「総人件費改革基本指針」決定に断固抗議する(談話)

 経済財政諮問会議は11月14日、「(国家公務員の総人件費を)対GDP比でみて10年間で半減」との長期的な目安で総人件費削減を進めるとする「総人件費改革基本指針」(「指針」)を決定した。「指針」は、政府に対し、実施計画を年内にとりまとめ、個別具体的なとりくみについては06年6月頃までに成案を決定するよう求めている。
 現時点でも、日本の公務員数は先進国中最低レベルにあり、社会の安定帯としての公務の役割や、公正な行政サービスの提供が阻害されている。その実態には目を向けず、コスト削減のみを強調し、「大増税の突破口」とも位置づけて決定された「指針」に、国公労連は強く抗議する。政府に対し、「指針」の撤回、実施計画等のとりまとめ作業の中止を要求する。

 「指針」では、郵政公社を除く国家公務員について「今後5年間で5%(3.4万人)以上純減」とする純減目標を設定し、国の行政機関での「増員の限定」、「地方支分部局等の抜本的な見直し」、「包括的・抜本的な民間委託」などを打ち出した。また、国会や裁判所、会計検査院、人事院にも「準じたとりくみ」を求めている。いずれの機関も、ぎりぎりの定員状況にあり、あらたな対応課題が山積している。1%程度の歳出削減が行政サービスに与える影響は、極めて甚大である。特に、純減を地方に集中させるため、「都道府県ごとに設置されている地方支分部局の統廃合」などに言及したことは重大である。国民と接する第一線の行政を担う地方支分部局は、全国一律の行政サービスを担保する要の位置にある。その廃止は、行政サービスの地域間格差を拡大し、地方切り捨てを一段と加速することになりかねない。

 「指針」では「(地方自治体での)4.6%以上の純減確保」を求め、純減の上乗せのために「教育・消防・福祉関係の職員の定数に関する国の基準」の見直しを求めている、特に、教職員の純減を強調し、「30人学級」など教育実施体制の充実を求める声に背を向けていることは、国の責任放棄にほかならない。並行した議論が進められている三位一体改革ともかかわって、地方自治体への責任と負担の押しつけを、「総人件費削減」を通じても強制しようとするものであり、見過ごせない問題である。
 また「指針」では、公務での派遣労働者の活用なども求めているが、不安定雇用労働者の増加を政府が直接推進するものであり、雇用政策としても重大な誤りである。

 「指針」では、官民給与比較方法の見直しを強く迫り、現行の人事院勧告制度のもとでの賃金引き下げを強く求めている。労働基本権の検討には言及しているが、アリバイ作りとしか考えられない。総人件費削減を目的に、公務での不安定雇用を拡大し、財政状況をふまえた「給与制度改革」を求めるのであれば、公務員労働者の労働基本権回復を真っ先の検討課題とすべきである。この点でも、「指針」からは、民主主義のかけらも感じられない。

 公務員の純減は、行政サービスの縮小・切り捨てであり、国民に対し必要なサービスの購入での自己責任、自己負担をせまることと一体である。人事院勧告制度を通じた公務員賃金の切り下げ強要は、この国の低賃金化をより加速させ、目前の春闘にも冷水を浴びせることになりかねない。こうした公務員への痛みの強制が、消費税率引き上げをはじめとする庶民増税の先駆けであることは、もはや明白である。
 国公労連は、行政に携わる労働者として、公共サービスの商品化や地域切り捨てによる国民生活切り捨てとなる「指針」の具体化に、断固反対してたたかう決意である。

2005年11月14日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 小田川義和

以上

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