国民に負担を押しつける
「小さな政府」づくりに反対する(談話)
――「行政改革の重要方針」決定にあたって――


 政府は12月24日、「小さくて効率的な政府」にむけて行政のスリム化、効率化を一層徹底するとし、「行政改革の重要方針」(以下、「重要方針」)を決定した。「重要方針」では、3つの機能に限定する政策金融改革、特定独立行政法人の非公務員化等、特別会計の見直し、総人件費改革の実行計画、社会保険庁改革、規制改革・民間開放推進などを重要課題として打ち出している。
 国公労連は、「重要方針」が公共サービスを切り捨て、国民生活にかかる国の責任を放棄する「小さな政府」づくりの計画だと考える。したがって、その決定に抗議し、撤回を強く求める。あわせて、「重要方針」にもとづく「行政改革推進法案(仮称)」策定作業の中止を要求する。

 「重要方針」では、「総人件費改革の実行計画」として、「郵政公社職員を除く国家公務員を5%以上、純減させる」ために、定員「合理化」計画によって1.5%、「業務の大胆かつ構造的な見直し」によって3.5%の純減を行うとしている。そのため、「行政減量・効率化有識者会議(仮称)」も活用しつつ、06年6月までに、個別府省、業務にかかわる純減具体化の成案を得るとしている。
 この決定ともかかわる06年度の定員査定は、7,037人の定員削減を法務局や労働局の地方支分部局の統廃合、社会保険庁での解体的再編や市場化テスト、公共事業官庁での民間委託、全府省共通してのIT化による業務スリム化、などを強行し、政機関全体で1,455人(0.44%)の純減を行うとしている。
 この査定結果からも明らかなように、定員純減のターゲットは国民生活関連分野であり、そのサービスを提供している地方出先機関である。

 また「重要方針」では、19の独立行政法人の非公務員化とあわせて、「業務の大胆な整理」として国立高度専門医療センター等の非公務員型独立行政法人化なども提起している。国民への医療サービス提供にかかわる国の責任を検証することなく、公務員純減の「数あわせ」のために、行政組織の見直しが行われようとしている。
 地方公務員についても、「4.6%以上の純減確保」を謳い、特に多数を擁する教職員を名指ししてその純減を求め、公立大学や公営企業の独立行政法人化、民営化も提起している。国民生活の基盤を支える行政分野での純減が真っ先に主張されていることに、今日の「小さな政府」論の本質が表れている。
 さらに、特別会計の見直しともかかわる独立行政法人化検討や、市場化テストの本格導入への言及など、あらゆる手法を動員した公務員削減を強調している点が、「重要方針」の一つの特徴である。
 国公労連が、「重要方針」を行政サービス切り捨て計画であると考えるのは、以上のような内容からである。
 このような大「合理化」を国民の意見はもとより、当該の労働者の意見を聞くこともなく決定されたことも大きな問題である。
 公務員制度改革にかかわっても言及しているが、それは能力・実績主義の人事管理の徹底等民間手法の公務への強制を求めるのみであり、懸案となっている公務員の労働基本権回復には背をむけ続けている。
 「重要方針」では、総人件費削減とかかわって、国家公務員の給与水準引き下げにつながる官民比較方法の検討を人事院に迫っているが、このような公務労働者の基本的人権無視の姿勢が、随所にみられることも「重要方針」の特徴点である。

 そのことは、公的年金の運営主体として「厚労省の特別の機関」を設置し、政管健保については全国単位の公法人を設立するという社会保険庁「改革」にかかわって、雇用破壊の動きを自民党が強めていることで、より明確である。
 自民党が12月20日にまとめた「社会保険庁改革」とする文書では、組織の解体的再編の際に現社保庁職員の「選別採用」すら提起している。国鉄分割・民営化の際に、政治的な思惑で強行された選別採用が著しい人権侵害であるとして国際社会からもきびしく批判されている。にもかかわらず、同様の問題を引き起こしかねない提起を政治サイドが行っていることは極めて重大である。冷静さを失ったリストラのためのリストラが、当該労働者のみならず国民生活に多大な被害を及ぼすことは、4月に発生したJR福知山線での脱線事故からも明らかになっている。これだけに絞っても、「重要方針」は不当である。

 国公労連は、国民に不可欠な公務・公共サービスを切り捨てて国民の安心と安全を損ない、あらゆる点での格差を拡大する「行政改革」には断固反対する。また、公務員労働者の雇用問題に直結する純減や、国公労働者の人権侵害の危険性が「重要方針」に含まれており、その点でも「重要方針」を受け容れることはできない。
 「重要方針」は、大企業の権益を擁護・拡大しつつ、国民に負担と犠牲を押しつけ、公共サービスを切り捨てる内容で編成された06年度予算政府案と一体で決定されている。国公労連は、全労連「もうひとつの日本闘争本部」に結集して、「小さな政府」の危険な本質を広く国民に訴え、「公共サービス商品化」に反対する共同のとりくみを強めるため、職場・地域から全力をあげる決意である。

2005年12月24日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 小田川義和

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