国立大学協会は、14日の総会で、独立行政法人通則法をそのまま適用することには反対するが、文部省が今月発足させる「国立大学の独立行政法人化に関する調査検討会議」へ参加し、意向を反映させるという方針を決定した。
独立行政法人制度は、行政の垂直的減量化(アウトソーシング)を目的として構想されたものである。主務大臣による法人の長の任命、中期目標の提示、中期計画の認可と計画終了時の業績の評価を通じて、3〜5年を単位とする短期的視野に立った業務運営の強制が想定される制度であり、長期的視野に立った地道な活動が求められる分野の教育や研究にとって大きな障害をもたらすものである。
文部省は、昨年9月、当初の姿勢を転換し、国家公務員の25%定員削減から逃れるという理由で、「特例」を設けた独立行政法人化の選択を国立大学に迫ってきた。そして、本年5月26日に、「調整法(または特例法)」を制定し、大学独自の独立法人化を2004年にスタートさせるテンポで作業を進める方針を明らかにした。総会の決定は、この文部省の方針に一定の譲歩を示したものである。
文部省や自民党文教制度調査会は、独立行政法人化に向け、大学への公的投資の拡充を言うが、実際に拡充しようと言うのは「競争的経費」でしかない。それは、基礎研究・教育を中心とした役割を担ってきた大学から、業績評価をテコに新産業創造など国の時々の科学技術政策の実施部門に大学を転換させようとするものに他ならない。産業の新しい芽になっていく技術を研究することが大学の使命の一つであることは否定できないが、独立行政法人化による効率化一辺倒の押しつけは、人類を豊かにする文化と科学の継承・創造という大学の使命を大きくゆがめることになり、到底容認できない。また、独立行政法人化によって、財務内容改善の名の下、学費の引き上げなど、受益者負担が強められることが予想される。それはまた私立大学への公費助成減額の圧力となることも予想される。同世代の4割が大学に進学する今日、独立行政法人化は、多くの国民の生活に直接関わる問題である。世論と運動を背景にしないまま、「調査検討会議」へ参加するだけでは、国大協が願っている「高等教育と学術研究の健全な発展に資する」ことは困難と言わなければならない。
今回の決定は、独立行政法人化問題の終わりではなく、始まりである。文部省は、「特例措置」の具体的姿すら明らかにしていないし、先行している試験研究機関等の例でも、具体的議論が進むほど、効率化や減量化の押しつけが露骨に行われてきている。それだけに、国立大学の独立行政法人化が持つ問題点を、国公私立の全大学教職員、学生、父母、広範な国民に明らかにして、独立行政法人化反対の世論と運動をさらに広げることが求められる。
同様の独立行政法人化の押しつけが強行されようとしている国立病院・療養所の課題とも一体で、「教育や医療は国の責任」とする声を大きくあげよう。独立行政法人化反対の闘いがいよいよ本格化しようとするいま、国公労連は、広範な国民との共同を強め、効率化・減量化を押しつける独立行政法人化反対、大学教育・研究の充実を求める世論を高めるため、これまで以上に取り組みを強化する決意である。
以上
2000年6月19日 |