました。
 この交渉は、本来6月12日に予定されていたものですが、交渉直前になって同推進事務局から申し入れがあったため、急きょ延期されたものです。国公労連では、6月18日の国会会期末を目前に、会期延長問題とも絡んで、政府と連合による「協議機関の設置」の動きなど、「公務員制度改革関連法案」の取り扱いをめぐって緊迫した情勢が続くなか、同法案の閣議決定・国会提出反対のたたかいの一環として、新人事制度の柱となる「能力等級制度」の問題点をあぶり出すことに全力をあげるため、各単組代表者の参加も得て、この日の交渉を行いました。
 交渉には、国公労連から山瀬副委員長、小田川書記長、岸田書記次長ほか3名、各単組から全国税・細川書記長、全厚生・杉浦書記長、全経済・伊波書記長、全運輸・宮垣書記長、全港建・高橋書記長、全通信・狩野書記長、全労働・鎌田中執、全建労・葛西書記長、全司法・鶴田書記長が参加し、推進事務局側は高原参事官ほかが対応しました。
 やりとりの概要は以下のとおりです。(注;は国公労連、 は推進事務局)

法改正作業をするなら、制度の全体像をきちんと示すべきだ!

 冒頭、国公労連の小田川書記長から「前回、私たちの質問書に対する回答が示されたが、なお、疑問が残されている。一つ目は、「大綱」「2次原案」と、この前示された「国家公務員制度改革関連法案の主要論点の整理について」との関係だ。「大綱」などをふまえ法制的に整理したものであるということであれば、新たな公務員制度の全体像を示すべきではないか。何を法レベルで規定するのかは立法裁量の問題だとしても、能力等級と給与、任用など他の制度との関係を詳細に示すのが当然のはずだ」と強調し、推進事務局を追及しました。
 これに対し推進事務局側は、「能力等級制については、今回の法案での導入をめざしているが、これを給与にどのように反映させるかについては、今回の法案では追求していない。新しい制度がスタートする平成18年までに、人事院の協力を得ながら引き続き検討していきたいと考えている」と回答しました。国会会期末で緊迫した情勢であるにもかかわらず、依然として制度改革の全体像を示そうとしない推進事務局に対し、国公労連は怒りを込めて、要旨以下のとおり、厳しく追及しました。

 これまで推進事務局は、「大綱」で示されている全体像が初めにあって、それをどの法律、政令で規定するのかを整理するために示したものが「2次原案」だと説明してきたはずだ。国公法の改正をするというのなら、その目的をはっきりさせるためにも改革の全体像を合わせて示すべきだ。今の段階になっても「今後、人事院と検討する」との回答では到底納得できない。推進事務局が「能力等級制を運用する際の要」としてきた「評価制度」についても議論が中断したままだし、「2次原案」で説明していた8等級制への移行も、「主要論点」では11等級制に戻っている。「基本職位」などはどうなったのか。「2次原案」については10数回も議論をしてきた。その経過をふまえるならば、「2次原案」をどう修正整理したのか、明らかにすべきではないか。推進事務局は所管として制度改革を責任を持ってやっていくと言ってきた。今回の法案に盛り込んだものを説明するのは当然だが、だからといって、全体像を示さないまま進めていいということには決してならない。

 法案として示せるのは、今の段階では能力等級制しかない。能力等級の給与への反映の仕方などについては、「大綱」や「2次原案」の考え方に沿ったものを、今後、下位法令で検討していくことになる。今の時点では具体的イメージも固まっておらず、評価についても試行をやりながら考えていくことになる。能力評価制度については、能力基準を含め、今お示しできるものはない。

 これまでの議論の経過をふまえても、とても納得できるものではない。改革は誰が責任を持って進めるのか、労働組合との交渉・協議の結果が制度にどう反映したのか、何も分からないのでは議論は深まらない。我々は、労働条件決定を政府に白紙委任する考えはない。法改正作業を行うのであれば、もっときちんと整理した制度の全体像を示すべきであり、それが誠実な交渉・協議だ。全体像をどこまで示せるのかを次の交渉で明らかにするよう、強く求めておく。

給与に直接影響する能力等級制は、勤務条件そのものだ!

 さらに小田川書記長は、推進事務局側が「質問書」に対する回答で「能力等級制には勤務条件性はない」としていたことに対し、要旨以下のやりとりがありました。

 能力等級制の勤務条件性については、国会答弁では人事院と石原行革担当大臣の見解が全く異なっており、その点が未整理なままで制度設計はできないはずだ。現行では、個別官職の「格付け」については「勤務条件性あり」として、各省段階でも、人事院と中央労働組合との間でも、「交渉事項」として整理されている事実を認めないのか。そうした経緯をふまえれば、能力等級制に勤務条件性は当然認められるはずだし、交渉事項になる。新制度での官職分類と、個別官職の困難性に基づいて級に位置付ける現行制度と、どう違うというのか。

 官職分類は組織編成に関わることであり、それ自体は管理運営事項であるから交渉事項ではない。職員のために制度があるわけではない。新制度の官職分類は、官職の複雑困難性に応じて分類するという効果は変わりはなく、現行の職階制の職務分類と同じ機能を持っている。これらは本来、組織編成に関わることであり、現行では給与法の枠組みの中で決定するために引用されている。しかし、能力等級制では官職が法律で分類されるため、法制上は交渉事項ではなくなるということだ。新制度においても、官職分類が昇格へ影響することを全く否定するものではないが、制度はあくまでも「川上」にあるものであって、ただちに給与に直結するものではないと考えている。

 今でも、ポストに就かなければ個人の給与の改善はない。そういう点で個別官職の評価は個人の給与に直接影響している。推進事務局が言うように分けて考えられるものではない。職階制の勤務条件性を認めるからこそ、旧「国労法」(現「行特労法」)との関係で、職階制を特定独立行政法人職員に適用しなかったのではないか。能力等級制と職階制の異なる点は、官職分類と職員の能力等級を「一体的」に行うように見えることだけであって、要は官職分類と任用の根本基準を一つの法で整理しただけではないか。しかも、今、労使関係で交渉議題として安定しているものを取り上げれば、いたずらに混乱を招くだけである。職員のために制度があるわけではないと言うが、職員の処遇の安定性が制度全体の効率的運営を保障するとの国公法の規定を重視しなければ、まともな人事管理が出来るはずがない。

職場のやる気を失わせてどうなるか、やれるならやってみろ!

 この後、推進事務局から要旨以下のような不当な発言が飛び出し、交渉は紛糾しました。

 今回は、法的な面を整備するとこうなるということをお示しした。今後、労働組合から申し入れがあった時は、その都度対応していくこととなる。能力等級法は国公法第108条の5に規定されている交渉事項ではない。我々はそのように整理している。

 冗談ではない。制度検討をするなら法制度的にも調整しなければいけない、両面での検討が必要だと繰り返し言ってきたはずだ。国公法第108条の5の面を抜きにしてなぜ能力等級制の議論が出来るのか。勤務条件法定主義でいけば、当然、労使間で制度に関する話も必要ではないか。また、制度の枠内での運用における交渉範囲の検討も必要だ。公制審答申(管理運営事項であっても労働条件に影響する部分は交渉事項になりうる)をふまえた現状より後退させるのか。これまで推進事務局は、労働基本権が後退するようなことはないと回答し続けてきたが、その結果がこれでは後退以外の何者でもない。これだけを取ってみても、能力等級制に賛成することなど到底出来ない。

(全建労) 私たちの組合では、級別定数は交渉議題として当局と成立しており、これは能力等級制になっても変更はない。もし級別定数が交渉議題ではないということになれば不利益扱いを受けることになり、これまでの労使関係を根底から覆すことになる。そうであれば組合として闘争態勢に入らざるを得ない。先ほどの発言はこれまでの労使の信頼関係まで覆すものであり、厳しく再考を求める。

(全運輸) 現在、職場では上位の級別定数が足りないために昇格が頭打ちとなっている。一方、特権キャリアは規則どおり昇格している。こうした差別に職場は強い怒りを感じて、定数の切り上げを要求しているのだ。もし級別定数が交渉事項でないとするのであれば、一般職とキャリアの昇格差も埋めるべきだ。今日の回答は「あなたたちはそのままで我慢しろ」と言っているのと同じであり、到底納得できない。

 これらのやりとりの後、小田川書記長は「職種間格差や出先の評価の低さなど機関格差があり、職場はこうした根本的な問題に対して極めて大きな問題意識を持っている。昇格は労働者にとって切実な問題であり、現状の格差に対して大きな不満を持っている。今日の回答を地方の職員が聞いたら、『ふざけるな』『それで職場をまとめられるのか、まともな行政運営ができると思うのか』『働く人のやる気を失わせてどうなるか、やれるのならやってみろ』との声が上がるだろう。今日の回答は全く納得できない。次回、改めて回答に対する再質問を含めて、交渉を行いたい」と述べて、交渉を締めくくりました。


以 上

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