2003年7月8日

 

 司法制度改革推進本部 
  本部長 小泉純一郎 殿

全国労働組合総連合     
     議 長  熊谷 金道

日本国家公務員労働組合連合会
  中央執行委員長 堀口 士郎

 

司法制度改革に関する申し入れ

 

 司法制度改革については、司法制度改革審議会意見書に基づき、現在貴本部で、制度の具体化作業が進められている。国民の司法参加を進める裁判員など実現が求められる制度と同時に、国民の裁判を受ける権利を制限するような弁護士費用の敗訴者負担など問題の多い制度も検討されている。民主主義国家における司法制度は、国民の裁判を受ける権利を保障し、国民の司法参加を促進し、正当な権利が実現・保障されるものとしなければならない。そうした観点から、貴職に対し、下記事項について実現を強く求めるものである。

 

1.弁護士報酬の敗訴者負担問題をはじめとする国民的課題について

(1) 弁護士報酬の敗訴者負担の導入は、行政や企業に比して力の偏在が著しい労働・消費者訴訟の提起を抑制し、国民の裁判を受ける権利を実質的に侵しかねないものであり、行わないこと。

(2) 力の偏在が著しい消費者訴訟等において、製造物の欠陥の推定等立証負担を軽減する抜本的措置をとること。当面、民事訴訟法の特則により、裁判所の職権による証拠開示の強化を図ること。

(3) 裁判員制度については、裁判員が職業裁判官を上回ることを最低限として、国民の司法参加につながる裁判員数とすること。裁判員制度が機能する人的・物的体制を確保すること。

 

2.労働事件に関わる課題について

(1) 安価、迅速、簡便な労働事件処理の実現

 安価、迅速、簡便な労働事件処理を実現すること。そのため、労働調停の無料化などを含め、思い切った手数料の低減をはかること。今国会の民事訴訟法改正で少額訴訟の上限額が30万円から60万円に拡大されたこともふまえ、賃金不払い等の請求について、安価、簡便な訴訟制度である小額訴訟の活用をはかること。法律扶助を抜本的に充実し、本人訴訟支援を含めた法律サービスの充実を図ること。行政、司法それぞれの相談業務を連携させ、実質的に一つの総合相談窓口とし、ワンストップサービスを実現すること。国民の裁判の受ける権利を保障する法曹三者と裁判所職員の増員をはかること。

(2) 労働参審の実現

 労働参審については、労使の専門家参与により、実情により即した司法判断を実現し、法秩序の形成への国民参加を促す点で極めて大きな意義を持っており、必ず実現させること。また、そのための人的・物的支援体制を充実させること。

(3) 労働裁判固有手続の明確化

 労働者と使用者の力の偏在が著しいことを踏まえ、その是正ために、挙証責任の転換をはかること。当面、裁判所の職権により、証拠開示が図られる制度の創設と運用の確保をはかること。

(4) 労働委員会命令の審級省略の実現

 不当労働行為の審査が実質的に5審制となっている現状を改善するため、労働委員会の機能強化を前提として、中央労働委員会命令の司法審査は東京高裁の担当とすること。そのため、労働委員会の不当労働行為審査にあたって、実質的証拠主義を採用すること。

(5) 利用しやすく効果的な労働調停の実現

 導入が予定されている労働調停制度は、個別紛争に限定すること。労働調停には、民事調停と同様の時効の中断効を与えること。行政、司法が連携した総合的な相談窓口を設け、実質的ワンストップサービスを実現こと。裁判所窓口で労働相談や法律扶助が受けられるようにすること。また、行政機関の例にならい労働調停の申請手数料は無料とすること。調停の公正性確保のため、調停主任を務める裁判官が常時手続に関与し、調停委員は労働問題に専門的知識を持つ使用者、労働者の代表とし、労働者を代表する委員の選任は、労働組合の潮流に比例させること。専門家参与の条件整備を進め、計画的に簡易裁判所単位に設置すること。

 

以  上


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