2005年9月15日
総務省人事恩給局長 殿
日本国家公務員労働組合連合会
            書記長 小田川義和

 新たな人事評価の第1次試行にかかわる申し入れ

1 試行の目的等にかかわって

(1) 「人事評価に係る検討課題を実証的に確認」としているが、この検討課題についての関係者の共通認識が必要ではないかと考える。
 その際、我々としては以下の点を重視すべきだと考える。
 1) 評価の目的を人材の育成、活用におき、その視点から評価の手順や評価項目、評価基準、評価方法等を検証
 2) 評価の「手順」としての評価者と被評価者との面談の実質化の検証(期首面談、期末面談の徹底とそれに伴う「コスト」、期首面談時における被評価者の目標等設定に際しての本人の納得性の確認など、厳密な「手順」を想定した試行)
 3) 職務行動評価項目の妥当性の検証
 4) 評価結果の開示の是否の検証
 5) 苦情処理、評価者研修など、周辺制度の整備方向の検証

(2) 前述の点と関わって、評価試行の検証項目について、試行実施までに、国公労連との協議をおこなうよう求める。

2 試行の対象者等について

(1) 現行の公務員制度下での評価制度の構築をめざすとしていることから、全府省が統一した対応をおこなうことを基本とすべきである。

(2) 府省独自での試行がおこなわれる場合でも、前述の試行の目的を共有し、検証すべき事項についての統一的把握やデータの共有化を図るべきである。
 また、試行のスケジュールについても、全府省共通とすべきである。

(3) 全府省共通に実施される評価試行を契機に、国家公務員法第72条の「勤務評定」の改善を口実に、試行と同様の評価システムの検討、別試行を模索する府省の動きがあると承知する。基本的には(1)によるべきであるが、仮に、別試行をおこなうとしても、その結果を給与制度等に反映させないことを明確にすること。

3 試行内容等にかかわって

(1) 職務行動評価部分について、給与上の級との関係はどのように考慮するのか。同一シートで実施することの是否、評価基準との関係などはどう考えるべきか。
 初任の課長と古手の課長との評価基準は、絶対評価である以上同一と考えられるが、そうなると古手の課長は「評価が高くて当然」などのバイアスがかかることにならないのか。
  評価シートに関しては、
・ 「スーパー課長」、「スーパー補佐」ともいうべき能力を基準に、それと被評価者の能力のへだたりを測る内容となっているのではないか
・ 評価項目が類似・重複する部分も多いのではないか
・ 職務行動評価とはいうが一般的な能力評価シートに近く、評価者の主観的判断が入り込みやすいのではないか
・ 具体的職務遂行行動の中に表れる能力を客観的に把握しやすい評価シートになっているのか
 などの疑問も生ずる。
 したがって、提案されている評価シートについては、@特定ポストに求められる発揮能力と比較する形の職務行動評価となるおそれはないのか、A結果として役割達成度評価との重複が生じることにならないのか――という点についても、試行で検証すべき中心課題として確認しておくべきであると考える。

(2) 役割達成度評価部分については、府省段階での政策目標と、個々の「業務内容」、「達成目標」との関係、評価期間中のあらたな業務負担と期首の「達成目標」との関係、目標の困難度の設定、総合評価時のウェート付け、など想定される検証項目が考えられる。
 したがって、統一して実施する「評価のマニュアル」を制度官庁として準備し、その内容の周知や公表をはかるとともに、そのマニュアル自体も検証の対象とすべきである。
 なお、業務目標毎の評価基準については、主観を排除する観点から、極力簡素なものにすべきではないか。
 また、全体評価については、設定した目標との関係での評価を基本とし、「ポストで求められる役割発揮」という職務行動評価との重複感が生ずる評価基準は避けるべきではないかと考える。
 いずれにしても、役割達成度評価については、これらの評価基準の妥当性についての徹底した検証をおこなうことを前提に試行を実施すべきである。

(3) 評価の基準ともかかわって、職務行動評価、役割達成度評価ともに、全体評価は「標準B」とすることで試行をおこなうことでは、無用な混乱が生じないのか危惧がある。
 また、評価者は、評価にあたって留意した事項を明記し、調整者の判断に資する内容を記載し、調整者が調整をおこなう場合も同様にそのポイントを明記することとし、そのための記述欄(調整者の所見欄)を設けるべきであると考える。

(4) 職務行動評価と役割達成度評価をタテとヨコの関係と説明しているが、両者を通じた「総合的評価」についても検討すべきではないか。
 例えば、目標の達成度は抜群だが、その背景には補佐以下の献身的な長時間労働がある課長の評価はどのようになるのか。そのこととかかわって、課長の職務行動評価の「リスクマネージメント・組織コンディションの維持」とかかわって、課員の超過勤務時間数などの客観事実を加味することは出来ないか。また、課長の評価項目に「国民全体の奉仕者としての姿勢」を設けないのはなぜか。
 また、課長補佐の職務行動評価の評価視点に「コミュニケーションC関係構築」があるが、こういう評価視点を持ち込むのであれば、勤務時間を通じて表れた行動評価であることの徹底が必要である。

(5) 評価結果の開示については、文書により、最終評価(調整後評価)を被評価者全員に行うこと、期末面談以前に評価をおこない面談で説明をおこなうことを基本とする試行をおこなうこと。また、開示された全体評価に対する被評価者の見解を記入できる欄も検討すべきではないか。

4 試行にかかわる国公労連との協議

 前述した試行段階での検証項目の協議も含め、試行期間中、試行後の国公労連との協議をおこなうとともに、施行状況もふまえた制度設計にかかわる交渉・協議を継続することを強く求める。

以上

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