2003年6月23日《No.150》

ILO結社の自由委員会がふたたび日本政府に勧告
「労働基本権の制約維持」は再考すべきと強く要請

 ※全労連「公務員制度改革」闘争本部発行の「公務員制度改革」闘争ニュース
  (2003年6月23日No.31)より転載

 5月29・30日、6月6日に開催した結社の自由委員会でとりまとめられた日本の「公務員制度改革」にかかわる「中間報告」が、6月20日のILO理事会で正式に承認されました。
 その内容は、11月の勧告につづいて、「公務員の基本的権利に対する現行の制約を維持する」ことへの「再考」を強く求め、消防職員の団結権など5点にわたって労働組合との全面的な協議にもとづく「合意」にむけて努力すべきとのべています(勧告内容および全労連坂内事務局長の談話は別記のとおり)。
 結社の自由委員会・ILO理事会が、「歴史的・画期的」と評価される昨年のILO勧告を再確認し、日本政府に繰り返して「再考」を求めたことは、国際的にも国内的にもきわめて大きな意義を持っています。
 政府・行革推進事務局が、「公務員制度改革」関連法案の国会提出をねらうもと、再度示されたILO勧告に確信を深め、「大綱」の撤回、労働基本権回復など民主的公務員制度の確立をせまり、職場や地域からたたかいを強めていくことが求められています。


公務員制度改革に関連する公務員の労働基本権問題についての
全労連および連合の提訴に関する結社の自由委員会中間報告
(勧告部分のみ抜粋・全労連訳)

ILO第287回理事会(2003年6月20日)採択

558.前述の中間的な結論をふまえ、委員会は理事会にたいし次の勧告を承認するよう求める。

(a)委員会は政府にたいし公務員の基本的権利にたいする現行の制約を維持するという、その言明した意図を再考するようあらためて強く要請する。

(b)委員会は、日本が批准している87号および98号条約に具体的に示されている結社の自由原則に合致した公務員制度改革および法改正に関して速やかに合意に達するよう努力すること、また、この点に関してひきつづき通知することを、再度、関係者にたいし強く要請する。協議はとくに次の問題に焦点をあてるべきである:

(@)消防職員及び監獄職員に団結権を保障すること。

(A)地方レベルの公務員が、登録制度実施の結果として過度の細分化を被ることなく、自ら選択する組織を結成できることを確実にすること。

(B)公務員団体が専従組合役員の任期を自ら定めることを認めること。

(C)公務員が団体交渉権および労働協約締結権を持ち、また、それらの権利が合法的に制約されている公務員は適切な代償措置を享受することを確実にすること。それらはいずれもが完全に結社の自由原則に合致するものでなければならない。

(D)公務員が結社の自由原則に合致してストライキ権を付与され、そのような権利を正当に行使する労働組合員と役員が重い民事または刑事罰をうけることのないことを確実にすること。

(c)委員会は政府に対し、公務における交渉事項の範囲について労働組合と意味のある対話を行うことを要請する。

(d)委員会は政府に対し、過去においてスト行為に訴えた公務員が投獄以外の制裁、たとえば罰金等を受けたかどうかを知らせるよう要請する。

(e)委員会は政府に対し、公務員労使関係制度を改正するいかなる法案についても委員会に提供するよう要請する。

(f)委員会は政府に対し、大宇陀町裁判の最終判決が下されたならば直ちに委員会に提供するよう要請する。

(g)委員会は政府に対し、有明町の事案における不当労働行為の差別的取扱いに関する申し立てについての意見を委員会に提供するよう要請する。

(h)委員会は政府および提訴団体に対し、独立行政法人(IAI)へ移動した職員およびその労働組合の団体交渉権の再組織の結果に関する情報を提供するよう要請する。

(i)委員会は政府に対し、上記のすべての事項の進展について委員会にひきつづき情報を提供するよう要請する。

(j)委員会は政府に対し、望むならばILO事務局の技術的援助を利用することができることに注意を喚起する。


国際世論を受けとめ、政府は民主的公務員制度を実現せよ
ILO結社の自由委員会勧告について(談話)

                               2003年6月21日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内三夫

 1、ILO理事会は20日、全労連・連合が提訴していた日本の「公務員制度改革」に関わる案件(2183号、2177号)に対して「公務員の基本的権利に対する現行の制約を維持するという、その言明した意図を再考するようあらためて強く要請する」としたILO結社の自由委員会の「報告・勧告」を採択した。
 全労連は、昨年11月のILO勧告に引き続き、道理ある主張が国際舞台において全面的に認められたことを高く評価するものである。

 2、「勧告」の内容は、現在すすめられている「公務員制度改革」を見直し、結社の自由原則に則って公務員にストライキ権を付与することなどについて、労働組合との全面的な協議にもとづく「合意」を求めている。
 これらは、全労連が「歴史的・画期的」と評価してきた昨年11月のILO勧告の立場をつらぬき、あらためて日本政府がすすめる「改革」の内容とすすめ方を全面的に批判したものである。政府は、ふたたび示されたILOの判断を真摯に受けとめ、労働基本権の確立をはじめ国際労働基準にもとづく公務員制度の実現に努力すべきである。

 3、一方、昨年のILO勧告を「承服しがたい」としてきた日本政府は、国会が延長されるもとで、いまだに「公務員制度改革」関連法案の国会提出をねらっている。
 この間、政府は、「追加情報」を提出してまで、ILOに「理解」を求めてきたが、結局は、日本政府の主張が、国際的な常識に照らし合わせて、到底受け容れられるものではないことを繰り返して明らかにするところとなった。国際世論に挑戦する日本政府の恥ずべき態度こそあらためられるべきであり、その出発点として、「公務員制度改革大綱」を撤回し、改革にむけた作業を白紙からやり直すべきである。

 4、今回の報告の中でも指摘されているように、民主的な公務員制度を確立していくうえで、「全面的で率直かつ意味のある協議」の実現は不可欠である。そのことから、全労連は、ILO勧告にそった公務員制度改革にむけて、担当大臣をふくめた協議の場が実現するよう政府に繰り返し要求する。
 全労連は、2度のILO勧告の意義を深く受けとめ、国民犠牲の「公務員制度改革」を許さない世論と運動をひろげつつ、労働基本権回復など「働くルール」確立をはじめ、「天下り」禁止や政官財癒着の根絶など、国民の願う公務員制度の実現に全力をあげる決意を新たにするものである。

以 上

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