唐突な民主党の国家公務員法「改正」法案に反対する(談話)

 10月14日、民主党は、人事院が行う給与勧告の基礎となる民間給与実態調査の「調査対象事業所の範囲の拡大」などを強制し、「政府」に「特殊勤務手当の見直し」を義務づける、国家公務員法「改正」案を国会に提出した。
 国公労連は、この法案提出は極めて唐突であり、国家公務員労働者の労働基本権を不当に剥奪した中で「機能」してきた人事院勧告の根幹部分といえる民間給与実態調査にかかわるこの間の議論の経過や、給与以外の公務員制度との整合性なども検証されていないと考える。したがって、国公労連は、民主党提案の国家公務員法「改正」法案に反対であることを明確にする。

 1959年の人事院勧告以来、企業規模100人以上・事業所規模50人以上の民間事業所を対象にした民間給与実態調査が行われている。そのような企業・事業所規模を選定している理由として、政府、人事院は、(1)民間労働者の6割をカバーすること、(2)勤務地域、職務、年齢など、賃金決定に影響がある諸条件が同一の官民の職員同士を比較するためには一定の企業・事業所規模が必要なこと、(3)限られた期間での調査効率が求められること、などとしてきた。そして、職務給原則をとり、一国規模の広がりを持つ国家公務員の給与決定に、労働市場の実勢を反映することと整合する企業・事業所規模とも説明されてきた。
 民主党の法案では、そのような点についていかなる状況変化があって、「調査の対象となる事業所の範囲の拡大」を強制しようとしているのかは説明されていない。その点で、極めて唐突であり、公務員制度全体との調和に欠ける「つまみ食い的な」法案だと考える。

 国家公務員法第28条は、人事院勧告を通じて、公務員の労働条件を民間の実態に準拠させることが、労働基本権制約の「代償措置」であるとしている。労働条件の中心である賃金水準については、前述した民間企業を対象に比較することで、その「代償措置」としての意義が補完されてきたと考えるべきである。
 民主党の法案は、結果として、国家公務員の給与水準ひき下げを、人事院の調査・研究を待つことなく、法によって強制しようとするものと考えられる。公務員労働者の労働基本権への認めがたい侵害である。法案では、「労働基本権保障の抜本的な見直し」にも言及している。国家公務員労働者の労働基本権回復は当然としても、一方で労働基本権を蹂躙する「賃下げの強制」を提起しながら、一方で労働基本権の「見直し」を主張することは、論理矛盾であり、「ためにする論議」のそしりは免れない。

 国家公務員の給与水準は、人事院勧告体制のもと、地方公務員や人事院勧告準拠の730万労働者に直接影響する。人事院勧告もふまえて賃金決定をおこなう中小零細の民間企業も少なくない。また、年金給付額や医療制度における診療報酬など、国が直接管理する諸給付の決定にも影響があることは、財務大臣などの発言からも明らかである。
 民主党の法案提案では、国民全体の所得への影響が考慮されているのか否かも明らかではない。財政再建を主張するあまり、国民全体の所得低下に目をつぶることは、広がり続けている経済的格差への無関心さを露呈することに等しく、政党としての基本的な姿勢が問われることも指摘をしておきたい。

2005年10月17日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 小田川義和

以上

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